「前門の虎後門の狼」とは?意味と使い方を例文付きでわかりやすく解説

言葉

「前門の虎後門の狼」とは「連続して災難におそわれる」という意味です。

みなさんもこれまでの生活の中で、危機が迫った時などに、一度は「前門の虎後門の狼」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

なんとなく聞いたことがあるこの言葉ですが、詳しい意味を知っているという人は少ないと思います。

今回は、そんな「前門の虎後門の狼」について、意味・使い方・類義語・英語訳をわかりやすく説明します。

☆「前門の虎後門の狼」をざっくり言うと……

読み方前門の虎後門の狼
(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)
意味連続して災難におそわれる
由来『評史』に登場する「前門に虎を担ぎ後門に狼を進む」という表現
類義語一難去ってまた一難
追っ手を防げば搦め手へ回る
虎口を逃れて竜穴に入る など
英語訳“A precipice in front, a wolf behind.(前に絶壁、後ろに狼)”
“To take one foot out of the mire and put in the other.(片足を泥から抜き出し、もう片方の足を泥に踏み入れる)”

「前門の虎後門の狼」の意味

前門ぜんもん虎後門とらこうもんおおかみ

連続して災難におそわれる

「前門の虎後門の狼」とは、連続して災難におそわれることを指す言葉です。

自分に襲いかかってくる災難のことを、恐怖の対象である「虎」「狼」に例えて表しています。

災難を1つ解決した際は、「どうにか解決できた」と一安心することが多いですが、その状況に対してさらに負荷をかける状態のため、辛い心情を表す言葉としても知られています。

「前門の虎後門の狼」を使う際に、「挟み撃ち」と同じ意味で使う人がいますが、これは誤用です。

注意しましょう。

「前門の虎後門の狼」の使い方

「前門の虎後門の狼」は続けて災難に見舞われる際に用いられます。

具体的な例文を見ていきましょう。

  1. 会計の問題を解決したと思ったら、今度は組織内に問題が発生するなんて、まさに前門の虎後門の狼だ。
  2. ようやく国語のレポートを終わらせたのに、一週間後には数学のレポートの締め切りが迫っているなんて、前門の虎後門の狼だな。
  3. 前門の虎後門の狼にならないよう、危機を事前に予測して対応することが必要だ。

一つ目の例文では、会計の問題の後に組織の問題と、問題が続けてきているため、「前門の虎後門の狼」を使うことができます。

また、二つ目の例文では国語のレポートと数学のレポートが襲っているため、「前門の虎後門の狼」を使うことができます。

そして、三つ目の例文では、このようにたくさんの問題に続けて追い込まれることがないように、という意味で「前門の虎後門の狼」を使用しています。

「前門の虎後門の狼」の由来

「前門の虎後門の狼」は、「前門に虎を担ぎ後門に狼を進む」という言葉が元となっています。

これは中国の趙弼(ちょうひつ)という人物が書いた、『評史』という本に登場する言葉です。

この本の中で「前門に虎を担ぎ後門に狼を進む」は、「前門から入ってこようとする虎をなんとかして防いだのにも関わらず、今度は後門から狼が入り込もうとしている」という意味であり、今の「前門の虎後門の狼」とほぼ同じ意味をもっています。

これが次第に短縮化されて、「前門の虎後門の狼」になりました。

「前門の虎後門の狼」の類義語


「前門の虎後門の狼」には以下のような類義語があります。

  • 一難去ってまた一難
    災難から逃れることができたと思ったら、別の災難におそわれること
  • 追っ手を防げば搦め手(からめて)へ回る
    次から次へと脅威が迫ってくるさま
  • 虎口(ここう)を逃れて竜穴(りゅうけつ)に入る
    次から次に災難がやってくること
  • 前虎後狼(ぜんここうろう)
    次から次へと災難に襲われること
  • 袋の鼠(ふくろのねずみ)
    逃げ出すことができないこと
  • 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち)
    辛いときにさらに辛い思いをすること

