本を読んだり、文章を書いたりする際に、必ず出会うのが「筆者(ひっしゃ)」と「著者(ちょしゃ)」という言葉でしょう。
この2つには、どのような相違点があるのでしょうか。両者を正確に区別を説明するのはなかなか難しいものです。
そこで、この記事では、「筆者」と「著者」の違いについて解説します。
☆「筆者」「著者」の違いをざっくり言うと……
筆者 | 著者 | |
---|---|---|
書籍化の有無での区別 | 書籍化されていない | 書籍化されている |
文章の特徴での区別 | 主張が前面に出る | 主張が前面に出ない |
文中での使い方での区別 | 一人称としての使用可 | 一人称としての使用不可 |
結論:区別の方法は3通り
- “書籍化の有無” で区別する方法
- “文章の特徴” で区別する方法
- “文中での使い方” で区別する方法
【1】書籍化の有無で区別する方法
「筆者」と「著者」の違いを決める1通り目の方法は、本として出版されているかどうかという点に基づいて分類するというものです。
「筆者」とは、書籍化される予定がない、またはこれから書籍として販売される状態の文章を書く人のことです。一方、「著者」とは、すでに刊行された本の内容を書いた人のことです。
つまり、文章を書く人を指すという点は共通していても、文章が書籍化されていなければ「筆者」、書籍化されていれば「著者」なのです。
【2】文章の特徴で区別する方法
「筆者」と「著者」の相違点を決める2通り目の方法は、書き手の意見が表されているかという点で分類するというものです。
「筆者」が書く文章の例として、社説やコラムが挙げられます。これらは、書き手の独自の観点や主張が表現されていますね。
一方、「著者」の書く文章では、書き手の主張はあまり強く表されていません。
「著者」が執筆する文章には、案内書、ノンフィクション、レポート、論文などがあります。これらはどれも、書き手の意見ではなく事実そのものに重点が置かれていますね。
このように、文章の特徴に基づいて考えると、書き手の主張が前面に出ている文章を書く人は「筆者」、主張を前面に出さない文章を書く人は「著者」と分類されるのです。
【3】文中での使い方で区別する方法
両者の違いを区別する3通り目の方法は、文中でどのように使うかという観点で分類するというものです。
「筆者」は、 “筆者は…” と、文章のなかで一人称として使うことができます。一方、「著者」は文中で一人称をして用いることはできません。
つまり、文中で一人称になりうるのが「筆者」で、一人称になりえないのが「著者」なのです。
補足:「作者」について解説
ここまで、「筆者」と「著者」の相違点について解説しました。
「作者」も、文章を書く人を表す言葉です。そこで、「作者」の定義について疑問に思う方がいらっしゃるでしょう。
「筆者」と「著者」を区別する3通りの方法に従って、「作者」の意味を解説します。
まず、書籍化の有無で区別する方法で考えると、「作者」は、本として出版された文章を書いた人を指します。次に、文章の特徴で区別する方法で考えると、「作者」の書く文章は、小説、物語、脚本など独創性があるものです。
なお、「作者」は文中で一人称として使われることはありません。
つまり「作者」は、書籍化の有無と文中での使い方という2つの基準で区別すると「著者」と同じ特徴をもちますが、文章の種類で区別する方法では、「筆者」と「著者」のどちらとも異なる特徴をもつといえます。
まとめ
以上、この記事では、「筆者」と「著者」の違いについて解説しました。あらためて、両者を区別する3通りの方法を表でおさらいしましょう。
筆者 | 著者 | |
---|---|---|
書籍化の有無での区別 | 書籍化されていない | 書籍化されている |
文章の特徴での区別 | 主張が前面に出る | 主張が前面に出ない |
文中での使い方での区別 | 一人称としての使用可 | 一人称としての使用不可 |
学校の課題や仕事で文章を書く際、その文章が出版されてない限り「著者」と呼ばれることはありません。「筆者」と名乗るのが正解ですから、注意しましょう。
また、文章の特徴によって両者を区別することができるという点も、知らなかった方が多いのではないでしょうか。身近にある本を見て、内容から書き手が「筆者」と「著者」のどちらに分類されるのか、考えてみるのもおもしろいですね。
文章の読み書きが私たちにとって日常的な行為だからこそ、「筆者」と「著者」の違いを理解して、正しく使いこなすことが大切なのです。