「閏年」「閏月」「閏日」「閏秒」の違いとは?意味まで解説

違いのギモン

4年に1度訪れるものといえば、オリンピックと「閏(うるう)年」ですよね。閏年には「閏日」があり、1年が1日長くなります。では、「閏月」はあるのでしょうか。年、日、とあれば、月があっても不思議ではありませんよね。

また、「閏秒」が行われたというニュースも聞いたことがあるでしょう。

「閏年」「閏月」「閏日」「閏秒」の違いは何でしょうか。

結論:閏年には閏日があって、閏秒は不定期にある

「閏年」は決められた周期で行われます。閏年には「閏日」があります

「閏月」は、現在日本で使われている暦(こよみ)では、ありません

「閏秒」には決められた周期がありません

「閏年」「閏日」をもっと詳しく

「閏年」は、400年に97回行われます閏年には、「閏日」があります。2月28日の次に来るのは3月1日ではなく、2月29日となります。

閏年は、厳密には「4年に1回」ではないのです。

 

現在使われている暦は、「グレゴリオ暦」と言います。世界のほとんどの国で採用されている暦です。

この暦では、閏年が「400年に97回」と決められているのです。中途半端な数の閏年は、いつ行われるのでしょうか。

  • 4の倍数の年は閏年
  • ただし、100の倍数の年は閏年ではない
  • ただし、400の倍数の年は閏年にする

少しややこしいですね。例を挙げてみましょう。

東京オリンピックが行われる2020年は、4の倍数なので閏年です。しかし、2100年は100の倍数なので閏年ではありません。2200年、1900年なども閏年ではありません。一方、2000年や1600年は、100の倍数ではありますが、400の倍数なので閏年です。

 

では、なぜこのようなややこしい周期なのでしょうか。

かつて、閏年は規則正しく4年に1回行われていました。この暦を「ユリウス暦」と言います。ユリウス暦では、1年が365.25日となります。毎年1年は365日ある上で、4年に1度1日増える(1日÷4年=0.25日/年)からです。

 

しかし、これでは実際の1年とズレが生じてしまいます。

ここでの1年とは、地球が太陽を1まわりする「公転周期」にあわせた「太陽年」です。公転周期をキリのいいように分けて時間の単位を作ったつもりでも、365日が積もり積もれば誤差が生じます。現在の時間の単位では、1年はおよそ365.2422日となります。

 

ユリウス暦は、太陽の動きに合わせた「太陽暦」です。太陽にあわせて暦を作っても、誤差は見過ごせません。

1年が365.25日だと、暦が、毎年およそ0.078日進んでしまいます。小さな誤差に見えますが、年が経つと誤差が増えて深刻なことになります。

 

2ヶ月暦がズレると、季節感が合わなくなりますよね。たとえば、東京では、1月末に桜が咲くようになってしまいます。この2ヶ月(60日)のズレが、およそ770年で来てしまうのです。

ユリウス暦の導入から数百年が経って、中世ヨーロッパでは、季節のズレが深刻な問題になっていました。そこで、より誤差の少ない暦が導入されました。それが、現在使われている「グレゴリオ暦」なのです。

 

グレゴリオ暦では、1年の平均の長さが365.2425日となります。ユリウス暦と比べて、400年で3日分、つまり1年で0.0075日分進みが遅くなるのです。

これでもまだ、およそ0.0003日の誤差が1年で生じます。しかし、この程度であれば2ヶ月のズレになるまでに2000年もかかります。誤差はとても小さく、今後数千年は問題なく使い続けられるのです。

 

ところで、なぜ閏日は2月末にあるのでしょうか。「2月が一番短いからだ」と思うでしょう。では、なぜ2月は他の月よりも短いのでしょうか。

答えは、古代ローマの暦にあります。古代ローマでは、2月が1年の終わりでした。当時の2月は現在の4月に当たります。農業をしない冬の期間を短めにして、閏日を入れていました。閏日は2月24日の後ろに入れられていたので、現在でも一部の国では2月24日の後ろに閏日を置いています

「閏月」をもっと詳しく

「閏月」は、暦と実際の誤差を埋めるために、長めに閏日が入る期間です。「太陰暦」を使っていると閏月が必要になります。太陰暦とは、月の満ち欠けをもとにした暦です。

月の満ち欠けの周期はおよそ29.5日です。これを1ヶ月とすると、太陰暦の1年は354日となります。これでは、実際の季節の一めぐり(太陽年)とは1年で11日もずれてしまいます。そこで、太陰暦を使っていた国では、閏月が必要になりました。

古代ローマの暦も、実は太陰暦でした。2月24日の後ろに入れられていた「閏日」は、22日から23日もあり、2年に1度閏年が来ていたのです。また、日本も江戸時代までの暦は太陰暦でした。日本では、3年に1度、33日の閏月がありました。

 

明治時代に、日本は太陰暦から太陽暦に切り替えます。これを、改暦(かいれき)といいます。改暦の直前には、ズレが積もり積もっておよそ1ヶ月分になっていました。そこで、明治政府は、1872年の12月を2日で切り上げてしまい、旧暦12月3日を新暦1月1日としました。

かなり強引なようですが、太陽暦を導入していた欧米諸国に追いつくために慌てて暦を変えたのでしょう。このおよそ1ヶ月のズレは、今でも様々なところに残されています。たとえば、七夕まつりは、旧暦で7月7日に行っていたので、現在は8月7日に行う地域があります。

「閏秒」をもっと詳しく

「閏秒」は、1日の長さのブレに対応して1秒付け足される秒です。

1日は、もともと地球が1回自転する長さとして決められました。現在では、より精密な定義がされています。しかし、地球の自転の速さはブレがあります。

1度「1秒とはこれだけの長さである」と決めても、実際の1日の長さと、1秒を積み重ねて1日分にしたときの長さとの間にはズレがあるのです。

 

そこで必要になるのが閏秒です。これは、かなり精密に時間を測れるようになった現代になって始まったものです。

閏秒では、59秒の後ろに60秒を入れます。イギリスで23時59分60秒の閏秒が行われると、9時間の時差がある日本では8時59分60秒があることになります。

 

閏秒は1972年に始まり、2017年までの45年で37回行われました。閏秒が必要だと気づいたときに比べると、かなりズレが回復されていることになります。

 

閏秒が行われているのは、「地球の自転が遅くなっているから」ではありません。自転の速さは、ブレているのです。1日の長さにズレが生じてしまうために、閏秒が必要なのです。

ズレといっても、1日に1000分の数秒でしかありません。生活していてはわからないようなスケールの話なので、閏秒はいらないと考える人もいます。コンピュータに用意された時計では閏秒に対応しておらず、システム障害を起こす可能性もあるからです。

まとめ

以上、この記事では、「閏年」「閏月」「閏日」「閏秒」の違いについて解説しました。

  • 閏年:閏日がある年
  • 閏月:主に太陰暦で、実際の季節との差を埋めるために1ヶ月ほど入る閏日
  • 閏日:暦と実際の差を埋めるために入れられる日
  • 閏秒:暦と実際の差を埋めるために入れられる秒
暦は、地球の自転や公転といった自然現象をもとに作られています。そのため、どうしてもズレが生じてしまうものなのです。その差を埋めてなるべく正確な時間を測るべく、昔から人々が努力してきたのですね。