「心許ない」とは「頼りなく不安である」という意味です。
「心許ない」について、「ニュアンスはなんとなくわかるけれど、いざ意味を説明しようとするとよくわからない」と感じる方が多いのではないでしょうか。
この記事では、「心許ない」の意味や使い方、語源、類義語などについて詳しく解説します。
☆「心許ない」をざっくり言うと……
読み方 | 心許ない(こころもとない) |
---|---|
意味 | 頼りなく不安である |
語源 | 心: 気持ち 許ない: 元(=根拠)がない |
類義語 | 不安 気遣わしい 覚束ない など |
対義語 | 安心 心強い 心配無用 など |
英語訳 | uneasy (不安な、心配な) unreliable (頼りない) can’t rely on〜 (頼りない) など |
このページの目次
「心許ない」の意味
頼りなく不安である
「心許ない」とは、頼りなく不安であるという意味です。
具体的には、以下のようなときに使うことができます。
- 心が落ち着かないとき
- 何かを気がかりに感じるとき
- 物事がうまくいくか心配するとき
「心許ない」の表記
「心許ない」は、以下のように表記する場合があります。
- 心もとない
- 心許無い
ただし、「心許無い」という表記は、現代仮名遣いのルールでは推奨されていません。
漢字が続いてしまい、読みづらくなるからです。
「心許ない」の使い方
「心許ない」は、以下のように様々な言い回しで使います。
例文と合わせて見てみましょう。
- 〜は心許ない
〜は心配だ
例:息子を1人で買い物に行かせるのは心許ない。 - 〜なんて心許ない
〜なんて心細い
例:数日間だけで別れなければいかないなんて心許ない。 - 心許ない気持ち
不安で心配な気持ち
例:心許ない気持ちのまま、当日をむかえた。 - 心許ない思い
不安な思い
例:私は、姉の心許ない思いに共感した。 - 心許ないこと/ものだ
心配なこと
例:手書きの地図だけで出発するのは心許ないことなので、地図アプリもあると安心だ。 - 心許ない様子
心配そうな様子
例:彼女は心許ない様子で去っていった。 - 心許なくなる
不安な気持ちになる
例:「こわい話をしていると、背中が心もとなくなって、体が固くなる。そういう話をしているとその波動にひかれてあっというまに霊が集まってくるからだ」
[出典:吉本ばなな『アムリタ〈上〉』 - 心許ない日々
不安な日々
例:家族が入院し、心許ない日々を送っていた。 - 心許ない状況
不安に感じる状況
例:心許ない状況だったときに、彼が私を助けてくれました。 - 甚だ(はなはだ)心許ない
非常に不安で気がかりだ
例:新入社員だけでイベントをさせるのは、甚だ心許ない。 - 心許ない限り
とても不安である
例:寒い時期を暖房なしで過ごすのは、心許ない限りだった。 - 懐(ふところ)が心許ない
お金が足りるかどうか、気がかりだ
例:懐が心許ないので、今日の飲み会は欠席しようと思う。 - 妙に心許ない
なんとなく心配である
例:今日は、私以外、家に誰もいないため妙に心許ない。
「心許ない」の敬語表現
「心許ない」を目上の人との会話などで使うときは、以下のような敬語表現を使いましょう。
- 心許ないです
不安で気がかりです
例:Aさんのいない部署は少し心許ないです。
※「不安に感じております」「頼りなく感じております」などに言い換えることもできる - 心許ない次第ですが
不安な気持ちですが
甚だ心許ない次第ですが、まずは問題点を洗い出すところから始めます。
ちなみに、「心許ない」などの形容詞に「です」をつけるという方法は、もともと不自然な日本語とされていました。
しかし、昭和27年の文化庁による決定で、形容詞に「です」をつけても問題ないということになりました。
「心許ない」の語源
「心許ない」は、「心」と「許ない」の二語から成り立っています。
「心」と「許ない」には、以下のような意味があります。
- 心
気持ち - 許ない(もとない)
元(=根拠)がない
つまり、「心許ない」は「気持ちに根拠がない」ことを表すのです。
「心許ない」の意味の変遷
「心許ない」はもともと「心許なし」という古語でした。
