「振袖」と「留袖」と「訪問着」の違いとは?わかりやすく解説

違いのギモン

歳を重ねるにつれて、結婚式や、パーティーなど、改まった席に招待されることも多くなると思います。和装で一段としとやかに、周りの人と変化をつけてはどうでしょうか。

和装と一口にいえど、着物の形や格式、紋の有無など、何を選べばいいのかとても難しいですよね。

そこで、今回は「振袖」「留袖」「訪問着」の違いを詳しく解説します。

☆「振袖」「留袖」「訪問着」の違いをざっくり言うと……

振袖黒留袖色留袖訪問着
未婚×
既婚×
正礼装大振袖五つ紋五つ紋×
準礼装中振袖×三つ紋・一つ紋一つ紋
略礼装小振袖××紋なし

結論:違いは「未婚or既婚」「袖の長さ」「柄の位置」

  • 振袖未婚女性の着物で、袖(そで)が長く、全身に柄があります。
  • 留袖袖が短く裾(すそ)に柄があります。黒留袖は既婚者用、色留袖は誰でも着られます。
  • 訪問着袖が短く、全身に柄があり、未婚・既婚は問われません。

「振袖」を詳しく解説


振袖は、未婚女性の正礼装です。既婚女性は着ることができません。礼装とは、冠婚葬祭などの儀式に出席するための正式な服装のことです。

つまり、正礼装とは、他の着物と比べて一番格式が高く、最も改まった席にふさわしいということです。

振袖の名前は、文字通り振ることができるほど長い袖を持つことが由来です。この袖の長さが、留袖や訪問着との違いです。振袖には大振袖中振袖小振袖の3つの種類があります。袖が長ければ長いほど、格式が高くなります。

大振袖、中振袖、小振袖を着る場面は以下の通りです。

  • 大振袖:成人式や結婚式、披露宴などに主催者側として参加する場合
  • 中振袖:結婚式に招待客として出席する際や成人式
  • 小振袖:卒業式の袴に合わせたり、パーティーやコンサートに行くとき

本振袖は特に格式の高い場面で着用できる正礼装の着物で、従来は五つ紋(いつつもん)を付けていました。

紋とは、背中の襟(えり)の下につける小さな円模様や柄を指します。紋をいれて着物を仕立てることで、かしこまった場面によりふさわしい着物になります。

たいてい、紋は自分の家紋を入れます。五つ紋(紋を5ついれること)で正装となり、三つ紋(紋を3ついれること)で準礼装や略礼装になります。紋がなければ、カジュアルに着ることができます。このように、着物の紋の数によって、どんな場面で着ることができるのかということが変わるのです。

 

しかし、近年は花嫁衣裳など、貸衣装として着られるので、紋についてはあまり重視されてません。

「留袖」を詳しく解説


留袖とは、江戸時代には結婚すると振袖の振りを短く切って縫い留める習慣があったことから、このように名づけられました。留袖には、鶴や扇などのおめでたい柄があしらわれていることが特徴です。振袖と訪問着には全身に柄が入っている一方で、留袖は裾のみに柄があります

留袖には二種類あります。「黒留袖」と「色留袖」です。

黒留袖は、地の色が黒で、既婚女性のみが着るものです。主に、結婚式や披露宴に出席する新郎新婦の母親や親族が着ます。よって、これは他の着物に比べると着る機会が少ないです。

 

色留袖は黒以外の全ての色の物を指し、未婚既婚問わず着ることができます。昔は、色留袖も黒留袖のように既婚女性のみの正装でしたが、現在では未婚既婚問わず着用できます

これは様々なお祝いの時に着られるので、色留袖は正礼装から準礼装まで、着用範囲が広いです。

色留袖の格式は紋の数によって変わります。五つ紋付きの色留袖は黒留袖と同じ格式の正礼装で、三つ紋、一つ紋は準礼装となります。紋が多いほど格が高くなりますが、最近はあえて三つ紋や一つ紋にしてカジュアルに着用することも増えています。

 

ここで、準礼装と略礼装について説明します。

  • 準礼装:正装に準ずる礼装、つまり正装の次に改まった服装ということです。結婚式に招待客として出席する際などには、準礼装が適切と言われています。
  • 略礼装:礼装を略したもの、つまり準礼装よりも一段とカジュアルな服装のことを指します。結婚式に参加する際でも、気軽な式であれば、略礼装でも大丈夫です。

「訪問着」を詳しく解説


訪問着は、色留袖のように未婚既婚問わず着ることができる着物です。留袖の次に格式の高い準礼装で、紋を付けると色留袖と同じ格式の装いになります。逆に、紋なしだと略礼装となります。

訪問着の特徴は、すべての柄がつながるように染められていることです。この染め方を「絵羽付け(えばづけ)」といいます。留袖は裾にしか模様がないので、全身に模様があれば訪問着であると言えます。

また、留袖と同様に、袖は短いです。

これは、洋装の“visiting dress(ビジティングドレス)”つまり、昼間の礼装や社交着と同じように着られることから、訪問着と呼ばれています。

 

訪問着は、紋を付けると色留袖と同格の装いになりますが、カジュアルなシーンでも対応できるよう、紋をあえて入れずに略礼装にすることもあります。

そして、披露宴の出席からお茶会まで、様々な場面で柔軟に着ることができます。

まとめ

以上、この記事では、「振袖」「留袖」「訪問着」の違いについて解説しました。

振袖黒留袖色留袖訪問着
未婚×
既婚×
正礼装大振袖五つ紋五つ紋×
準礼装中振袖×三つ紋・一つ紋一つ紋
略礼装小振袖××紋なし

結婚式の参加でも、自分の立場が主催者側なのか、招待客なのかということによって、着る着物は違います。また、かしこまった式なのか、気楽な式なのかという点でも、着る着物が異なるのです。

着物を着る機会があるときは、ぜひ呉服屋さんや着付け屋さん、または着物に詳しい人にに相談しましょう。