醸造酒、蒸留酒、混成酒は「製造方法」が異なります。
お酒をよく飲む方でも、そのお酒がどのように作られているかについてはあまり詳しくない人も多いのではないでしょうか。
それぞれのお酒の作り方を知れば、よりお酒を楽しめることうけあいです。
また、二日酔いになりにくいお酒や、カロリーの低いお酒など、目的に応じてお酒を選びやすくなります。
この記事では、3つのお酒の違いはもちろん、それぞれのお酒の楽しみ方や、ビールやワインなどの有名なお酒がどれに該当するのかも解説します。
「醸造酒」と「蒸留酒」「混成酒」の違い
それぞれ、以下のような製法で製造しています。
- 醸造酒
原料の糖質やでんぷん質を糖化し、発酵する - 蒸留酒
醸造酒を加熱して蒸留する
=アルコールの度数が高くなる - 混成酒
醸造酒や蒸留酒に果実や皮、香料などの副原料を加える
=香りや色などが豊かになる
そのため、蒸留酒は醸造酒に比べてアルコール度数が高くなります。
混成酒は、果実や香料などをお酒に足して作られるため、華やかなお酒になります。また、さまざまな種類の混成酒が作られます。
お酒の中では、蒸留酒が最も二日酔いになりにくいと言われています。
これは、蒸留酒はアルコール以外の不純物が少ないため、分解の際に肝臓に負担がかかりにくいからです。
ただし、一般的に、肝臓が1時間で処理できるアルコール量は、男性が9g、女性が6.5g程度と言われています。蒸留酒は二日酔いになりにくいとはいえ、これを大きく超えてしまうと二日酔いになります。
また、脱水も二日酔いの原因であるため、水分もたくさん摂取するようにしましょう。
「醸造酒」の意味
醸造酒とは、原料の糖質やでんぶんを糖化し、発酵して作るお酒のことです。
代表的な醸造酒には、以下のようなものがあります。
- ワイン
- ビール
- 日本酒
アルコール度数は多くが5度(5%)〜15度(15%)程度で、最高でも20度(20%)程度です。
醸造酒は酒の製法としては最も古く、紀元前4000年程度からあったとされています。
「醸造酒」の種類
醸造酒の中でも、使う原料の特性に応じて製法が以下の3種類に分かれます。
- 単発酵酒
もともとブドウ糖を多量に含む原料を使い、発酵のみで作る
例:ワイン(ぶどう)、シードル(りんご)、はちみつ酒など - 単行複発酵酒
先にデンプンを糖化し、できた糖を発酵させて作る
例:ビール(大麦、穀類) - 並行複発酵酒
デンプンの糖化と糖の発酵を同じ容器内で同時に進行させて作る
例:日本酒(米)
「蒸留酒」の意味
蒸留酒とは、醸造酒を蒸留して作られるお酒のことです。スピリッツとも呼ばれます。
代表的な蒸留酒には以下のようなものがあります。
- ウイスキー
- ブランデー
- 焼酎
- ウォッカ
- ジン
以下のように蒸留を行うことで、よりアルコール度数の高いお酒を作ることができます。
- 醸造酒を加熱し、アルコールを蒸発させる
水は78度では蒸発しないため、蒸気にはアルコールが多く含まれる - 蒸気を冷やし、アルコールを中心とした液体を集める
ただし、蒸留したばかりのお酒は刺激が強いため、しばらく熟成させてよりマイルドな味わいにすることがほとんどです。
その熟成の過程で樽などから色や香りを移すことで、お酒それぞれの特徴が生まれます。
蒸留酒は、もともとは医療用に使われていた高アルコール度数の液体でした。
起源はアリストテレスがワインを蒸留したことだと言われていますが、諸説あります。
「蒸留酒」の種類
蒸留酒には、たくさんの種類があります。原料別に見ていきましょう。
原料 | 代表的な蒸留酒(原料) |
---|---|
果実 | ブランデー(ぶどう) キルシェ(さくらんぼ) アップル・ジャック(りんご) ポワール(西洋なし) ミラベル(プラム) アラック(ナツメヤシ) |
糖 | ラム(サトウキビ) 一部の焼酎甲類(サトウキビ) |
穀物 | ウイスキー(大麦など) ジン(穀物、いも類) アクアビット(穀物、いも類) シュナップス(穀物、いも類) 焼酎甲類(米、麦、とうもろこしなど) 焼酎乙類(米、麦、いも、そばなど) |
その他 | テキーラ(リュウゼツラン) |
中でも有名な蒸留酒について、より詳しく見ていきましょう。
有名な蒸留酒①:焼酎(しょうちゅう)
有名な蒸留酒の1つめは、焼酎です。日本の蒸留酒といえば焼酎を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
原料は米、芋、麦のほか、黒糖やごま、そばなど多岐(たき)にわたり、広く飲まれています。
16世紀から製造されていて、鹿児島をはじめとした南九州で特に多く作られています。
焼酎の中にも製造方法によって分類があります。
- 連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)
