今回ご紹介する言葉は、ことわざの「能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす)」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「能ある鷹は爪を隠す」をざっくり言うと……
読み方 | 能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす) |
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意味 | 本当に実力や才能がある者は、それを普段から誇示したり自慢したりはしないということ |
由来 | 安土桃山時代のことわざ集「北条氏直時分諺留」の、鷹に関する記述から |
類義語 | 能鷹隠爪、食いつく犬は吠え付かぬ、大賢は愚なるが如しなど |
対義語 | 能なしの口たたき、吠える犬は噛みつかぬ、能なし犬の高吠えなど |
英語訳 | Still waters run deep. (静かな川は深く流れる。) |
このページの目次
「能ある鷹は爪を隠す」の意味をスッキリ理解!
「能ある鷹は爪を隠す」の意味を詳しく
「能ある鷹は爪を隠す」とは、本当に実力や才能がある者は、それを普段から誇示したり自慢したりはしないということを意味することわざです。実力や才能のある人は、普段は隠している実力や才能をいざという時に発揮するということを表しています。
世の中にはあらゆる点において、優れた人が無数に存在します。例えば、勉強ができる人、サッカーが上手い人、仕事が早い人などです。
周りを見渡して、そういった優れた人で、普段その能力や才能を見せびらかしたり自慢したりしない人は多いと感じることはないでしょうか。
しかし、そのような能力や才能を見せびらかさない人ほど、普段から見せびらかすような人と比較してどこか立派に見えないでしょうか。
例えば、学校のクラスで、普段から自分の知っている知識をひけらかしてばかりいる人がいるとします。確かに知識豊富で、頭もよいのかもしれません。しかし、あまりよくない印象を抱く人も多いでしょう。
一方、普段馬鹿なことを言って人を笑わせるような陽気なキャラクターの人がいるとします。その様子を見るからに、頭がよさそうとは思えません。しかし、いざ学校の定期テストを見てみると、学年で1番だったとしたらどうでしょうか。
多くの人が意外な能力に好印象を抱くでしょう。
「能ある鷹は爪を隠す」とは、本当に実力がある人ほど、普段は実力や才能を見せびらかさないものだというニュアンスを含むことわざです。
しかし、このことわざには、「なぜその実力や才能を隠すのか」ということに対する明確な理由は含まれていません。
これについては、場面、状況、人によるとしか言うことができません。ただ、考えられる事としては以下のことが挙げられます。
- 普段、その実力を見せないことで相手を油断させるため
- 本当に実力がある人は自信があるので、わざわざ自慢する必要性が無いため
- 本当に実力がある人ほど、自分よりも高いレベルの人がいることを知っているため
- 実力をひけらかす暇があったら、その実力を磨く努力をするべきだと考えているため
- 実力がある人ほど、謙虚である人が多いと知っているため
- 謙虚であることの大事さを知っているため
もちろん、これ以外にもあるでしょうが、多くがこのどれかに当てはまるものと考えられます。
注意としては、「脳ある鷹」ではなく「能ある鷹」です。「能」は、能力や才能・実力を指しますが、「脳」では賢さ・頭の良さしか指しません。
「能ある鷹は爪を隠す」の使い方
- 外国人に道を聞かれた友人が、流暢(りゅうちょう)な英語で道を教えてあげていて驚いた。能ある鷹は爪を隠すとはこのようなことか。
- 普段クラスでは目立たない子が、サッカーではエースとして活躍していて、能ある鷹は爪を隠すいい例だと理解した。
- 普段は物静かな彼氏だが、いざという時は男らしく頼りになる。能ある鷹は爪を隠すという言葉がぴったりの彼氏だ。
- 能ある鷹は爪を隠すというように、普段何事においても実力を自慢することはしないようにしている。
「能ある鷹は爪を隠す」の由来
「能ある鷹は爪を隠す」の由来は、安土桃山時代のことわざ集、「北条氏直時分諺留(ほうじょううじなおじぶんことわざどめ)」にあります。「北条氏直」とは、戦国、安土桃山時代の戦国大名で、小田原城主です。
