「辞職」と「退職」の違いとは?退任は?意味から使い分けまで解説

違いのギモン

会社を辞める、という意味を表す「辞職」と「退職」。どちらも似たような意味で混同しがちですが、それぞれ意味は異なります。

今回は、その違いについて解説していきます。

結論:自らの意思で辞めるのかどうか

「辞職」は、自分の意思で会社を辞めることを言います。

「退職」は自らの意思あるいは会社の都合で会社を辞めることを言います。

また、役職のある人が会社を辞める場合は、基本的に「辞職」という言葉を使います。

「辞職」をもっと詳しく


「辞職」とは、自らの意思で会社を辞めることを言います。法律上、退職届を会社側に提出する必要があります。退職届は、受理されると、退職することが決定します。

家庭の事情や転職、職場に対する不満など、どんな内容であれ自分の意思で会社を辞める場合は「辞職」という言葉を使います。後に解説する「退職」とは違い、人事整理やリストラなど会社の都合で仕事を辞めるときは「辞職」とは言いません。

 

また、辞職という言葉は、基本的に課長以上の役職のある人が会社を辞める場合に使います。

その際も自分の意思が含まれているかどうかがポイントで、会社の承諾は必要ありません。

 

しかし、会社が何か問題を起こした場合など、責任を取って社長などの役職の人が辞職を選ぶ場合があります。

このように、現実としては会社を辞めざるを得ないような場合であるものの、形としては自分から辞めることを申し出る際にも「辞職」という言葉を使います。

 

なお、何か問題を起こして辞職する場合は退職金を受け取ることが難しくなっています。

この場合は会社が就業規定や退職金規定に定めている「自己都合による退職」にあてはまる可能性が高いためです。これは、辞めることを余儀なくされる「会社都合による退職」と比べた場合、相対的に額は下がりやすいという理屈です。

一方、円満な辞職の場合は退職と同じ扱いになるため、退職金をしっかり受け取ることができます。

 

自分の意思で辞めるかどうかや、立場の違い、退職金の有無などに注意しましょう。

「辞職」と「辞任」

「辞職」と字面が似ている言葉に「辞任」がありますが、両者の意味は異なります。

「辞職」は自分の意思でその職場を離れることを意味しますが、「辞任」は自分の意思で就いている任務や職務を辞めること指し、職場から離れるわけではありません

たとえば、「総理大臣を辞任する」といった表現があります。この場合、総理大臣という役職を辞めることを意味するにとどまり、国会議員を辞めるわけではありません。

なお、辞任の場合は辞表を提出することが一般的です。職場ではなく、役職を辞める意思を示すものです。

「退職」をもっと詳しく


「退職」とは自分の都合・会社の都合・契約期間の満了等による理由で職を辞めることを言います。該当する理由を順に、自己都合退職」・「会社都合退職」・「当然退職」と呼びます。

「退職」は、自分の意思で職を辞める「辞職」を含む大きな概念です。

①自己都合退職

「自己都合退職」とは、自分の意思によって会社を辞めることを指します。自己都合退職には、①会社側との合意がなされずに行われる場合と、②会社側との合意によって行われる場合とがあります。①は辞職、②は合意退職と言われます。

辞職の場合は退職届を提出しますが、合意退職の場合は退職願を提出することが一般的です。退職願とは、退職するという意思があることを会社側に伝えるもので、後に合意形成を図ります。法律上、退職願は書面である必要はなく、口頭でも成立します。

②会社都合退職

「会社都合退職」とは、雇い主の都合によって退職することを言います。ここでの雇い主の都合とは、経営状況の悪化などを指します。また、雇い主の申し出に対して、労働者との合意が取れているケースが会社都合退職です。

雇い主が一方的に労働者を辞めさせる場合は、解雇に当たり、退職とは表現しません。解雇には、勤務成績が低いことによる普通解雇、非行をしたことによる懲戒解雇、また不況下における人員整理による整理解雇が挙げられます。

なお、会社都合退職の場合は、退職願や退職届を提出する必要はありません。

③当然退職

契約期間が終了した場合や、労働者の死亡などの理由で、本人意思に関係なく職を退く場合を「当然退職」と言います。定年を迎えれば退職すること(定年退職)や、休職後に職場復帰しないことによる退職もこのカテゴリーに入ります。

 

ちなみに、①~③の他に、自分の意思や会社の都合ではなく、仕方のない他の事情により職を辞めざるを得なくなった場合も退職という言葉を使います。たとえば、実家の家業を継ぐために会社を辞めるといった場合も、自分の意思ではない場合は「退職」と言います。

また、②や③のように、契約期間の満了による退職や、会社側の都合の退職するときは、退職金規定に基づいた給付率で退職金を受け取ることができます。

職業安定所に給付金の申請手続きを行うのですが、とりわけリストラなど会社都合による退職の場合は短期間で給付金を受け取ることができます。

 

この手続きの際に「辞職」と書いてしまうと自己都合で会社を辞めるとみなされ、退職金受給までに数か月かかることもあるので、注意しましょう。

また、定年退職である場合も退職金を満額受け取れるため、円満に退職することも退職金をきちんと受け取るポイントだと言えます。

「退職」の注意点

ここで気をつけなければならないことは、退職の制度が、会社の許可制ではないということです。

退職において「会社の承諾」という表記はありますが、会社の許可が必要なわけではありません。

従業員が退職を申し出たら、会社側の権利としては基本的には退職の時期をずらすことくらいしかないため、従業員は自らの意思があれば退職は可能ということです。

今は退職の予定がない人も、今後をトラブルを避けるためにも、これらの言葉に意味の違いがあることをぜひ知っておくべきでしょう。

「退職」と「退任」

「退職」と字面の似ている言葉に「退任」がありますが、両者の意味は異なります。

「退職」と「退任」はどちらも、自分の意思に関係なく職務から退くことを指します。ただ、「退職」は職場を辞めることを指しますが、「退任」は任務か降りるものの、職場を辞めるわけではありません

まとめ

以上、この記事では、「辞職」と「退職」の違いについて解説しました。

  • 辞職:役職のある人が、自分の意思で会社を辞めること
  • 退職:自分の意思あるいは会社の都合で会社を辞めること
どちらも会社を辞めるという意味の「辞職」と「退職」。法的にも異なる概念であることがわかりました。スムーズに手続きを進めるためにも、違いをしっかりと把握しておくと良いでしょう。