連続式蒸留機で何度も連続して蒸留した、純粋なアルコールに近いお酒
その後水で薄めて製品化される - 単式蒸留焼酎(焼酎乙類)
単式蒸留器を使い、1〜3回程度蒸留したお酒
本格焼酎とも呼ばれる
このような製造方法の違いがあるため、焼酎甲類と焼酎乙類には以下のような違いがあります。
連続式蒸留焼酎 (焼酎甲類) | 単式蒸留焼酎 (焼酎乙類) | |
---|---|---|
原料 | 廃糖蜜(はいとうみつ)や酒粕 | 米や麦など |
アルコール度数 | 36度(36%)未満 | 45度(45%)以下 |
味わい | すっきりとくせがない | 素材の風味が強く出やすい |
有名な蒸留酒②:泡盛
有名な蒸留酒の2つめは、泡盛です。
原料は米で、沖縄など琉球諸島で製造されています。
単式蒸留焼酎の一種で、黒麹菌を用いた米麹と、水を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留器による蒸留したものになります。
実は調味料としても利用されています。
有名な蒸留酒③:ウイスキー
有名な蒸留酒の3つめは、ウイスキーです。
原料は大麦や小麦、ライ麦、とうもろこしなどで、蒸留後に木の樽で熟成させます。
ウイスキーは原料と生産地によって分類されます。それぞれ見ていきましょう。
- モルトウイスキー
大麦麦芽を原料として作られたもの - グレーンウイスキー
その他の穀物を原料として作られたもの - ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜて作られたもの
- アイリッシュウイスキー
アイルランドで作られたもの - スコッチウイスキー
スコットランドで作られたもの - バーボンウイスキー
アメリカで作られたもの - カナディアンウイスキー
カナダで作られたもの - ジャパニーズウイスキー
日本で作られたもの
生産地や原料、熟成年数、さらには熟成樽の種類など、さまざまな要因によって多種多様なフレーバーが存在するお酒です。
有名な蒸留酒④:ウォッカ
有名な蒸留酒の4つめは、ウォッカです。
原料は大麦や小麦、ライ麦、じゃがいもなどの穀物で、蒸留後に白樺(しらかば)という木の炭でろ過して作られるため、くせが少ないです。
ロシアなどの旧ソ連圏や北欧圏で盛んに製造されています。アルコール度数は平均40度と高いです。
世界一アルコール度数が高いお酒は、ポーランドのウォッカ「スピリタス」で、アルコール度数が96度もあります。
そのアルコール度数の高さから、口に含んで火をつけると吐く息に着火することができ、火を吹いたように見せかけることができます。
なお、大変危険であるため、決して実行にはうつさないでください。
有名な蒸留酒⑤:ブランデー
有名な蒸留酒の5つめは、ブランデーです。お菓子作りで使ったことがある人もいるかもしれません。
原料は果実酒で、主に白ワインが使用されますが、りんごやさくらんぼを原料とするものもあります。蒸留したのちに樽に入れ、熟成して製造します。
熟成期間は5〜8年のものが多いですが、稀に20年以上の長いものもあります。
「コニャック」や「アルマニャック」など、フランス産のものが有名です。
有名な蒸留酒⑥:テキーラ
有名な蒸留酒の6つめは、テキーラです。
原料はメキシコで生産されるリュウゼツラン(竜舌蘭)という多肉植物で、別名アガヴェと言います。
原料の何割がアガヴェかによってどの程度高級かが変わります。原料の100%がアガヴェのものはプレミアムテキーラと呼ばれ、非常に高級で高品質です。
テキーラと認められるためには、原料のうち51%以上がアガヴェである必要があり、残りは砂糖などの副原料を使用しています。
「蒸留酒」の飲み方
蒸留酒にはさまざまな飲み方があります。定番の飲み方を紹介します。
飲み方 | メリット | ポイント | |
---|---|---|---|
ストレート | 何も加えずそのまま飲む | 味と香りを直に味わえる | チェイサー(口直しの水)と交互に飲む |
ロック | 大きな氷だけを入れて飲む | 多少飲みやすく、本来の味も味わえる | 氷の溶けすぎに注意する |
水割り | 氷と水を入れて飲む | 飲みやすい | しっかり冷やして飲む |
他にも、焼酎ならお湯割り、ウイスキーならソーダ割り(ハイボール)、ウォッカなら冷凍庫で冷やしてから飲むなど、蒸留酒の種類や好みに応じてさまざまな飲み方があります。
テキーラの飲み方
蒸留酒の中でも、テキーラは2つの有名な飲み方があります。紹介します。
- ストレート
ライムを口でかじり、すぐにテキーラを飲み、岩塩を舐める - ショットガン
①テキーラとジンジャーエールを1:1の割合で注ぐ
②テーブルにグラスをたたきつけ、一瞬で混ぜて泡状にする
③溢れるテキーラをこぼさないように飲む
上記の飲み方はどちらも急激に酔いが回る飲み方になります。