「心許なし」は、以下のような意味をもっていました。
- わけもなく待ち遠しくてじれったい
- ぼんやりしていて、はっきりしない
古文での例文を見てみましょう。
- 宵(よい)過ぐるまで待たるる月の心許なきに
現代語訳:
夜が更けるまで、月が出るのが遅いのが待ち遠しくて
[出典:『源氏物語』「末摘花」] - はしるはしる、わづかに見つつ、心も得ず心もとなく思ふ源氏を
現代語訳:
胸をわくわくさせながら、少しずつ読んでは、話の筋がわからずにじれったく思っている『源氏物語』を
[出典:『更級日記』「物語・源氏の五十余巻」] - 花びらの端に、をかしきにほひこそ、こころもとなうつきためれ
現代語訳:
花びらの端に、美しい色が、ほのかについているように見える。
[出典:『枕の草子』「木の花は」]
古語の「なんとなく気持ちが落ち着かない」「はっきりしない」という意味合いが転じて、「なんだか頼りなく不安だ」という現在の意味に変化していきました。
「心許ない」の類義語
「心許ない」には以下のような類義語があります。
- 不安
気がかりで落ち着かない - 気遣わしい(きづかわしい)
気にかかって心配である - 覚束ない(おぼつかない)
うまくいくかどうか不安である - 心細い
寂しい - 危なっかしい
心配になるほど危ない - 頼りない
頼りにならない
「心許ない」の対義語
心許ないには以下のような対義語があります。
- 安心
不安も心配もない - 心強い
頼りになるものがあり、安心する - 心配無用
心配する必要がない
「心許ない」の英語訳
「心許ない」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- uneasy
(不安な、心配な) - unreliable
(頼りない) - can’t rely on〜
(頼りない) - feel unsure
(不安を感じる) - uneasy
(不安) - anxious
(不安) - unsure
(自信がない) - not sure
(さだかではない)
「心許ない」と混同されやすい言葉
「心許ない」と混同されやすい言葉に、以下のようなものがあります。
- 心ない
思いやりがない - 心許り(こころばかり)
ちょっとした気持ちを表すしるし
それぞれの言葉について、意味を詳しく解説します。
「心ない」の意味を詳しく
「心ない」とは、「思いやりがない」という意味です。
「心許ない」は「頼りなく不安だ」という意味ですから、「心許ない」と「心ない」は全く異なる意味をもつ言葉です。
発音は似ていますが、混同しないようにしましょう。
- ○ SNSに、心ない言葉がたくさん書き込まれていた。
× SNSに、心許ない言葉がたくさん書き込まれていた。 - ○ 彼の心ない発言で、私は深く傷ついた。
× 彼の心許ない一言で、私は深く傷ついた。
「心許り」の意味を詳しく
「心許り」とは、「ちょっとした気持ちを表すしるし」という意味です。
相手にプレゼントをするときに「心許り」を使うことで、「ちょっとした気持ちですが」「些細なものですが」などという謙遜を表すことができます。
「心許ない」と「心許り」は表記が似ていますが、全く異なる意味をもつ言葉ですから混同しないようにしましょう。
× 心許ない品ですが、どうぞ受け取ってください。
ちなみに、「心許り」は、「心ばかり」と表記することもあります。
「心許り」と似ている言葉に、「心許ながる」という言葉があります。
「心許ながる」は待ち遠しい気持ちを表す意味ですが、古い言い回しであるため、現在ではあまり使われません。
「心許ない」のまとめ
以上、この記事では「心許ない」について解説しました。
読み方 | 心許ない(こころもとない) |
---|---|
意味 | 頼りなく不安である |
語源 | 心: 気持ち 許ない: 元(=根拠)がない |
類義語 | 不安 気遣わしい 覚束ない など |
対義語 | 安心 心強い 心配無用 など |
英語訳 | uneasy (不安な、心配な) unreliable (頼りない) can’t rely on〜 (頼りない) など |
会話や文章のなかで、「心許ない」を正しく使いこなしましょう。