今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「プロパガンダ」です。
「プロパガンダ」の意味・使い方・語源・類義語についてわかりやすく解説します。
☆「プロパガンダ」をざっくり言うと……
英語表記 | プロパガンダ(propaganda) |
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意味 | ある特定の考えを植えつけるために、組織的に行われる宣伝 |
語源 | ラテン語の “propagare”(繁殖させる)から |
類義語 | アジテーション |
「プロパガンダ」とは?
「プロパガンダ」の意味を詳しく
「プロパガンダ」とは、組織ぐるみで行われる宣伝のことです。
本来であれば、企業が流しているコマーシャルなども、プロパガンダに含まれます。しかし、「プロパガンダ」と聞くと、何となく「過激なもの」「危険なもの」という印象を持つでしょう。
実際に、ふだん「プロパガンダ」と呼ばれるものは、ある考えを植えつけるために行う宣伝のことを指します。
もちろん、A社の広告を見て「A社の製品は素晴らしい!」と思うのも、広告によって考えが植えつけられたといえるかもしれません。しかし、ここでいう「ある特定の考え」とは、政治的な主張や教義(宗教の教えや考え)を指しています。
プロパガンダの方法
プロパガンダの方法は、いくつかのパターンがあります。ここでは、2つの例を紹介します。
恐怖をあおる方法
除菌剤のCMで、「除菌していないと菌がたくさん!」と言いながら無数の菌がうごめいている映像を流しているものを見たことはありませんか。
こうしたCMは、「除菌剤を買って除菌しないと、不潔で病気にかかってしまうのではないだろうか」という、見た人の恐怖心をかきたてることが意図されています。恐怖を感じた人は、恐怖を取り除こうと行動します。この例では、除菌剤を買うことにつながります。
この方法を国家が行うプロパガンダに当てはめてみましょう。
A国とB国が、戦争状態にあるとします。A国の大統領が、B国の兵士が行った残虐な行為を例にあげ、「B国を勝たせたらおそろしいことになる」と演説したとしましょう。
この演説は「B国はおそろしい」→「B国の脅威から自分たちを守るためにも、戦争に協力しよう」という考え方を人々に植えつけることを意図しています。
実際に、このような内容のプロパガンダは、第一次世界大戦や第二次世界大戦などではよく行われました。現代では昔に比べて新聞やラジオなどのマスメディアが発達したため、プロパガンダの力が強まっています。
権威を借りる方法
テレビのワイドショーには、必ずと言っていいほど「コメンテーター」が出演しています。彼らの肩書きは、「○○評論家」や「大学教授」、「○○ジャーナリスト」などが多いのではないでしょうか。
コメンテーターは、自分の専門分野だけではなく、番組で扱われるすべての内容に対してコメントを求められます。たとえば、軍事評論家が東京で人気のスイーツ情報に「おいしそうですね」などとコメントしている光景はしばしば起こります。
なぜ、彼らはワイドショーに出ているのでしょうか。それは、専門家が言う言葉は信用されやすいからです。
国家が行うプロパガンダでも、専門家がコメントしたことを根拠にする場合がしばしばあります。一部の極端な思想をもつ専門家であっても、その人が言う言葉には信用性があるからです。
「御用学者」という言葉があります。「国の言ってほしいことを言う学者」という意味の悪口です。御用学者の発言によって、事実がねじ曲がって伝わってしまうこともあります。
彼らは、他の学者にも受け入れられる内容か、つまり広く認められる内容かどうかに関係なく、国にとって都合の良いことしか言わないからです。
「プロパガンダ」の使い方
- ニュースは書き方によって印象が大きく変わる。プロパガンダに流されないことが重要だ。
- 冷戦では、テレビを通して行われるアメリカとソ連のプロパガンダ合戦が見られた。
- 政府の声明がプロパガンダであることに気づかない市民は、勇ましい声明に熱狂した。
上の例文のように、「プロパガンダ」は名詞として使われることが多いです。「プロパガンダする」などのように動詞として使われることはあまりないでしょう。
「プロパガンダ」の語源
「プロパガンダ」の語源は、ラテン語の “propagare” です。「種をまく」「繁殖させる」などの意味があります。そこから、「考えを広める」という意味が生まれました。
「プロパガンダ」という言葉がはじめてつかわれたのは、キリスト教カトリック教会の “Congregatio de Propaganda Fide”(布教聖省)の名前でした。元々プロパガンダは、布教を意味する言葉だったのです。ここでのプロパガンダには、悪い意味はありません。
しかし、カトリックと対立するプロテスタントにとってみれば、「カトリックの布教」は、敵対する(正しくないと思っている)考えを広める危険な行為です。そこで、プロパガンダに悪い意味がついたといわれています。
「プロパガンダ」の類義語
「プロパガンダ」の類義語として、「アジテーション」(agitation)があります。「扇動(煽動)」という意味の言葉です。
元は「かき乱す」という意味で、そこから「騒ぎを起こして人々をある行動へ向かわせる」という意味が生まれました。日本でも、演説やパフォーマンスなどによって人々を違法行為に導く行為は罪に問われます。
アジテーションは「アジ」と省略されることもあります。
まとめ
以上、この記事では「プロパガンダ」について解説しました。
英語表記 | プロパガンダ(propaganda) |
---|---|
意味 | ある特定の考えを植えつけるために、組織的に行われる宣伝 |
語源 | ラテン語の “propagare”(繁殖させる)から |
類義語 | アジテーション |
プロパガンダは、いつの時代でも、どこの国でも行われています。時には事実に反することを持ち出して行われるときもあれば、事実がねじ曲がって伝わるような方法で行うときもあります。
プロパガンダに惑わされないために、常に情報の真偽や意図を見極めようとすることが重要です。