今回ご紹介する言葉は、故事成語の「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」です。
「呉越同舟」の意味、例文、由来、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「呉越同舟」をざっくり言うと……
読み方 | 呉越同舟(ごえつどうしゅう) |
---|---|
意味 | 敵対する人同士や仲の悪い者同士でも同じ困難や利害のために協力することのたとえ |
由来 | 『孫子』に出てくる「呉人、越人と相悪むなり。其の舟を同じくして済りて風に遭うに当たれば、その相救うや左右の手の如し」という言葉から |
類義語 | 同舟相救う、大同団結、同舟共済、など |
英語訳 | while the thunder lasted, two bad men were friends. (雷が鳴っている間、二人の悪人たちは友人だった)など |
中国語 | 吴越同舟 |
このページの目次
「呉越同舟」の意味をスッキリ理解!
「呉越同舟」の意味を詳しく
「呉越同舟」とは、敵対する人同士や仲の悪い者同士でも同じ困難や利害のために協力することのたとえです。
「呉越同舟」には以下のような2つのよくある間違いがあります。
- 「呉越同船」と表記にするのは間違い
- 「敵同士が同じ場所に居合わせる状況」という意味で用いるのは間違い
それぞれの間違いについて詳しく見ていきましょう。
①「呉越同船」と表記にするのは間違い
「呉越同船(ごえつどうせん)」と表記するのは間違いなので注意が必要です。
なぜなら、「舟」は船の中でも小さく、嵐などに出くわすと簡単にひっくり返ってしまうものを指しているからです。
もし「船」としてしまうと、人やモノをのせて水上を走行する乗り物全般を指すことになってしまいます。
②「敵同士が同じ場所に居合わせる状況」という意味で用いるのは間違い
「呉越同舟」を「敵対する者同士が同じ場所に居合わせてしまう困った状況」という意味で用いるのは、厳密には間違いです。
「呉越同舟」の意味で大切なのは「敵同士でも同じ困難にさらされれば協力する」という部分だからです。
ただ、この使い方も一般的になってきているため、だんだん間違いとは言えなくなってきています。
「呉越同舟」の例文
- ライバル同士が共通の敵のために協力する呉越同舟のような展開は燃える。
- 課長と社長は仲が悪いが、呉越同舟ということで、会社の危機には協力する。
- 呉越同舟という言葉があるだろう。これはあなたと私も協力すべき事態だ。
「呉越同舟」の由来
「呉越同舟」の出典は『孫子(そんし)』の「九地(きゅうち)」という章です。
ここに以下のようなエピソードが記されています。
中国の春秋(しゅんじゅう)時代に呉(ご)という国と、越(えつ)という国がありました。
そして、この2つの国は宿敵同士であり、38年ほどの間争い続けました。
そんなある時、同じ船に呉と越の人がそれぞれ10人ほど乗り合わせました。
呉人と越人は互いに知らんぷりをしていて船には重い空気が流れていました。
しかし、舟が川を渡っていると、突然強い風が吹いて巨大な波が舟を襲いました。
すると、呉人と越人は協力しあって舟が転覆しないように助け合ったのです。
このエピソードから、「呉越同舟」という言葉が生まれました。
ちなみに、この話はたとえ話なのですが、孔子はここで、「競争に勝つためには組織に危機感を持たせよ」ということを伝えようとしています。
『孫子』は中国の春秋時代の軍事思想家、孫武によって書かれたとされる兵法書です。
兵法書の中ではもっとも有名なもののひとつです。
「呉越同舟」の類義語
「呉越同舟」には以下のような類義語があります。
- 同舟相救う(どうしゅうあいすくう):立場が同じ者はいつもは敵同士でも助け合う
- 共同戦線:主義や主張の違う者同士が共通の目的のために協力すること
- 大同団結(だいどうだんけつ):いくつかの団体が共通の目的に向かってひとつにまとまること
- 同舟共済(どうしゅうきょうさい):同じ課題を持つ者同士が協力しあうこと
- 楚越同舟(そえつどうしゅう):仲が悪い者同士が同じ境遇にあること
「呉越同舟」の英語訳
「呉越同舟」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- while the thunder lasted, two bad men were friends.
(雷が鳴っている間、二人の悪人たちは友人だった) - Woes unite foes.
(災いは敵同士を団結させる) - Bitter enemies in the same boat.
(同じボートの上にいる宿敵) - We’re in the same boat.
(同じボートの上にいること) - strange bedfellows
(ありえない協力関係のこと)
「呉越同舟」の中国語
「呉越同舟」は中国語では以下のように表記します。
(ピンイン:Wú Yuè tóng zhōu)
「吴越同舟」は四字熟語の「呉越同舟」と同じように、「仲が悪い者同士が協力する」という意味です。
ただ、「仲が悪い者同士が居合わせる困った状況」という解釈はありません。
まとめ
以上、この記事では「呉越同舟」について解説しました。
読み方 | 呉越同舟(ごえつどうしゅう) |
---|---|
意味 | 敵対する人同士や仲の悪い者同士でも同じ困難や利害のために協力することのたとえ |
由来 | 『孫子』に出てくる「呉人、越人と相悪むなり。其の舟を同じくして済りて風に遭うに当たれば、その相救うや左右の手の如し」という言葉から |
類義語 | 同舟相救う、大同団結、同舟共済、など |
英語訳 | while the thunder lasted, two bad men were friends. (雷が鳴っている間、二人の悪人たちは友人だった)など |
中国語 | 吴越同舟 |
「呉越同舟」は有名な言葉なので聞いたことがあるという人も多かったのではないでしょうか。
そして、とても教訓に満ちた言葉でもあります。
この言葉をしっかりと覚えておきたいですね。