「巧言令色鮮し仁」の意味とは?読み方は?英語や類義語まで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、故事成語の「巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」です。

この言葉は、有めな古典である『論語』に由来する言葉で、その意味するところからは他人としての望ましいあり方を学ぶことができます。ただ、字数の多さから、ひとつひとつの言葉の意味をとらえるのが難しいと感じる方も多いかもしれません。

そこで、原文『論語』を交えながら、「巧言令色鮮し仁」の意味・由来・使い方・類義語・対義語・英訳についてわかりやすく解説します。

☆「巧言令色鮮し仁」をざっくり言うと……

読み方巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)
意味言葉巧みで人から好かれようと愛想を振りまく人には、誠実な人間が少ないということ
由来『論語』の言葉から
類義語巧言は徳を乱る
対義語剛毅朴訥仁に近し
英語訳He who gives fair words feeds you with an empty spoon など

「巧言令色鮮し仁」の意味をスッキリ理解!

巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん):言葉巧みで人から好かれようと愛想を振りまく人には、誠実な人間が少ないということ

「巧言令色鮮し仁」の意味を詳しく

「巧言令色鮮し仁」とは、言葉巧みに人から好かれようと愛想を振りまく人には、誠実な人間が少ないということを意味します。

「巧言令色鮮し仁」は、表面だけを良く見せて接してくる人の裏には、他者を利用して利益を得ようとする目的が潜んでいる示唆した言葉です。

 

「巧言」とは、口先だけが上手で、それに見合う中身を兼ね備えていないことを指します。また、「令色」とは、人にこびへつらうような愛想のよい顔つきのことです。ここでの「色」は顔つきを、「令」は立派でよいことを指しています。

また、「鮮し」は滅多にないことを指しており、「少なし」と置き換えて差し支えありません。そして、「仁」とは、他人を思いやる心を持って他人と関わる姿勢を指します。儒教の根幹をなす考え方です。

 

ちなみに、「巧言令色」の部分は、独立した四字熟語として使われています。

「巧言令色鮮し仁」の由来

「巧言令色鮮し仁」の出典は、『論語』の『学而(がくじ)』という篇です。『論語』は孔子と彼の位が高い弟子たちの言行を記録した書物です。

『論語』の中で、孔子は次のように述べています。

子曰(いわ)く、巧言令色、鮮なし仁と。
(孔子先生がおっしゃった。「言葉や顔つきを上手くとりつくろうような人たちの中に、人格者はいない。」と。)

また、まったく同じ句が『陽貨(ようか)』という篇にも登場します。それだけ重要な言葉だということです。

「巧言令色鮮し仁」の例文

  1. 巧言令色鮮し仁」という言葉があるが、彼はまさしくそういう男だ。
  2. 愛想がよいのはよいことだが、あまりにも節操がないと、巧言令色鮮し仁だと言われるぞ。
  3. 巧言令色鮮し仁と言われないようにしたいものだ。

「巧言令色鮮し仁」の類義語

「巧言令色鮮し仁」には以下のような類義語があります。

  • 巧言は徳を乱る:表面だけをとりつくろった言葉は、自身への信頼を失わせ、徳を損なわせること
「巧言は徳を乱る」も『論語』を出典に持つ言葉です。『衛霊公(えいれいこう)』という篇に、以下の言葉が登場します。

『論語』の一節
子曰く、「巧言は徳を乱る。小(ショウ)、忍(しの)ばざれば、則ち大謀(タイボウ)を乱る。」と。
(孔子先生はおっしゃった。「口先だけの上手な言葉は徳を損なう。小さいことを耐えられなければ、大きな望みはかなえられない。」と。)

「巧言は徳を乱る」は、「巧言乱徳」という形で四字熟語としても使われています。

「巧言令色鮮し仁」の対義語

「巧言令色鮮し仁」には以下のような対義語があります。

  • 剛毅朴訥(ごうきぼくとつ)仁に近し:意志が固く頑固で、素朴で口数が少ない人物が仁に近いこと

「剛毅朴訥仁に近し」も、『論語』が出典です。『子路(しろ)』という篇に以下の言葉が登場します。

『論語』の一節
子曰く、「剛毅朴訥は仁に近し。」と。
(孔子先生はおっしゃった。「意志が固くて飾り気のない人は、真の人格者に近い。」と。)

ちなみに、「剛毅朴訥」という四字熟語が上記の文から独立しました。

「巧言令色鮮し仁」の英語訳

「巧言令色鮮し仁」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • He who gives fair words feeds you with an empty spoon.
    (巧言を操るのは空のさじで食べさせるようなものだ)
  • Full of courtesy, full of craft.
    (礼儀たっぷり、企みたっぷり)
  • Where there is over mickle courtesy, there is little kindness.
    (過度に礼儀が正しい人は仁愛の情が少ない)

まとめ

以上、この記事では「巧言令色鮮し仁」について解説しました。

読み方巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)
意味言葉巧みで人から好かれようと愛想を振りまく人には、誠実な人間が少ないということ
由来『論語』の言葉から
類義語巧言は徳を乱る
対義語剛毅朴訥仁に近し
英語訳He who gives fair words feeds you with an empty spoon など

詐欺師など、人の目に映る部分を完璧にとりつくろう人には注意が必要です。「巧言令色鮮し仁」と呼ばれるようなことなく、自分に正直に、他者に優しく生きていけるとよいですね。

ABOUT US

和佐 崇史
文章を書くこと、読むことが大好きな大学生です。中学2年生で漢検2級を取得するなど、言葉については詳しい自信があります。Webライターとしてはこれまで累計1,000記事以上を執筆してきました。