防衛機制(ぼうえいきせい)とは「ストレスを軽減するために起こる心理メカニズム」です。
意識的に働かせることもできますが、無意識化で働くことも多く、自分でも気がつかないうちにストレスから逃れている場合もあります。
防衛機制の仕組みを知ることで、より効果的なストレス軽減ができたらいいですよね。
この記事では、防衛機制の意味や種類、働いている心理なども解説します。
☆「防衛機制」をざっくり言うと……
読み方 | 防衛機制(ぼうえいきせい) |
---|---|
意味 | ストレスを軽減するために起こる心理メカニズム |
提唱者 | ジークムント・フロイト |
「防衛機制」の意味
ストレスを軽減するために起こる心理メカニズム
例:失恋の悲しみを仕事に打ち込んでごまかす。
防衛機制とは、心がストレスを感じたときに、それを軽減するために起こるメカニズムのことです。
意識的に働かせることもありますが、無意識的に起こる場合もあります。以下のような例が挙げられます。
- 意識的
好きな人にふられた悲しみを仕事に打ち込んでごまかす - 無意識的
好きな人にふられた記憶を無意識のうちに閉じ込め、忘れる
- 嫌なことが起きるとその場で赤ちゃん返りしてしまう
- アイドルが自分を好きだと思い込みストーカー化する
「防衛機制」の種類と具体例
防衛機制には、以下のような種類があります。
適応度 | 名称 | 意味 | 例 |
---|---|---|---|
非常に低い(治療が必要な場合も) | 否認 | 現実を認識しない | ふられたことを認めず接する |
投影 | 自分の抑圧された願望を相手が持っていることにする | アイドルが自分のことを好きだと思い込む | |
解離 | 大きな苦痛から自分を守るために意識や思考などを切り離す | いじめられているときの記憶が全くない | |
転換(身体化) | 抑圧された感情や葛藤が身体症状として表現されること | 学校に行きたくなくて、家を出る時間になると腹痛がする | |
途絶(途断) | 感情を意識に上らせないように一時遮断する | 一過性の記憶障害 | |
低い | 退行 | 葛藤から逃れようと子ども返りする | 人とけんかしたときに地団駄を踏む |
逃避 | ストレスから逃れて違うことを考える/する | テスト間近に片付けを始めてしまう | |
反動形成 | 自分の抑圧された感情と反対の行動をとる | 嫌いな相手にこそ丁寧に接する | |
分裂 | ものごとを善悪で判断し、悪を無視したり断罪してしまう | 自分の持っている欠点を認めない | |
衝動の自己への向き変え | 相手に対する強い衝動を自分に対して向ける | 部下への怒りを自分の管理能力のなさへの怒りに変える | |
転倒 | 相手に対する感情が正反対の感情に置き変わること | 好きな人が振り向いてくれないことで激しい怒りを覚える | |
歪曲 | 事実を自分の考える通りにねじ曲げてしまう | 高い熱が出ていても無視して自分は病気ではないと考える | |
躁的防衛 | 苦痛から逃れるため、異様にハイになってしまう | 仕事ができないということが認められず、自分はなんでもできると思いこんで振る舞う | |
行動化 | 社会的に認められない行動に依存してしまう | アルコール依存症など | |
受動的攻撃行動 | マイナスな感情を消極的な態度や行動で表し、相手を攻撃する | 怒られた子どもがずっと黙ることで親を困らせようとする | |
病気不安症 | 自分の些細な身体症状を重病だと思い込む | ただの寝冷えによる熱をインフルエンザだと思い込む | |
理想化 | 状況や対象を全て良いものだとして信じ込む | 自分の組織のリーダーを盲目的に信奉する | |
統制 | 周囲を過度に管理しようとする | 恋人を過度に束縛する | |
置き換え | 怒りなどの負の感情を他の対象に向け変える | かつて元恋人にひどい目にあった人が同じことを今の恋人にする | |
中程度 | 合理化 | 不合理なことに何か理由をつけて納得する | ふられたのは相手の見る目がなかったのだと思う |
代償 | 抑圧された欲求を他の欲求に置き換える | テレビゲームが禁止されているので代わりにボードゲームをする | |
打ち消し | 過去の行動に関しての罪悪感や恥を、反対の行動で埋めようとする | 相手に反抗したあとにゴマをする | |
外在化 | 自分の問題を他人事のように捉え、客観的に見る | 締め切りに追われているのは、自分が悪いのではなく、サボった過去の自分が悪いと考える | |
知性化 | 知識を取り入れることで今の状況を納得しようとする | ダイエットができないのは、心理的なメカニズム上当たり前だと考える | |
高い | 取り入れ(同一視) | 相手の良いところを自分自身と重ねて自己評価を高める | 芸能人と同じ服を着る |
昇華 | 抑圧された欲求を社会的に望ましい欲求に置き換える | 暴力をふるいたい衝動を歌にぶつける | |
補償 | 失敗や劣等感を他のことで成果を出すことで埋める | ふられた悲しみを仕事に打ち込んで埋める |
フロイトにより最初に提唱されてからさまざまな人により整理されているため、防衛機制にはさまざまなものがあります。
注目すべきは、「社会への適応度合い」と「頻度」です。社会に適応するのが困難な防衛機制が頻繁に働いている場合は、治療も視野に入れることが多いです。
逆に、ある程度社会に適応している防衛機制が適切な頻度で発露している場合は、特に心配はいりません。
また、適応度の高い「同一視」「昇華」「補償」などの防衛機制を意識的に実行することで、ストレスを大きく軽減することができます。
「防衛機制」の提唱者
防衛機制の提唱者は、ジークムント・フロイトです。
その後、娘のアンナ・フロイトや、フロイトの弟子であり児童分析家のメラニー・クラインによって概念がより整理されました。
フロイトは、人間の心は以下の3つの要素により構成されると考えていました。
- イド(エス)
人間が根源的に抱いている本能的欲望 - スーパーエゴ
イドを止める理性 - エゴ(自我)
イドとスーパーエゴの間で適切な道を探る機能
フロイトが最初に唱えた防衛機制は「抑圧」でしたが、アンナ・フロイトはそこに「反動形成」「分裂」「投影」などを加えて発展させました。
さらに、フロイトの弟子であるメラニー・クラインは「原始的防衛機制」という概念を提唱しました。これは生後5か月くらいまでの乳幼児でも用いることができる、基礎的な防衛機制のことです。
「防衛機制」のまとめ
以上、この記事では防衛機制について解説しました。
読み方 | 防衛機制(ぼうえいきせい) |
---|---|
意味 | ストレスを軽減するために起こる心理メカニズム |
提唱者 | ジークムント・フロイト |
繰り返しとなりますが、重要なのは、働いている防衛機制の種類と頻度です。
社会生活において苦労するほどなんらかの防衛機制が働いてしまっている場合は、適切な治療で改善する場合も多いです。今苦しさを抱えている人は、本記事を参考に一度振り返ってみてはいかがでしょうか。