地上波の番組でも「ラップ」をテーマにした番組が人気を得ていて、それがきっかけでラップミュージックを好きになった人も多いのではないでしょうか。10代を中心に音楽だけではなく、ファッションでもラップミュージックを意識したアイテムは人気です。
しかし「ラップ」も「ヒップホップ」もよく聞くものの、何が違うのか理解していない人も多いです。そこでこの記事では、「ラップ」も「ヒップホップ」の違いについて解説します。
結論:「ヒップホップ」は音楽の種類で、「ラップ」は歌唱法の種類
一方、「ラップ」 とは、ボーカルの人がリズミカルに言葉を発する歌唱法の1つです。
「ヒップホップ」の音楽に合わせて「ラップ」が行われます。
「ヒップホップ」をもっと詳しく
「ヒップホップ」は音楽そのもののジャンルであり、他にもダンスでのヒップホップダンスというものがあります。
ヒップホップダンスとは、「ヒップホップ」の音楽を使ったダンスという意味です。「ヒップホップ」は、リズム感を重視した音楽であり、低音が一定のリズムで刻まれることによって身体を使ってリズムを取りやすいです。そのため「ヒップホップ」の音楽が、ダンスでも使われます。
それでは、「ヒップホップ」は、なぜリズムを重視するような音楽になったのでしょうか。その答えはその歴史とルーツにあります。ヒップホップは、1970年代にニューヨークで生まれました。
その格差が大きいと呼ばれているニューヨークの中のサウスブロンクスと呼ばれるスラム街で誕生します。ここには黒人の人たちが多い地域です。彼らはお金を持っておらず、毎日公園に集まって騒いでいました。
当然、お金を持っていないので彼らが持ち合わせている、一番高価な娯楽品を持参して公園で遊ぶことになります。その娯楽品がレコードプレイヤーです。レコードプレイヤーを道端のコンセントに繋いで音楽を流します。
そこでみんなで集まって騒ぐのですが、その音楽に歌を入れたり、ダンスを入れたりすることで現在のイメージするヒップホップが出来上がったとされています。また、レコードもかけられないような場合では、口や身体を使ってリズムを刻んでいました。
それゆえに、リズム重視の音楽になったのです。
当時、「ヒップホップ」の音楽に合わせて3つのパフォーマンスが行われました。それがラップ、ブレイクダンス、グラフィティ・アートの3つです。ラップはボーカルのことですが、こちらは次項で詳しく解説します。
ブレイクダンスは、バック転やバック宙など派手なアクロバットを多用するダンスのことで、身体を張った音楽のことです。特に頭を地上につけて、コマのように回転するダンスアクションは有名です。
そしてグラフィティ・アートですが、これは壁にペイントをしたアートのことです。電車の高架下などでスプレーを使った派手な落書きを見たことはありませんか。グラフィティ・アートはこういったものをさします。
つまり、壁のグラフィティアートに囲まれた中で、ダンスやラップをすると「ヒップホップ」になったのです。しかし、現在では、ヒップホップの音楽に合わせて4つのパフォーマンスが行われます。その4つは、MC、DJ、グラフィティ、ブレイクダンスです。
MCは主にラップの意味です。DJはレコードを流して、音楽をかける人です。グラフィティとブレイクダンスは先ほどの意味と変わりませんが、このDJの要素が加わりました。
これは、「ヒップホップ」に携わる黒人などが所得を得て、今ではきちんとした電力機材と音楽を流しながらパフォーマンスを行うことができるようになったからです。
「ラップ」をもっと詳しく
では、一方の「ラップ」はどういったものなのでしょうか。先ほど、「ヒップホップ」の音楽に合わせて行われるパフォーマンスの1つに「ラップ」があると解説しました。それでは、「ラップ」について詳しく解説します。
「ラップ」とは、歌唱方法のことです。ラップが他のロックやポップスでの歌唱と異なる点は、その歌詞にあります。
「ラップ」は韻を踏むことを重視しています。
例えばspaghetti(スパゲッティ)とsweaty(汗)は、5文字ほど発音が似ています。冒頭の「s 」の音と「a, e, t, i」の音です。これはEMINEMという、ラップ界でトップクラスのアーティストが楽曲中で踏んだ非常に有名な韻の例です。
このように、発音が似ている言葉を合わせて使うことが「韻を踏む」ということなのです。
この韻を踏むことができる単語を上手に使い合わせて、なおかつ意味のある文で歌詞を作成することが「ラップ」の醍醐味であり、一番面白い点です。韻を踏む言葉遊びをすることで、聴き心地がよくなります。
そして、この歌詞を音楽のビートに乗せて読み上げるのです。リズムのビートにタイミングを合わせて上手く乗せることもできますし、少しメロディをつけて乗せることで印象がガラリと変わる場合もあります。このように韻文を様々な方法で表現することが「ラップ」なのです。
それでは、「ラップバトル」はどのような経緯で生まれたのでしょうか。「ヒップホップ」や「ラップ」が誕生した当時のニューヨークの治安は良いものではなく、ギャング同士の抗争も絶えませんでした。
何かを巡って暴力で対立することもあり、死者も出るほど酷い状況でした。しかしその暴力を失くそうとラップバトルができあがったのです。相手の悪口や揚げ足を取りながら、韻を踏み合うことでバトルになりました。
このようにして誕生したラップバトルが、ラップを趣味でやっている人たちの間でも有名になり、悪口や揚げ足を取り合うラップバトルの大会が始まったことによって、現在のようにポピュラーシーンでラップバトルが愛されるようなったのです。
ラップバトルと同様に、切り離せない「ラップ」の文化はフリースタイルです。フリースタイルは歌詞を書かずに、完全に即興で「ラップ」を行うことです。すなわち、何も考えていない状態で、上手に韻を踏みながら意味のある文章にしなければなりません。
この作業は非常に単純なのですが、とても難しいのです。なぜならば、一瞬で自分の頭の中にある辞書から似た音の持つ単語を探し出し、それを意味のある文章にしなければならないからです。
さらに、その文章に上手にメロディをつけてこそ、本物のラッパーであるとも言われます。このように、一見簡単なように見えますが、とても奥が深いので頭の良さもフリースタイルの「ラップ」に求められます。
まとめ
以上、この記事では、「ヒップホップ」と「ラップ」の違いについて解説しました。
- ヒップホップ:音楽の一種で、リズム感を重視する
- ラップ:韻を踏むことを重視する歌唱法