「出典」「引用」「参考」は「著作物を引いてくる行為を指すか、著作物そのものを指すか」という点と「どのように引いてくるか」という点が異なります。
他にも参照や転載など、他人の著作物を引いてくる行為に関する用語はたくさんありますよね。
ブログやレポートを書いていて、どの単語を使うのが最適なのか悩んだ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、出典と引用、参考の違いについて解説するほか、使い分けや引用時のルール、参照や転載など似ている単語との違いも解説します。
「出典」「引用」「参考」の違い
- 出典
引用、あるいは参考にした他人の著作物そのもののこと - 引用
他人の著作物をそのまま自分の文章に引いてくること - 参考
他人の著作物をもとにして自分が何かを考えること
- 著作物を引いてくる行為を指すか、著作物そのものを指すか
- どのように引いてくるか
まず、「出典」と「引用」「参考」の間に①の大きな違いがあります。具体的には、以下のように違います。
- 出典
引用、あるいは参考にした他人の著作物そのもののこと - 引用・参考
他人の著作物を自分の著作物に引いてくる行為のこと
具体的には、以下のように違います。
- 引用
他人の著作物をそのまま自分の文章に引いてくること - 参考
他人の著作物をもとにして自分が何かを考えること
引用関係の用語一覧
出典や引用、参考以外にも、他人の著作物を引いてくることに関する用語はたくさんあります。
よく使われるものを一覧にすると、以下のようになります。
- 出典
引用、あるいは参考にした他人の著作物そのもののこと - 引用
他人の著作物をそのまま自分の文章に引いてくること - 転載
自分の文章の大半を他人の著作物で構成すること - 参考
他人の著作物をもとにして自分が何かを考えること - 参照
図や文書など、目に見える情報を照らし合わせること - 剽窃(ひょうせつ)
他人の著作物を無断で使うこと - パクリ
剽窃をよりフランクに言いかえた言葉
「出典」の意味
出典とは、引用、あるいは参考にした他人の著作物そのもののことです。
出典の意味は、単語を構成する漢字に注目するとわかりやすいです。
- 出
あるところから外に動くこと、出ること - 典
大事な書物のこと
「出展」は出典の同音異義語です。こちらは「展示会や展覧会などに作品を出すこと」という意味です。
展示会にまつわる語は出「展」、書物にまつわる語は出「典」と覚えると覚えやすいです。
「出典」の使い方
「出典」は、以下のような文章で使われます。
- レポートを書くなら、出典を明記しなきゃだめだよ。
- 画像の出典元を探してるんだけど、見つからない。
出典がないと、誰かの発表した内容を無断で自分の手柄として発表してしまう剽窃(ひょうせつ)にあたるため、大学などでは特に出典について厳しく指導されます。
②では出典を「出典元」という複合語で使用しています。意味は出典とあまり変わらず、そのまま「出典」と言い換えることもできます。
このように、出典は書籍などに関する話題で使われることが多いです。
「出典」の英語訳
出典は英語で言うと、以下になります。
- the source
出典 - the authority
出典 - name the source
出典を示す - give the authority
出典を示す
端的に「出典」と言いたい場合は “source” を使うことが多いです。
「引用」の意味
引用とは、他人の著作物や文章を自分の文章などに引っ張ってきて用いることという意味です。
引用の意味は、単語を構成する漢字に注目するとわかりやすいです。
- 引
引っ張ること、引き寄せること - 用
役立てること
上記の漢字の意味からもわかる通り、引用は誰かの文章などを「引っ張って自分の文章に役立てる」という意味です。
基本的には一言一句変えずに引っ張ってくる場合のことを指します。
たとえば、Twitterには「引用リツイート」という機能があります。これは他の人のツイートをそのまま引っ張ってきてコメントすることができる機能です。
「引用」のルール
引用は他人の著作物をそのまま引っ張ってくる行為であるため、著作権を侵害しないよう、ルールが定められています。
著作権法では、以下のように定められています。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
[出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048]
この「正当な範囲内で行われる引用」がどのようなものであるかについては、一般的には以下の6つのルールがあると言われています。
- 引用する必然性がある
- あくまで自分の文章の一部として引用されている
- 未公開の著作物からは引用しない
- 引用部分を自分の書いた部分とはっきりと区別する
- 引用元を明記する
- 引用した箇所の改変は行わない
ルール①:引用する必然性がある
ルールの1つめは「引用する必然性がある」です。
自分の主張を裏付けたい、あるいは批評したいなど、自分の文章を構成する上である文章を引用しないといけない場合、引用する必然性があると認めます。
つまり、「自分のレポートと全く関係がないのに、夏目漱石の『こころ』を引用する」など、そういった引用は認められないということです。
ルール②:あくまで自分の文章の一部として引用されている
ルールの2つめは「あくまで自分の文章の一部として引用されている」です。
言い換えると、引用する文章が質の点においても量の点においてもメインになってしまってはいけません。
たとえば、「太宰治の短編小説を全て載せた後に、1行のみ感想を書く」などの形は、引用とは認められません。
ルール③:未公開の著作物からは引用しない
ルールの3つめは「未公開の著作物からは引用しない」です。
たとえば、まだ発表されていない作家の新作を入手し、そこから引用する、ということは認められません。
ルール④:引用部分を自分の書いた部分とはっきりと区別する
ルールの4つめは「引用部分を自分の書いた部分とはっきりと区別する」です。
レポートや論文などでは「」でくくることが一般的です。
ブログなどでは、例えば以下のようにします。
