「話し合うこと」を表す言葉として、「ディベート」と「ディスカッション」があります。あなたはそれぞれの意味をきちんと理解していますか?
実は「ディベート」と「ディスカッション」は、似ているように思えて、目的も内容も全く違います。よく違いが分かっていない人は、しっかりと確認しておきましょう。
今回は、分かりにくい「ディベート」と「ディスカッション」の違いを、わかりやすく解説します。
結論:「ディベート」は討論、「ディスカッション」は議論
「ディベート」は、テーマに対し、賛成・反対の2チームに分かれた上で、それぞれの立場に立って意見を言い合う思考ゲームです。
一方、「ディスカッション」は、グループ内で自由に意見を出し合い、共通の結論を目指す話し合いです。
「ディベート」をもっと詳しく
「ディベート」とは、何らかのテーマに対し、賛成・反対の2チームに分かれた上で、それぞれの立場に立って意見を言い合うことです。最終的に、審判あるいは観客は、良い主張をしたチームを選びます。つまり、明確な勝ち負けがあります。
「討論」とほぼ同義です。英語では “debate” と書きます。
「ディベート」の特徴は、個人の行動が制限されていることです。
まず、最初に賛成派・反対派の2チームに分かれますが、このチーム分けは個人の意見とは関係ないことが多いです。例えば、個人的には賛成だと思っていても、ディベートでは反対派として、反対という結論を裏付けるような主張をします。
さらに「ディベート」の最中に、相手チームの意見を聞いて、考えを変えることはできません。つまり、自分が相手の意見に100%納得していたとしても、自分はそれに対する反論を主張することになります。
また、「ディベート」ではいつでも発言できるわけではありません。賛成派の主張の時間・反対派の主張の時間があらかじめ決められています。
つまり、「ディベート」は、ルールに沿って相手を言い負かす知的なゲームであるといえます。
「ディベート」では、自分が属するチームの結論(賛成か反対か)は最初から決まっています。そのため、その結論に対して、説得力がある主張や客観性のあるデータを考えます。このような結論ありきの思考プロセスのことを、トップダウン手法といいます。
「ディベート」の使い方の例
- 昨日、授業でやったディベートで勝利した。
- ディベートでは、相手の意見のダメの部分をいかに探すかがポイントです。
「ディスカッション」をもっと詳しく
「ディスカッション」とは、グループのメンバーが自由に意見を出し合い、共通の結論を目指すことです。他のチームとの勝ち負けが明確に決まることはありません。最終的に出た結論こそが「ディスカッション」の結果となります。
日本語では「議論」に近いです。英語では、 “discussion” と書きます。
「ディスカッション」の特徴は、自由であることです。「ディベート」のように、賛成・反対といった立場が明確に割り振られることはありません。あくまで自分が正しいと思う立場に立ち、自分が思った通りの主張をすることができます。
なお、中立や一部賛成といった微妙な見解に立つこともできます。
発言のタイミングも特に決められておらず、思いついたときに手を上げ、主張することができます。
「ディスカッション」では、答えが明確にないような問いがテーマになることが多いです。「少子高齢化を解決するにはどうすればいいのか」「この会社の経営戦略の問題点は何なのか」といった漠然とした問いに対し、議論を重ねていきます。
このように、論理を積み重ね、結論に辿り着く手法のことを、ボトムアップ手法といいます。多様で複雑な問題が絡みあう現実の課題・問題に対するアプローチとして有効です。
最近の新卒の就職活動では、選考の一環として、「グループディスカッション」が行われることがあります。ここでは、学生の議論に対する姿勢やコミュニケーション能力、発想力や論理的思考などが審査されます。
多くの学生を一斉にふるいにかけることができるため、定番の選考として定着しています。
「ディスカッション」の使い方の例
- グループディスカッションで、チームのまとめ役を引き受ける。
- ディスカッションをした結果、現状の日本社会の問題点が明らかになった。
まとめ
以上、この記事では、「ディベート」と「ディスカッション」の違いについて解説しました。
- ディベート:テーマに対し、賛成・反対の2チームに分かれた上で、それぞれの立場に立って意見を言い合うゲーム
- ディスカッション:自由に意見を出し合い、共通の結論を目指す話し合い
「ディベート」は、新しい発想を生み出すことはありませんが、論理的思考や切り返す力を鍛えることができます。また、明確な勝ち負けが出るので、モチベーションも上がりやすいです。
一方、「ディスカッション」は、与えらえた問いに対し、自分には思いつかなかった発想に触れることができます。
どちらも、機会があれば是非やってみてください。