今回ご紹介する言葉は、故事成語の「要領を得ず」です。
この言葉はあまり故事成語というイメージがないかもしれません。
しかし、れっきとした故事成語です。
そして、この言葉はとても有名ですよね。
会話の中で使ったことがあるという人もいるのではないでしょうか。
そこで、「要領を得ず」の意味、由来、例文、英訳についてわかりやすく解説します。
☆「要領を得ず」をざっくり言うと……
読み方 | 要領を得ず |
---|---|
意味 | 要点がはっきりしないこと |
由来 | 張騫が大月氏国まで行ったものの、協力を引き出せなかったことから |
英語訳 | be pointless |
「要領を得ず」の意味をスッキリ理解!
「要領を得ず」の意味を詳しく
「要領を得ず」とは、要点がはっきりしないことです。
ちなみに、「要領」には2つの意味があります。
まず1つめは「人間の体の中で命にかかわる重要な部分」という意味です。
また、2つめは「着物の腰と襟首の部分」という意味です。
そして、着物を扱う時には必ず腰と襟を持つことから、「ものごとを扱うコツ」という意味も持っています。
「要領を得ず」の由来
「要領を得ず」の出典は『漢書(かんじょ)』の「張騫(ちょうけん)伝」という章です。
詳しく見ていきましょう。
紀元前2世紀、漢の武帝は即位するとすぐに、宿敵の匈奴(きょうど)を倒すために大月氏国(だいげっしこく)と協力して、匈奴を挟み撃ちにしようと考えました。
そして、もちろん電話などない時代ですから、協力してもらうためには大月氏国に使者を送る必要がありました。
しかし、大月氏国へ行くためには大山脈を超える必要があります。
また、匈奴の国の中を進んでいく必要がありました。
こんな状況ですから、みんな使者をやろうとしません。
しかし、そんな中、張騫(ちょうけん)という男が名乗りをあげました。
そして、彼は100人余りの従者などと一緒に漢を出発しました。
当然、匈奴の領内に入ると、張騫たちは捕えられてしまいます。
敵国の人が領内を通ろうとしたのですから、これはとても自然な反応です。
そして、張騫たちはそのまま10年あまり匈奴で捕まっていました。
ちなみに、張騫はこの時に、匈奴の女との間に子どもまで生んでいたようです。
しかし、張騫は匈奴で一生を終えるつもりではありませんでした。
彼は目的を果たすべく、スキを見て脱走します。
そして、漢に友好的な大苑(だいえん)国に逃げ込み、そこから大月氏の領土にまでやってきました。
ちなみに、武帝が大月氏と協力しようと考えたのは、大月氏と匈奴との仲が悪かったからです。
大月氏は王様を匈奴に暗殺されていたので、匈奴のことを憎んでいると考えたのです。
しかし、武帝の予想とは違って、新しい王は現状に満足し、匈奴を攻めようとは考えていませんでした。
なぜなら、大月氏がその時いた土地は豊かであり、敵も少ないところだったからです。
また、大月氏国は漢とも離れており、友好関係を結ぶメリットも特にありません。
また、漢の要請を断ったとしても、遠いので漢も攻めてこれません。
これでは、わざわざ漢に協力するメリットはないですよね。
なので、張騫は大月氏の王の協力を引き出すことはできませんでした。
張騫はその後、1年ほど大月氏国で過ごしますが、ついに帰ることにしました。
しかし、帰り道でも匈奴は黙っていません。
張騫はまた捕まってしまいました。
ちなみに、張騫は1年ほど捕まっていましたが、匈奴に内紛が起こると、これに乗じて脱走します。
そして、命からがら漢まで戻ってきたのです。
ちなみに、このころには最初ついてきていた従者はひとりも残っていませんでした。
張騫のもとに残ったのは、妻と妻の父だけでした。
そして、張騫は武帝に結果を報告しました。
しかし、武帝は協力を引き出せなかったことに怒ることはありませんでした。
なぜなら、このころの漢は、もう単独で匈奴と戦う態勢を整えていたからです。
また、張騫が旅の途中で集めた西域の情報はとても貴重であり、武帝はこれを高く評価しました。
そして、この場面で「ついに月氏の要領を得る事能(あた)わず」という文が出てきます。
これが、「要領を得ず」の語源になっています。
「要領を得ず」の例文
- 彼は要領を得ない説明をするので、内容がよく理解できない。
- 彼女は政府に説明を求めたが、要領を得ない釈明が返ってくるだけだった。
- 要領を得ない説明をされたので、担当の人を呼ぶことにした。
「要領を得ず」の英語訳
「要領を得ず」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- be pointless
(要領を得ない)
まとめ
以上、この記事では「要領を得ず」について解説しました。
読み方 | 要領を得ず |
---|---|
意味 | 要点がはっきりしないこと |
由来 | 張騫が大月氏国まで行ったものの、協力を引き出せなかったことから |
英語訳 | be pointless |
「要領を得ず」にはこのような由来があったんですね。
この知識を友達に自慢してみるのもいいかもしれません。