私たち日本人は似ている日本語を、無意識のうちに使い分けていることがよくありますよね。例えば、「づらい」と「にくい」です。この2つの言葉は「やりづらい」「やりにくい」「言いづらい」「開けにくい」などのように、動詞の後ろにつけて使います。
そして、私たちはこの2つの言葉の使い分けをあまり意識しませんよね。
でも、日本語を勉強している外国人はそうもいきません。これは日本人が他の言語を学ぶ時も同じですが、母国語以外の言語だと、無意識に似ている言葉を使い分けることはできません。きちんと違いを学んで、初めて使い分けられるようになります。
では、みなさんは外国人に「づらい」と「にくい」の違いについて聞かれた時に、どう答えるでしょうか。答えられない人も多いと思います。
そこで、今回は日本人でも意外と知らない「づらい」と「にくい」の違いについて解説していきたいと思います。
結論:明確な違いはない
しかし、「づらい」は自分の心理的な抵抗感、「にくい」は客観的な困難さを表す、という使い分けをしている人が多いようです。
「づらい」をもっと詳しく
「づらい」は19世紀ごろに生まれた、比較的新しい言葉です。
そして、最近はこちらを使う人が増えているようです。特に、若者が多用する傾向にあります。これは、「にくい」だと他人を責めている感じがするからだそうです。
そんな「づらい」ですが、自分の心理的な抵抗感を表す、という意味で使っている人が多いです。なぜなら、「づらい」を漢字にすると「辛い」となるからです。ようするに、「~するのは心理的に辛い」という意味を表しています。
なお、「辛い」は「からい」とも読めるため、「~づらい」と言う時にはひらがなで表記することが一般的です。
「にくい」をもっと詳しく
「にくい」は10世紀にも用例がある、古めの言葉です。10世紀といえば平安時代です。そして、この時代でもっとも有名な文学作品である『源氏物語』にも、「にくい」という言葉が使われています。
さて、そんな「にくい」は客観的な困難さを表す、という意味で使っている人が多いです。しかし、「にくい」には自分の心理的な抵抗感を表す意味もあります。
ちなみに、客観的な困難さを表すという意味で使っている人が多いのは、「にくい」を漢字で表記すると「難い」になるからです。なお、「難い」は「がたい」とも読むため、「にくい」はひらがなで表記することが一般的です。
「づらい」と「にくい」の使い分けの例
これまで、「づらい」は心理的な抵抗感で、「にくい」は客観的な困難さだと解説してきましたね。ここからは、例をあげながらより細かく解説していきたいと思います。
まず、「切りづらい」と「切りにくい」ではどちらが正解でしょうか。
これは、物理的に切るのが難しいという意味なので、「切りにくい」が適切です。
次に、「頼みづらい」と「頼みにくい」ではどちらが正解でしょうか。
これは、頼むのが心理的に抵抗があるという意味なので、「頼みづらい」のほうが適切でしょう。ただ、「にくい」にも心理的な抵抗感を表す意味があるので、間違ってはいません。
そして、「聞きづらい」と「聞きにくい」ではどちらが正解でしょうか。
もし、これが「雑音などにまぎれて聞き取るのが難しい」という意味なら、「聞きにくい」が正解です。しかし、これは「聞くのに心理的な抵抗感がある」とも取れますよね。例えば、上司に同じことを2度聞くのは心理的に抵抗があると思います。その意味なら「聞きづらい」が正解です。
このように、実際にはどちらの意味でも取れることが多く、その場合は文脈で判断するしかありません。しかし、文脈でも判断が難しい場合もあります。
その場合にはどちらの意味でも使うことができる「にくい」を使ったほうが無難でしょう。
まとめ
以上、この記事では、「づらい」と「にくい」の違いについて解説しました。
- づらい:心理的な抵抗感を表す
- にくい:客観的な困難さを表すことが多い
このように、「づらい」と「にくい」の違いはわずかなものです。普段はあまり意識しなくても大丈夫でしょう。でも、外国人などに質問された時にスラスラ答えられるとうれしいですよね。
そのために覚えておいてもいいかもしれません。