「HIV」と「エイズ」の違いとは?感染経路から症状まで解説

違いのギモン

あなたは「HIV」や「エイズ」を知っていますか。多くの人は、学校の保険の授業やニュース等で聞いたことくらいはあると思います。

「HIV」と「エイズ」は、どちらも深刻で治らない感染症というイメージが強くあり、世間での認知度も高いです。しかし、両者は同列に語られることが多く、改めて違いを問われるとよくわからない人も多いのではないでしょうか。

今回は、「HIV」と「エイズ」の違いについて解説していきます。両者の予防のためには、正しい知識とそれに基づく行動が必要となります。良く知らない人は、この記事を通して知識を深めましょう。

結論:「HIV」はウイルス、「エイズ」は病気。

「HIV」と「エイズ」は、原因と結果の関係であるといえます。

「HIV」は、人の免疫機能を低下させるウイルスのことです。

一方「エイズ」は、「HIV」感染者の免疫力が低下し、合併症を引き起こした状態のことです。

「HIV」をもっと詳しく


「HIV」は、 “human immunodeficiency virus” の頭文字をとった言葉であり、正式名称を「ヒト免疫不全ウイルス」といいます。

その名の通り、人の免疫機能、特に「CD4」というリンパ球を破壊するウイルスです。「HIV」が感染が進行し、免疫機能が著しく落ちると、「エイズ」となります。「HIV」の感染により、すぐに「エイズ」となるわけではありません。

 

「HIV」は直径約 110nm のウイルスです。1983年に発見されました。現在の医療技術では、体内から「HIV」を完全に排除することはできません。つまり、完治することはありません。

しかし、「HIV」の増殖を抑える薬を飲み続けることで、健常者と同様の生活を送ることができます。重要なのは飲み続けるということです。仮に一度飲むのをやめてしまうと、「HIV」に薬の耐性ができてしまい、薬が効かなくなる可能性があります。

 

「HIV」は、血液や精液、膣分泌液に多く含まれています。そのため、感染経路は限られており、日常生活の中で感染することは基本的にありません。具体的には、次のような感染方法があります。

  1. 性的接触
  2. 母子感染
  3. 血液によるもの

血液による感染は、具体的には輸血や臓器移植、静脈注射などがあります。3つの感染方法の中で、8割以上が性的接触によるものであるといわれています。

そのため、不特定多数の人とむやみに性行為をしないことや、する場合は安全な性行為をすることで、感染リスクを大幅に下げることができます。

 

安全な性行為としては、具体的にはコンドームの使用があります。コンドームにより、「HIV」が多く含まれる血液や精液、膣分泌液に直接触れないようにすることができます。

唾液や涙などにもウイルスは含まれていますが、非常に微量です。また、HIV自体の感染力も基本的には弱く、また空気中ではすぐに死んでしまいます。そのため、例え「HIV」感染者と同じ箸を使ったり、同じプールに入ったりしたとしてもリスクはないといえます。

「HIV」感染段階について

「HIV」は症状により、進行の程度を感染初期、無症候期、エイズ発症期の3つに大別することができます。症状が進行するにつれ、免疫機能は弱まっていきます。

感染初期は、「HIV」感染後2、3週間後に発生する体調不良の時期を指します。発熱、筋肉痛、リンパ節の腫れ、頭痛などの症状が起こります。期間は個人差がありますが、一週間程度すると自然に回復します。この時期に「HIV」であることが分かれば、治療が非常に有利になります。

しかし、この時期には感染していても陰性になることがあるため、感染しているかどうかわからない場合があります。血液検査でHIVに対する抗体が検出できるのは、約4週間後からとなります。

 

無症候期は、感染初期の後に数年から10年続く、症状が何もない時期を指します。「HIV」に感染していることに気づくヒントがないため、何もせずにエイズ発症期に入ってしまうことも多いです。

エイズ発症期は、「CD4」リンパ球の数が急激に減り、日和見感染(※)が発生しやすくなった状態です。食欲低下や下痢、衰弱などの症状も発生します。

  • 日和見感染(※):体の抵抗力が弱ったことにより、毒性の弱い菌に感染すること

「エイズ」をもっと詳しく


「エイズ」とは、英語では “AIDS” と書きます。 “acquiblack immunodeficiency syndrome” の略称です。 “acquiblack” は後天性、 “immuno” は免疫、 “deficiency” は不全、 “syndrome” は症候群を意味します。これらを合わせ、日本語の正式名称は「後天性免疫不全症候群」といいます。

「エイズ」は、「HIV」感染により免疫力が著しく低下し、特定の合併症を引き起こした状態を指します。合併症は23種類あり、「エイズ」発症の指標となるために指標疾患と呼ばれます。「HIV」に感染後、数年から10年後に発症します。

 

「エイズ」とそれに伴う合併症により死に至る可能性もあります。世界では、1年あたり180万人の新規感染者と100万人の死亡者が出ています。

「エイズ」発症前に「HIV」を抑制する薬を飲む事ができれば、「エイズ」発症を予防したり、遅らせたりすることができます。そのためには、「HIV」の早期発見が重要となります。

 

しかし、「HIV」の無症候期は、自覚症状がないため、3割程度の人は「エイズ」を発症してから「HIV」の感染を知ると言われています。

また、現在ではエイズの研究・薬の開発が進み、「エイズ」発症後でも、免疫力を再び高めることができるようになりました。

 

現在では「エイズ」に関する知識が広まってきています。

12月1日は「世界エイズデー」(World AIDS Day)として定められています。これは、エイズの防止と患者への差別をなくすことを目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定したものです。

この日に合わせ、世界中で「HIV」や「エイズ」についての啓発活動が行われます。

「レッドリボン」とは

「エイズ」への理解と支援の象徴として、「レッドリボン」(赤いリボン)があります。

1980年代の終わりごろ、アメリカで「エイズ」が流行したことをきっかけに「エイズ」に対する知識・理解を広げようとする運動が始まりました。その時、「エイズ」により命を失った人や、現在苦しんでいる人への理解と支援を表す運動の象徴として「レッドリボン」が使用されました。

「レッドリボン」は、元はヨーロッパにおいて病気や事故で死んでしまった人々への追悼の気持ちを表すものでしたが、これにより「エイズ」への理解・支援という意味合いが強くなりました。

アメリカから始まったこの運動は、その後世界に広がりました。現在では、「レッドリボン」は「HIV」感染抑止のための国際連合機関である、UNAIDS(国連合同エイズ計画)のシンボルとなっています。

まとめ

以上、この記事では、「HIV」と「エイズ」の違いについて解説しました。

  • HIV:人の免疫機能を低下させるウイルス
  • エイズ:「HIV」により免疫力が低下し、特定の合併症を引き起こした状態

「HIV」と「エイズ」は、同じものとして扱われることが多いです。しかし、以上のようにそれぞれが指し示していることはまったく異なります。

「HIV」は、正しい知識をもって生活していれば、感染のリスクはほとんどありません。また、「HIV」の感染を防止するが、「エイズ」の一番の予防になります。

改めて「HIV」「エイズ」についての知識を確認しておきましょう。