今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「有無相生(うむそうせい)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語についてわかりやすく解説します。
☆「有無相生」をざっくり言うと……
読み方 | 有無相生(うむそうせい) |
---|---|
意味 | この世のものはすべて相対的な関係にあること |
由来 | 人間の愚かさと危うさを警告した『老子』の第2章 |
類義語 | 音声相和、高下相傾、前後相随など |
「有無相生」の意味をスッキリ理解!
「有無相生」の意味を詳しく
有無相生とは、この世のすべての物は相対的な関係にあることと指します。
「無」があるからこそ「有」というものがあると認識できるので、「無」がなくなってしまえば、「有」という意味も失われます。つまり、「無」と「有」があってこそ、どちらにも意味が生まれます。
例えば、自分より背の低い友達がいるとします。「背が低い」とは、絶対的な意味を持たず、「背が高い」人がいるから、その人と比べることによって「背が低い」という価値観が生まれます。
背が低い人がいなければ、背が高い人も存在しませんし、その逆も同様です。
このように、「有無相生」は、すべての物は相手なしでは成り立つことができないことを表しています。
「有無相生」の使い方
- 有無相生なのだから、頭がいい人をうらやんでも仕方がない。
- お金持ちな人で、有無相生を理解している人は、他人への感謝の気持ちが深いだろう。
- 他人と比べて落ち込んだ時は、全ては有無相生であることを思い出したらよい。
②の例文では、お金を持たない人がいるからこそ、自分が相対的に金持ちに見えるだけなので、他人なしに自分が成り立たないということを分かっている人は、周囲の人に感謝するだろうということです。
③の例文では、優れている人がいるからこそ、劣っている人がいるように見えるだけで、自分が絶対的に劣っているわけではないことを示しています。
「有無相生」の由来
有無相生という言葉は、『老子』という本の第2章で使われています。この本の本来の名前は『老子道徳経(ろうしどうとくきょう)』です。
これは、中国の春秋戦国時代の楚(そ)の思想家である老子という人物によって書かれたと言われています。彼の生没年代は明確ではありません。
老子本人の他、複数人によって書かれていて、81章で構成されています。
本の中では、人間の価値観は相対的なものであって、絶対的なものではないのに、それを絶対的なものと錯覚して、物事を勝手に捻じ曲げて秩序立てている人間の愚かさと危うさが警告されています。
つまり、背が高い人や、裕福な人、知識がある人などを絶対的に良いものだと決めつけ、世の中の物に優劣をつけることは間違っていることを説いています。
「有無相生」の類義語
有無相生には以下のような類義語があります。
- 音声相和(おんせいそうわ):音階と旋律(せんりつ)とは相手があってこそ調和すること
- 高下相傾(こうげそうけい):「高い」と「低い」は、相手があってこそ現れること
- 前後相随(ぜんごそうずい):「前」と「後ろ」は相手があってこそ並びあうこと
- 長短相形(ちょうたんそうけい):「長い」と「短い」とは相手があってこそ形になること
これらは、『老子』の第2章で、有無相生を説明するために使われた例えです。
まとめ
以上、この記事では「有無相生」について解説しました。
読み方 | 有無相生(うむそうせい) |
---|---|
意味 | この世のものはすべて相対的な関係にあること |
由来 | 人間の愚かさと危うさを警告した『老子』の第2章 |
類義語 | 音声相和、高下相傾、前後相随など |
メディアなどで「多様性」という言葉をよく聞くようになりつつも、あらゆる価値観を受け入れるのは簡単なことではありません。
しかし、「有無相生」の考え方を心にとめておけば、様々な人がいることが当たり前だと思えるようになりますね。