急性アルコール中毒などには十分注意して飲みましょう。
「混成酒」の意味
混成酒とは、醸造酒や蒸留酒に果物や皮、香料や甘味料などの副原料を加えて作るお酒のことです。
代表的な混成酒は、梅酒、リキュール、薬酒やみりんなどです。
度数は元になる醸造酒や蒸留酒の度数によるため一概には言えませんが、一般的には梅酒だと8〜20度、みりんは12〜15度、リキュールは15度〜55度とされています。
「混成酒」の由来
混成酒は、紀元前4世紀頃に、古代ギリシアの医者であったヒポクラテス(紀元前460頃〜紀元前370頃)がワインに薬草を溶かし込んだ薬種を作ったのが起源だと言われています。
ヒポクラテスは医学の父や医聖などとも呼ばれています。
日本でも平安時代には屠蘇(とそ)や菊酒(きくさけ)といった、漢方薬や菊を日本酒に浸した薬酒が飲まれていました。
これは3世紀頃に中国で生まれたものが由来だとされています。
「混成酒」の種類
混成酒にもさまざまな種類があり、製造方法によって分類されています。詳しく見ていきましょう。
- 浸漬法
香り成分を漬け込む - 蒸留法
一緒に蒸留する - パーコレーション法
ベースとなるお酒を副原料に流しながら香り成分を抽出する
「リキュール」の種類
混成酒の中でも、リキュールはさらに原料によってさまざまに分類されています。詳しく見ていきましょう。
- フルーツ系
果実や果物の皮を使って作られたリキュール
例:スロー・ジン、カシス、チェリー・ブランデーなど - ハーブ・スパイス系
ハーブやスパイスなどを使って作られたリキュール
リキュールの中で最も歴史が古い
例:シャルトリューズ、カンパリ、ミント・リキュールなど - ナッツ・種子系
ナッツや栗の実、コーヒー豆などを使って作られたリキュール
例:コーヒー・リキュール、カカオ・リキュール、アマレットなど - その他
卵やミルククリームなどを使って作るリキュールもある
例:アドヴォカート、アイリッシュクリームなど
「エキス」とは、お酒から、水やアルコールなどの蒸発する物質を全て蒸発させたときにも蒸発せずに残る物質のことです。お酒の場合はほぼ糖分です。
そして、「エキス分」とは、お酒の容量のうち、どの程度エキスが含まれているかを表す指標です。「度」または「%」で表します。
つまり、エキス分が高ければ高いほど甘いお酒であるということになります。
なお、エキス分が高いほど下に沈みやすいため、これを利用して複数のリキュールを層にする「ブース・カフェ」というカクテルのスタイルがあります。
「混成酒」と「リキュール」の違い
混成酒とリキュールには、以下のような違いがあります。
- 混成酒
リキュールも含め、醸造酒や蒸留酒に副原料を足したお酒一般のこと
例:リキュールのほか、サングリア、ベルモット、みりんなど - リキュール
蒸留酒をベースに作った、特定の基準を満たした混成酒のこと
例:コーヒー・リキュールなど
補足:お酒ごとのカロリー
醸造酒、蒸留酒、混成酒のうち、有名なもののカロリーを比較すると、以下のようになります。
それぞれがおおよそ同程度のアルコール度数になるように調整し、比較しました。
お酒 | カロリー | |
---|---|---|
醸造酒 | ワイン(グラス1杯≒120ml) | 110kcal |
日本酒(0.5合=90ml) | 100kcal | |
ビール(中ジョッキ1杯≒350ml) | 180kcal | |
蒸留酒 | 焼酎(コップ0.5杯≒60ml) | 125kcal |
泡盛(コップ0.5杯) | 105kcal | |
ウイスキー(シングル1杯=30ml) | 71kcal | |
ブランデー(シングル1杯) | 71kcal | |
テキーラ(1ショット=30ml) | 64kcal | |
混成酒 | 梅酒(コップ1杯) | 156kcal |
カシスリキュール(シングル1杯) | 80kcal |
あまり大きな違いはありませんが、どちらかといえば蒸留酒のカロリーが低いようです。
なお、カシスリキュールや焼酎など割って飲むことが多いお酒に関しては、割るものによっては低カロリーにも高カロリーにもなります。たとえばカシスウーロンなどは低カロリーですが、カシスオレンジだと高くなります。
また、糖質に関しては、蒸留酒が最も少ないと言われています。醸造酒には発酵の工程で生成されたブドウ糖などがそのまま含まれるのに対し、蒸留酒ではアルコールの成分のみを抽出するためです。
まとめ
以上、この記事では、「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の違いについて解説しました。
- 醸造酒
原料の糖質やでんぶんを糖化し、発酵して作るお酒 - 蒸留酒
醸造酒を蒸留して作られるお酒 - 混成酒
醸造酒や蒸留酒に副原料を加えて作るお酒