これらの類義語の中で、一つ目から三つ目までは、意味は「前門の虎後門の狼」と同じであるものの、脅威として示されているものが違います。

また、後ろ三つは「前門の虎後門の狼」と似た意味をもつものの、少し意味が違う言葉になっています。

四つ目の類義語である前虎後狼も、「前門の虎後門の狼」と同じ意味をもつ表現です。

「前門の虎後門の狼」をさらに短縮した表現が、前虎後狼となっています。

「一難去ってまた一難」とは

「一難去ってまた一難」は、何か文書などに記載があったわけではありません。

「一難」とは、「一つの災難」という意味であり、災難が去った後にまた災難が来る、という意味の表現となっています。

「追っ手を防げば搦め手へ回る」とは

「追っ手を防げば搦め手へ回る」の中に登場する「搦め手」とは、裏門という意味です。

「追っ手を防げば搦め手へ回る」では脅威となるものは「追っ手」です。

「正門からやってくる追っ手をどうにか防いだと思ったら、今度はその追っ手が裏門に回り込んでまた襲撃してくる」という意味があります。

そのため、「前門の虎後門の狼」と同じ意味を表しています。

「虎口を逃れて竜穴に入る」とは

「前門の虎後門の狼」では、「虎口」と「竜穴」が脅威になるものとして示されています。

「前門の虎後門の狼」における、それぞれの言葉の意味は以下の通りです。

  • 虎口
    虎に食べられそうな場面
  • 竜穴
    竜が住んでいる穴

これらが連続して襲ってくる様子を表していることから、「前門の虎後門の狼」と同じ意味の表現になっています。

「前門の虎後門の狼」と「袋の鼠」の違い

袋の鼠は「逃げ出すことができない」という意味です。

「前門の虎後門の狼」と「袋の鼠」の違いは以下の通りです。

「前門の虎後門の狼」と「袋の鼠」の違い
  • 前門の虎後門の狼
    連続して災難に襲われているという状態を指す
  • 袋の鼠
    災難に連続で襲われるなどの状況に見舞われることで、逃げ出せなくなっている状態を指す
このように、「前門の虎後門の狼」と「袋の鼠」は、逃げ出せなくなっている状態を表すかどうかが異なっています。

「前門の虎後門の狼」と「泣きっ面に蜂」の違い

泣きっ面に蜂は「辛いときにいっそう辛い思いをする」という意味です。

「前門の虎後門の狼」と「泣きっ面に蜂」の違いは以下の通りです。

「前門の虎後門の狼」と「泣きっ面に蜂」の違い
  • 前門の虎後門の狼
    連続して災難に襲われているという状態を指す
  • 泣きっ面に蜂
    災難に連続で襲われることで、辛さが増している状態を指す
このように、「前門の虎後門の狼」と「泣きっ面に蜂」は、表す状態が異なっています。

「前門の虎後門の狼」と「八方塞がり」の違い

八方塞がりは「どの方法も塞がれており、どうにもならない」という意味です。

「前門の虎後門の狼」と「八方塞がり」の違いは以下の通りです。

「前門の虎後門の狼」と「八方塞がり」の違い
  • 前門の虎後門の狼
    連続して災難に襲われているという状態を指す
  • 八方塞がり
    災難に連続で襲われるなどにより、どうにもならなくなっている状態を指す
このように、「前門の虎後門の狼」と「八方塞がり」は、表す状態が異なっています。

「前門の虎後門の狼」の英語訳

「前門の虎後門の狼」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • A precipice in front, a wolf behind.
    (前に絶壁、後ろには狼)
  • To take one foot out of the mire and put in the other.
    (片足を泥から抜き出し、もう片方の足を泥に踏み入れる)
  • Between scylla and Charybdis.
    (岩礁地帯と大渦巻の間)

一つ目の表現は、「絶壁」と「狼」を災難の例として挙げており、これらが前と後ろにあることから立て続けに災難に見舞われることを表しています。

二つ目の表現は、「泥」を災難の例として挙げており、交互に足を泥の中に踏み入れていることから連続して災難に襲われることを表しています。

また、三つ目の表現にある、 “scylla” と “Charybdis” は以下の意味をもつ言葉です。

  • scylla
    イタリアとシチリア島の間にある危険な岩礁地帯
  • Charybdis
    シチリア近海にある大渦巻
この表現では、これら2つを災難としており、これに挟まれていることから災難に連続で見舞われることを表しています。

「前門の虎後門の狼」のまとめ

以上、この記事では「前門の虎後門の狼」について解説しました。

読み方前門の虎後門の狼
(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)
意味連続して災難におそわれる
由来『評史』に登場する「前門に虎を担ぎ後門に狼を進む」という表現
類義語一難去ってまた一難
追っ手を防げば搦め手へ回る
虎口を逃れて竜穴に入る など
英語訳“A precipice in front, a wolf behind.(前に絶壁、後ろに狼)”
“To take one foot out of the mire and put in the other.(片足を泥から抜き出し、もう片方の足を泥に踏み入れる)”

このように、「前門の虎後門の狼」は、連続して災難に見舞われる際に用いられる言葉です。

使い方を誤解して使う人が多い表現のため、意味をしっかりと覚えて使いましょう。

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つつつ
この道10年以上の読書家。 短い言葉で人を惹き付けるコピーが大好きです。 本の帯に書かれたコピーを見て買ってしまうこともしばしば。 読書で得た文章力を活かして、日常生活でよく使う言葉を中心に執筆しています。