どちらも何かを間違えて認識してしまうことを意味する、「幻覚」と「錯覚」という言葉。
しかし、実はこの2つには意味に決定的な違いがあるのです。
そこで今回は、「幻覚」と「錯覚」の違いについて徹底解説していきます!
結論:「幻覚」は存在しないものを知覚すること、「錯覚」は誤認識すること
一方、「錯覚」とは、あるものを別のものに誤認識することです。
ふたつの違いは、認識する対象が実在するかしないかという点にあります。
「幻覚」をもっと詳しく
「幻覚」とは、実際には存在しないものを知覚することです。
聴覚や視覚、味覚、嗅覚、触覚などによって、実際には与えられていない外界からの感覚情報を誤って認識してしまうことで、医学用語として用いられています。
幻覚には、以下のようなものがあります。
- 幻聴:聴覚による幻覚/実在しない音や声が鮮明に知覚されること
- 幻視:視覚による幻覚/実在しない人物や動物などが知覚されること
- 幻嗅:嗅覚による幻覚/嗅覚以外の感覚器官から得た情報・記憶によってにおいを知覚すること
- 幻味:味覚による幻覚/何も口にしていないのに、味を知覚すること
- 幻触:触覚による幻覚/何にも触れてないにも関わらず、感触を知覚すること
これらの症状は、薬物使用や精神病、精神的ストレスによって起きると考えられがちです。
しかし、不眠や、外界からの刺激が少ない状況に長時間いた場合には、だれにでも起こりうるものなので、完全に他人事、という問題ではないのです。
また、幻覚の症状は、その原因や症状の程度によってさまざまで、亡くなった家族と会話をする人もいれば、不快なにおいや映像に苦しんでしまう人もいます。
「錯覚」をもっと詳しく
「錯覚」とは、あるものを別のものに誤認識してしまうことです。
幻覚が実際には無いものをあるように感じてしまうのに対して、「錯覚」は実在する対象を、知覚の何らかのミスによって違う形に認識してしまいます。
たとえば、姉妹を持つ母親が娘たちの声を聞き間違えてしまうことがあります。
これは、母親が声の主に対して注意を払っていないときに起こりがちな錯覚です。
とりわけ視覚的情報が乏しいときに起こる、いわゆる『聞き間違え』です。
また、知らない人を友人だと思い声をかけてしまうのも、相手の容姿を注意深く見ていないために起こる視覚的誤認、つまり『見間違い』です。
このような日常的によく起こる錯覚のことを、『不注意性錯覚』と言います。
実際には、次のような使われ方をします。
『彼女との時間があまりに幸せで、夢の中にいるような錯覚に陥る』
『外国の街を歩いていると、映画の人物になったような錯覚を覚える』
これらの文章は、実際には夢の中ではないこと、映画の人物ではないことを認識つつ、そのような状態にあると間違えて認識してしまうことを表しています。
なので、実際の現実ではないことを表す「幻覚」という言葉は、このような場合には不適切です。
×『彼女との時間があまりに幸せで、夢の中にいる幻覚に陥る』
〇 『外国の街を歩いていると、映画の人物になったような錯覚を覚える』
×『外国の街を歩いていると、映画の人物になった幻覚を覚える』
このほか、『感動錯覚』というものがあります。
感動錯覚とは、普段はありのまま認知できている対象が、恐怖心や期待感によって違うものに認識されてしまう、心因性の錯覚です。
たとえば、暗闇の中森を歩いていて木目が人の顔に見えてしまったり、小さな物音が人の足音に聞こえてしまったりします。
それ以外にも、雲やシミなど不定形の対象が違うものに見える『パレイドリア』という錯覚や、年齢などによって生じる『生理的錯覚』などがあります。
まとめ
以上、今回は「幻覚」と「錯覚」の違いについて解説しました。
- 幻覚:実際には存在しないものを知覚すること
- 錯覚:あるものを別のものに誤認識してしまうこと
「幻覚」と「錯覚」には、意味の違いだけではなく、その程度にも差があることがわかりましたね。
このように日本語には、微妙な違いだと思っていたけれど、実は全く異なる漢字がたくさんあります。
この機会に言葉の違いに目を向けてみるのも面白いのではないでしょうか。