今回ご紹介する言葉は、ことわざの「貧者の一灯(ひんじゃのいっとう)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「貧者の一灯」をざっくり言うと……
読み方 | 貧者の一灯(ひんじゃのいっとう) |
---|---|
意味 | 貧しい者の心の込もった寄付は、裕福な人の虚栄のための寄付にまさるということ |
由来 | 『阿闍世王受決経』の老婆のエピソード |
類義語 | 長者の万灯より貧者の一灯、貧女の一灯など |
対義語 | 金が物を言う |
英語訳 | He who gives little gives from his heart; he who gives much gives from his wealth.(少し与える者は心から与え、多く与える者は富から与える。) |
このページの目次
「貧者の一灯」の意味をスッキリ理解!
「貧者の一灯」の意味を詳しく
「貧者の一灯」は、貧しい者の心のこもった寄付は、裕福な人の虚栄のための寄付よりも価値があるという意味のことわざです。
単純な物質的価値や機能で考えれば、裕福な人の寄付の方が、影響力は大きいでしょう。
しかし、「貧者の一灯」はそのような考え方とは異なります。自分の見栄や習慣のために多くの物や金を寄付するよりも、真心のある少しの寄付のほうが良いということを表しています。
「長者の万灯より貧者の一灯」や「貧女の一灯」とも言います。また、「貧者の一燈」と表記する場合もありますが、こちらも間違いではありません。
自分が少ない寄付しか出せないことの言い訳として使用することが多いです。
「貧者の一灯」の使い方
- 貧者の一灯で申し訳ございません。お気持ちだけ寄付をさせて頂きます。
- もちろん色鮮やかな花束もうれしいのですが、人生で一番うれしかったのは、インドの貧困地域に住む少女からもらった一輪の花です。貧者の一灯という言葉の通り、心がこもったものが一番うれしいのです。
- 自分で貧者の一灯というのは間違っているかもしれません。しかし、私はこのプラスチックの指輪に、あなたへの愛を込めています。
- 貧者の一灯というが、結局は金額が重要なこともある。大金持ちが軽い気持ちでくれたとしても、お金はお金だ。
「貧者の一灯」の由来
「貧者の一灯」は、「長者の万灯より貧者の一灯」ということわざを短くしたものです。そして、「長者の万灯より貧者の一灯」は、『阿闍世王受決経』にある以下の物語に由来しています。
それを見た貧乏な老婆も、自分も釈迦のために貢献したいと思い、なんとかお金を工面して一本の灯火を用意した。阿闍世王の灯火は徐々に消えていったが、老婆の灯火は朝まで消えなかった。
また、「貧者の一灯」と同じ意味を持つ「貧女の一灯」もこの話が由来です。
- 釈迦(※1):仏教の開祖。ガンジス河流域で多くの人に教えを説いた。
- 祇王精舎(※2):昔インドにあった寺院。釈迦が説教を行ったとされる。
「貧者の一灯」の類義語
「貧者の一灯」には以下のような類義語があります。
- 長者の万灯より貧者の一灯
- 貧女の一灯
「貧者の一灯」の対義語
「貧者の一灯」には以下のような対義語があります。
- 金が物を言う:金があれば、問題は解決するということ
「貧者の一灯」の英語訳
「貧者の一灯」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- the widow’s mite
(未亡人のわずかな金) - He who gives little gives from his heart; he who gives much gives from his wealth.
(少し与える者は心から与え、多く与える者は富から与える。)
the widow’s mite は、聖書の1つである、ルカの福音書21章のエピソードが元になっています。
多くの金持ちが大金を寄付する中、貧しい未亡人もコインを2枚寄付しました。これに対し、イエスは「この貧しい未亡人は他のどの寄付者よりも、多くの金をいれた」と言います。
この言葉の背景には、寄付は、見栄やプライドではなく、真に神を信じる気持ちから行うべきであるという考え方があります。イエスは、未亡人が生活が厳しい中でなんとか工面したコイン2枚に価値を見出したのです。
まとめ
以上、この記事では「貧者の一灯」について解説しました。
読み方 | 貧者の一灯(ひんじゃのいっとう) |
---|---|
意味 | 貧しい者の心の込もった寄付は、裕福な人の虚栄のための寄付にまさるということ |
由来 | 『阿闍世王受決経』の老婆のエピソード |
類義語 | 長者の万灯より貧者の一灯、貧女の一灯など |
対義語 | 金が物を言う |
英語訳 | He who gives little gives from his heart; he who gives much gives from his wealth.(少し与える者は心から与え、多く与える者は富から与える。) |
「貧者の一灯」自体は、仏教に関係することわざですが、キリスト教の教えにも同じような教えがあります。多くの国で、お金の額よりも気持ちが大切、という考え方があるようです。
しかし、一方でお金持ちの人からの多額の寄付が、現実的に重要になることも多々あります。
自分の気持ちと財布、寄付という行為の意味を踏まえた上で、金額を決めましょう。