「超える」と「越える」は「基準を上回るのか、時間や場所が過ぎるのか」という点が異なります。
「英語の成績が平均点をこえた」という文の「こえる」は「超える」と「越える」のどちらの単語を使うのか、悩んだことがある人は多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「超える」と「越える」の使い分けについて詳しく解説していきます。
このページの目次
「超える」と「越える」の違い
「超える」と「越える」には以下のような違いがあります。
- 超える
基準を上回ること - 越える
場所や時間を通りすぎること
「超える」と「越える」はどちらも「こえる」と読み、「ある一定の枠をこえる」という共通点もあります。
「超える」の意味
「超える」は「何かを上回ること」「程度がずば抜けていること」を表しています。
「超える」の「超」は、何かを上回ることを表す漢字です。
そのため、「超過」のように、「一定の枠・基準を上回る」という言葉に使用されます。
数字などの基準に対して、縦方向に移動するイメージで捉えると分かりやすいかもしれません。
また、「超人」「超絶」のように、ものごとの程度がずば抜けていることを表す場合にも使用されます。
「超える」の使い方
「超える」を使用した例文をいくつか紹介します。
- 標準体重を超える
- 帰宅時間を超える
- 平均寿命が80歳を超える
また、熟語としての使われる時には、以下のように接頭辞として、「超」+名詞のような使われ方をします。
- 超音波
- 超法規的措置
- 超回復
音として人間の耳では聞き取れないほどの音波だと言えます。
②の「超法規的措置」とは、「国家が法律に規定された範囲を超えて行う特別な行為のこと」です。
「法の枠を超える」という意味で「超」が使用されています。
③の「超回復」は、運動で消費された筋肉のグリコーゲン量が、適切な休息と炭水化物補給によって、運動前の貯蔵量を超えて大幅に回復する作用のことを言います。
「通常の回復量を超える」という意味で「超」が使用されています。
「越える」の意味
「越える」は「何かを通りすぎること」「他よりも飛びぬけること」を表しています。
「越境」「越権」のように、ある地点や境界を通過することを表しています。
場所や時間などの枠に対して、横方向へ移動するというイメージで捉えると分かりやすいかもしれません。
また「卓越」「優越」のように、他よりも抜きん出て優れていることという意味もあります。
このように、「越える」は、ある場所や立ち位置を追い抜いたり通り過ぎたりすることを表しています。
「越える」の使い方
「越える」を使用した例文をいくつか紹介します。
- 国境を越える
- 厳しい冬を越える
- 苦労を乗り越える
また、「越」を使用した熟語には以下のようなものがあります。
- 越境
- 越権行為
- 引っ越し
ある地点を越えるという意味で「越」が使用されています。
また、②の「越権行為」は「与えられた権限の範囲を越えて行うこと」という意味です。
権限という範囲を越えるという意味で「越」が使用されています。
「超える」と「越える」使い分けのポイント
「超える」と「越える」の使い分けに悩んだ場合には、以下のようなポイントから判断しましょう。
- 「超」「越」の意味から判断する
- 英語に変換して判断する
- それぞれの熟語から判断する
「超」「越」の意味から判断する
「超」「越」にはそれぞれ、「基準を上回る」「何かを通りすぎる」という意味がありました。
そのため、「超える」「越える」の使い分けには以下のようなポイントがあります。
- 超える
数字がともなう場合が多い - 越える
移動をともなう場合が多い
「平均点をこえる」のように、数字や数値で数えることが出来る時は「超える」、「山をこえる」のように場所や時間などの移動がある場合は「越える」を使用しましょう。
英語に変換して判断する
「超える」と「越える」の使い分けに悩んだ場合、一度英語に変換して考えることも有効です。
「超える」と「超える」はそれぞれ以下のように英訳されます。
- 超える
“super” “very” - 越える
“over” “pass”
「超人」を英訳した場合、“super man”となります。
また、「峠を越える」を英訳した場合は “pass the peak” となります。
このように、「こえる」の使い分けに悩んだ場合は、一度英語に変換してから判断するのがポイントです。
それぞれの熟語から判断する
「超える」や「越える」を使った熟語は数多くあります。
そのため、どちらを選択すればよいのか迷った場合は、一度似た意味の熟語を探してから考えるのがポイントです。
たとえば、「勤務時間をこえる」の場合、「勤務時間を超過する」と言い換えることで、「超える」を使用することが分かります。
このように、使い分けに悩んだ場合は、熟語から判断するのがポイントです。
「超える」と「越える」のどちらも使える場合
「こえる」を使用する場面では、「超える」「越える」のどちらの意味でもとれる場合があります。
意味が曖昧な場合や、両方の意味を込めたい場合は平仮名で「こえる」と表記するのが無難です。
どちらの意味でもとれる例文をいくつか確認してみましょう。
- 人の能力を超える/越える
- 度を超す/越す
- 国境を超える/越える
- 党派を超える/越える
人の能力を超える/越える
「超える」の場合、本来の基準を大きく超えて抜きん出ていることを表しています。
一方で、「越える」の場合は、人の能力を障壁ととらえて、それを乗り越えるという比喩表現として使用しています。
どちらも同じような意味ですが、一般的には「超える」が使用されています。
度を超す/越す
「超す」「越す」のどちらも「やりすぎる」という意味であり、大きな違いはありません。
「超す」は、限度を飛びこえた結果に注目しているニュアンスがあります。
一方で、「越す」は限度をこえる過程に注目しているというニュアンスが生まれます。
国境を超える/越える
「超える」の場合、国としての立場をこえるという意味で使用されています。
「国を超えて同盟を結ぶ」などのような場面で使用します。
一方で、「越える」の場合は以下のように大きく2つの意味になります。
- 物理的に一方の国から他方の国へと渡るという意味
- 国の境を障壁に例えてそれをのりこえとるという意味
前後の文脈からどちらの意味になるかを判断しましょう。
党派を超える/越える
「超える」の場合は、「超党派」のように「派閥に関係なく協力すること」という意味になります。
一方で、「越える」の場合は「越権」などのように、「派閥の権限以上のことに介入する」という意味になります。
しかし、どちらの場合も使い分けが曖昧であるため、使用する際には注意が必要です。
「超える」と「越える」の違いのまとめ
以上、この記事では、「超える」と「越える」の違いについて解説しました。
- 超える
基準を上回ること - 越える
場所や時間を通りすぎること
こうした、「超える」と「越える」は使い分けは非常に難しいため、この記事を参考に正しい使い方をしっかり確認しましょう。