私は、その男の写真を三葉、見たことがある。
[出典:太宰治『人間失格』]
「blockquote」というタグを使うとこのような形で引用できることが多いです。
ルール⑤:引用元を明記する
ルールの5つめは「引用元を明記する」です。
他の人の著作物から引用を行った場合は、はっきりとわかるように引用元を明記する必要があります。
ブログでは、以下のように、すぐ下に引用をする方法があります。
一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。
[出典:芥川龍之介『羅生門』]
あるいは、論文などであれば、以下のような形で引用をします。
- 芥川は、1915年に「一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。」と述べた。[1]
- 「一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。」(芥川, 1915)[1]
なお、どちらも、下に参考文献のリストに、芥川龍之介の羅生門から引用したことを指定の形式で明記する必要があります。
そのときに[1]と番号をつけることにより、引用した部分と引用元を明確に対応させることができます。
画像を引用する場合も同様に、画像のすぐ近くに引用元となるリンクや書籍名を表記することで「引用」であることを示すことができます。
ただ、ウェブサイトやブログで使用する場合は、引用に関わる他のルールを満たすのが難しいため、フリー素材や購入した素材を使用する方が使いやすいでしょう。
もちろん、フリー素材や購入した素材であっても、利用規約は確認しましょう。
ルール⑥:引用した箇所の改変は行わない
ルールの6つめは「引用した箇所の改変は行わない」です。
引用は他人の著作物を参照して自分の意見を強めたりするものであるため、内容を改変したら引用する意味がなくなってしまいます。
それどころか、他人が言っていない内容が言ったことになってしまうため、非常に問題です。
もし中略したい場合は、以下のように「(中略)」という記号を入れて中略しましょう。
メロスは激怒した。(中略)メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。
[出典:太宰治『走れメロス』]
「引用」と「転載」の違い
引用と転載には、以下の違いがあります。
- 引用
他人の著作物をそのまま自分の文章に引いてくること - 転載
自分の文章の大半を他人の著作物で構成すること
転載の場合、以下の3点は少なくとも守る必要があります。
- 著作者が許可を出していること
- 自分の文章ではないことが明確であること
- 転載箇所が改変されていないこと
たとえば著作者を明記することを求める、あるいは金銭の支払いを求めるなど、条件は著作者によってさまざまですが、最低限上記の3つは守る必要があります。
無断転載は、著作者の許可を得ずに転載を行うことです。
無断転載を行った場合、著作権を侵害することになるため、損害賠償を請求される場合もあります。
現在はSNSなどで気軽に画像を保存し再投稿できるため、無断転載へのハードルが低くなっており、より注意が必要です。
「参考」の意味
参考とは「他人の著作物をもとにして自分が何かを考えること全般」のことです。
そのため、軽く斜め読みしただけの本や、教授の授業中のつぶやきなども、その後の思考に反映されていれば「参考」と呼ぶことができます。
参考には特にルールはありません。ただし、参考文献として他人の著作物を持ってくる場合は、引用のルールに従うのが一般的です。
また、参考として内容を引っ張ってくる場合は、以下のように自分で内容を要約して記載します。
「参考」「参照」の違い
「参考」と「参照」の違いは、以下の通りです。
- 参考
他人の著作物をもとにして自分が何かを考えること全般 - 参照
図や文書など、目に見える情報を照らし合わせること
参照は、後から振り返ることのできる情報を何かと照らし合わせる際に使われる言葉です。
そのため、人の頭の中にある考えや、口頭で聞いたこと(録音がないもの)については「参照」という言葉を使うことはできません。
補足:出典の正しい書き方
レポートや論文などで引用や参考を行なった場合、最後に出典を書く必要があります。
出典の正しい書き方はその分野や機関によるため、実際には自分が指定された方法や、投稿しようとしている雑誌などの慣習を確認した上で書きましょう。
以下は清泉女子大学が示している例です。
a) 図書
必要なデータ:
著者名{編者名,訳者名},書名,{版表示},出版社名,出版年,{巻数},該当ページ, {(シリーズ・叢書名)},{(ISBN)}b) Web ページ
必要なデータ:
著者名〔サイトの運営主体〕「Web ページのタイトル」(最終アクセス年月日)c) 紀要や雑誌の論文・記事
必要なデータ: 著者名「論文・記事のタイトル」『雑誌名』{巻数,}号数,発行年.月,該当ページ.d) 新聞記事 必要なデータ:
{著者名}「記事のタイトル」『新聞紙名』発行年月日,朝夕刊の別,版数,面数.[出典:http://campus.seisen-u.ac.jp/guideline/guide_2011/guide_18.pdf]
なお、上記は論文やレポートの場合で、ブログやTwitterなどで何かを引用する際は、リンクを示すのみのことも多いです。
補足:「剽窃(ひょうせつ)」の意味
剽窃とは「他人の著作物を無断で使うこと」です。
引用や参考、転載などを適切に行わない場合、剽窃行為と見なされてしまいます。
剽窃行為は著作権法違反にあたるため、判明した場合、賠償請求などの形で不利益を被る場合があります。
たとえば大学のレポートなどで剽窃を行なった場合、当該セメスターの全単位の剥奪などが一般的です。
なお、剽窃行為をよりフランクに言い換えたのが「パクリ」です。
まとめ
以上、この記事では、「出典」「引用」「参考」の違いについて解説しました。
- 出典
引用、あるいは参考にした他人の著作物そのもののこと - 引用
他人の著作物をそのまま自分の文章に引いてくること - 参考
他人の著作物をもとにして自分が何かを考えること
他人の著作物を適切に扱わないと、剽窃行為となってしまいます。気をつけましょう。