太りそう、体に悪そうというイメージもある「脂肪」と「脂質」ですが、この二つにはどのような違いがあるのでしょうか。この記事で詳しく解説していきます。
結論:栄養素か生体の構成要成分か
「脂質」は、生体を構成する成分の一つです。
「脂肪」をもっと詳しく
「脂肪」は、動物や植物に含まれる栄養素の一つです。
一般的には中性脂肪や体脂肪、皮下脂肪、内臓脂肪を指します。
中性脂肪
中性脂肪は、脂肪細胞の中に蓄えられているエネルギーです。物質には、酸性やアルカリ性といった性質があります。中性脂肪は酸性でもアルカリ性でもなく、その中間の性質を持つ中性であるため、中性脂肪といいます。
体脂肪
体脂肪は体内にある脂肪のすべてを指す言葉です。皮下脂肪と内臓脂肪に分かれます。
皮下脂肪
皮下脂肪は皮膚のすぐ下にある脂肪です。指でつまむことができます。
見た目に現れやすい、つきにくく落ちにくい、男性より女性の方が増えやすいといった特徴があります。
内臓脂肪
内臓脂肪は、一般的に、腸の周りにある薄い膜(腸間膜)の周りにあります。食べすぎなどで使いきれなかった中性脂肪が内臓脂肪として蓄えられていきます。
メタボリックシンドロームの原因は、この内臓脂肪がつきすぎてしまうことです。
見た目には現れにくく、エネルギーとして使われやすいです。また、女性より男性の方が増えやすく、生活習慣病の原因になります。
「脂質」をもっと詳しく
「脂質」とは生体の構成成分の一つです。この中に中性脂肪やコレステロールが含まれています。脂肪は脂質を構成するものの一つです。
脂肪酸というものなどからできており、体内で作り出すことができない必須脂肪酸が含まれています。
脂質は 1 g 当たり 9 kcal のエネルギーを持っており体内に非常に多く貯蔵されています。三大栄養素の中で一番カロリーが高く、効率が良いエネルギーです。
しかし、エネルギーの生産スピードが糖質よりも遅いため、全力疾走、短距離走などの激しい活動になるとエネルギーとしての利用度は極端に下がります。長時間の運動で主に脂質が使われます。
「脂質」の役割
食事によって取り入れた脂質は主に小腸で消化・吸収されてエネルギー源として使われます。また、エネルギー源だけではなく、体温を保持することや身体を形つくる細胞の壁の材料、ホルモンの材料にも使われ、大切な働きを担っています。
さらに、脂質は油溶性ビタミンという、水に溶けにくく油に溶けやすいビタミンの吸収にも役立っています。油溶性ビタミンは、ビタミンA・D・E・K などです。
「脂質」の種類
脂質には、食用油に多く含まれるトリアシルグリセロールというものや、コレステロールなど様々な種類があります。
脂質は脂肪酸というものからできていますが、その脂肪酸の種類によって、脂質の性質が大きく変わります。脂肪酸は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれ、不飽和脂肪酸の中に一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸というものがあります。
脂肪酸の種類
「飽和脂肪酸」は、動物性食品に多く含まれます。飽和脂肪酸からできている脂質は、主に常温で固体の脂質です。とりすぎると、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を増やし、心疾患のリスクが高まります。
肉類の脂肪、バター、ラード、生クリーム、ケーキ、チョコレート、などに多く含まれます。
「不飽和脂肪酸」は、植物油や魚油、大豆油などに多く含まれます。不飽和脂肪酸からできている脂質は、主に常温で液体です。一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸があります。
「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」は、血液中の余分な中性脂肪やコレステロールを減らし、血液をサラサラにします。特に青魚の油に多い多価不飽和脂肪酸は心疾患のリスクを下げるとされています。オリーブオイル、さんま、いわし、さば、大豆油、ごま油などに多く含まれています。
「トランス脂肪酸」は、植物油に水素を加え工業的に製造された脂質です。悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らします。また、動脈硬化による心疾患のリスクを高めます。マーガリン、ショートニング、パン、ケーキ、カップ麺、スナック菓子などに含まれます。
まとめ
以上、この記事では、「脂肪」と「脂質」の違いについて解説しました。
- 脂肪:動物や植物に含まれる栄養素の一つで、中性脂肪などを指す
- 脂質:生体を構成する成分の一つ
ここまで説明してきたように、脂質と脂肪には違いがあります。しかしほぼ同一のものを指すこともあるので注意してください。