この中で、「鷹」という動物の性質についての記述があります。そこで、鷹は非常に鋭い爪を持っているが、獲物をとる際は直前まで相手にその爪の存在を悟られないように隠す動物だということが書かれています。
そこから転じて、本当に実力がある人は普段はその実力を見せびらかすことはしないものだ、という意味を表す「能ある鷹は爪を隠す」ということわざができました。
「能ある鷹は爪を隠す」の類義語
「能ある鷹は爪を隠す」は以下のような類義語があります。
- 能鷹隠爪(のうよういんそう):「能ある鷹は爪を隠す」と同義
- 食いつく犬は吠え付かぬ:真の実力のある者は虚勢を張ったり、騒いだりしないということ
- 大賢は愚かなるが如し(たいけんはぐなるがごとし):本当に賢い人は、自分の知識をひけらかすようなことをしないため、一見愚かに見えるということ
- 大賢は愚に近し(たいけんはぐにちかし):本当に賢い人は、自分の知識をひけらかすようなことをしないため、一見愚かに見えるということ
- 深い川は静かに流れる:分別のある人は、ゆったりとしていていたずらに騒がないということ
- 上手の鷹が爪隠す(じょうずのたかがつめかくす):「能ある鷹は爪を隠す」と同義
- 鳴かない猫は鼠捕る(なかないねこはねずみとる):普段おとなしい者の方が実力があるということ
- 大巧は巧術なし(たいこうはこうじゅつなし):真の名人は見かけの小細工などはしないので、一見すると下手に見えるということ
- 大巧は拙なるが若し(たいこうはせつなるがごとし):真の名人は見かけの小細工などはしないので、一見すると下手に見えるということ
「能ある鷹は爪を隠す」の対義語
「能ある鷹は爪を隠す」には以下のような対義語があります。
- 能なしの口たたき:才能の無い人ほど、あれこれとしゃべること
- 吠える犬は噛みつかぬ: むだに強がったり威張ったりする者ほど、実力が無いものだということ
- 能なし犬の高吠え:むだに強がったり威張ったりする者ほど、実力が無いものだということ
- 痩せ犬は吠える:むだに強がったり威張ったりする者ほど、実力が無いものだということ
- 空き樽は音が高い :中身のない人ほどよくしゃべるものだということ
- 浅瀬に仇波(あさせにあだなみ):思慮深くない人ほど、おしゃべりで騒ぎ立てることが多いということ
- 鳴く猫は鼠捕らぬ:おしゃべりな者は、口先だけで実行力がないということ
- 光るほど鳴らぬ:口で偉そうに言うものにかぎって意外に弱いということ
「能ある鷹は爪を隠す」の英語訳
「能ある鷹は爪を隠す」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Still waters run deep .
(静かな水は深く流れる。) - Barking dogs seldom bite.
(吠える犬はめったに嚙み付かない。) - He who knows most, speaks least.
(最もよく知っているものは、最もしゃべらない。) - Cats hide their claws.
(猫は爪を隠す。)
“still” はここでは形容詞で「静かな」を意味します。
“seldom” は否定の意味を含む副詞で「めったに~ない」を意味します。
まとめ
以上、この記事では「能ある鷹は爪を隠す」について解説しました。
読み方 | 能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす) |
---|---|
意味 | 本当に実力や才能がある者は、それを普段から誇示したり自慢したりはしないということ |
由来 | 安土桃山時代のことわざ集「北条氏直時分諺留」の、鷹に関する記述から |
類義語 | 能鷹隠爪、食いつく犬は吠え付かぬ、大賢は愚なるが如しなど |
対義語 | 能なしの口たたき、吠える犬は噛みつかぬ、能なし犬の高吠えなど |
英語訳 | Still waters run deep. (静かな川は深く流れる。) |
類義語や対義語が数多く存在することわざで、使うことも多くあると思います。だからこそ、意味や使い方は正確に覚えておきたいものです。
また、中には本当に実力がある人でも、普段からそれをひけらかす人はいます。例外はつきものだということはしっかりと心にとめておきたいですね。