焚書とは「主に思想を弾圧するために書物を焼却すること」という意味です。
焚書は日常会話で使うことが少ないため、読み方や意味を想像するのが難しいですよね。
具体的にどんなことを焚書というのか気になる人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では焚書の意味や使い方、具体例まで詳しく説明します。
また、本記事は特定の思想や宗教を批判するものではございません。
あらかじめご了承ください。
☆「焚書」をざっくり言うと……
読み方 | 焚書(ふんしょ) |
---|---|
意味 | 主に思想を弾圧するために書物を焼却すること |
語源 | 紀元前213年頃に始皇帝が行った思想の弾圧 |
英語訳 | book burning (本や資料を燃やして処分すること) |
「焚書」の意味
主に思想を弾圧するために書物を焼却すること
焚書は、「主に思想や言論の自由などを弾圧するために、書物を焼やして処分すること」という意味です。
政府や支配者など、権力を持った組織が行う大規模な弾圧行為のひとつです。
焚書は、以下のようなものを処分することも表します。
- 絵画・イラスト
- レコード
- 写真
- 磁気テープ
- ディスクメディア
つまり、焚書は、何らかの情報が収められた物体を処分することを表すのです。
また、処分する手段は、燃やすだけではなくシュレッダーを使うことも含みます。
中国の明の時代に李贄という思想家がいました。
彼の書いた著書に、『焚書』があります。
儒教を批判し、人間にとって最も大切なものは「童心」であるという内容です。
「焚書」の具体例
焚書の具体例には以下のようなものがあります。
時代 | 出来事 |
---|---|
旧約聖書のエレミヤ書 | 国王が預言を焼却する描写がある |
紀元前213年頃 | 始皇帝が秦以外の国の歴史書を焼却する |
272年 | アウレリアヌス軍がアレクサンドリアの図書館を破壊する |
1830年〜1843年 | 天保の改革により為永春水の人情本が焼却される 曲亭馬琴が焚書を恐れて『南総里見八犬伝』を完結させる |
1933年4月6日 | ナチス・ドイツが「非ドイツ」的とみなした物を焼却する |
1966年 | 中国文化大革命の焚書 |
1970年2月23日 | 言論出版妨害事件により1967年出版の『これが創価学会だー元学会幹部43人の告白』が10万5000冊焼却されたことが判明 |
明治初期 | 廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により仏教寺院の仏像や書物を破壊する |
戦後 | GHQにより日本皇室の歴史書などが焼却される |
戦後 | 悪書追放運動により『鉄腕アトム』などの漫画がバッシングを受ける |
上記の中でも有名な具体例を詳しく見ていきましょう。
具体例:始皇帝の焚書
歴史上初めて行われた焚書は、始皇帝によるものだとされています。
始皇帝は、古代中国にあった秦(しん)という国の初代皇帝です。
紀元前213年頃、始皇帝の配下である李斯(りし)は秦を確立させるために以下のようなことを提案しました。
- 秦以外の国の歴史書を焼却する
- 民間人が所有する医学・占い・農業以外の書物を焼却する
- 30日以内に所有する書物を提出しなければ刑罰を与える
- 法律は役人が教える
始皇帝が行った焚書によって、儒教の教えが書かれた書物や、諸子百家の書物が焼却されました。
諸子百家とは、春秋戦国時代に現れた学者や学派の総称です。
春秋戦国時代とは、秦が中国を統一するまでの紀元前770年から紀元前221年までをいいます。
諸子は、孔子・老子・荘子・墨子・孟子・荀子などの人物のことです。
百家は、儒家・道家・墨家・名家・法家などの学派のことです。
具体例:ナチス・ドイツの焚書
1933年4月6日、ナチス・ドイツによって焚書が行われました。
ナチス・ドイツとは、1933年から1945年までのアドルフ・ヒトラー及び国家社会主義ドイツ労働者党による支配下だったドイツのことです。
ナチス・ドイツは、「非ドイツ」的とみなされた多くの書物を焼却しました。
具体的に燃やされたのは、以下のような人が書いた書物です。
- カール・マルクスなどの社会主義的な書物
- ハインリヒ・ハイネ
- エーリッヒ・ケストナー
- ハインリヒ・マン
- ベルトルト・ブレヒト
- エーリヒ・マリア・レマルク
- クルト・トゥホルスキー
- カール・フォン・オシエツキー
ドイツの作家であるハインリヒ・ハイネは、戯曲『アルマンゾル』の中で以下のような皮肉を含んだ表現を残しました。
(焚書は序章に過ぎない。本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる。)
この言葉を残したハインリヒ・ハイネの書物も、焚書の対象になりました。
「焚書」の使い方
焚書は名詞として使います。
例文を見てみましょう。
- 焚書によって失われた先人の知恵は計り知れない。
- 焚書に逆らう者は厳しい処罰を受けた。
- 現代では言論の自由が保証されているから、焚書は起こり得ないだろう。
- 焚書によって当時の記録が少ない。
「焚書」の語源
焚書の語源は、紀元前213年頃に始皇帝が行った思想の弾圧です。
主に儒教を弾圧するために、書物を焼却して、およそ460人の儒者を生き埋めにしたとされています。
この出来事から、「書物を焼却すること」を焚書、「儒者を生き埋めにすること」を坑儒と言うようになりました。
焚書坑儒の漢字には、それぞれ以下のような意味があります。
- 焚:焼く
- 書:書き記したもの
- 坑:生き埋めにする
- 儒:儒教の教えを信じる人
「焚書」の英語訳
焚書を英語に訳すと、次のような表現になります。
- book burning
(本や資料を燃やして処分すること)
「焚書」と似た弾圧行為
焚書は、言論の自由を弾圧する行為です。
焚書と似た弾圧行為には、以下のようなものがあります。
- 検閲(けんえつ)
調べ改めること。特に、公的機関が思想発表の内容を取り調べること - 禁書(きんしょ)
①公共に害があるとして、出版を禁じられること
②出版が禁じられた本
「焚書」のまとめ
以上、この記事では焚書について解説しました。
読み方 | 焚書(ふんしょ) |
---|---|
意味 | 主に思想を弾圧するために書物を焼却すること |
語源 | 紀元前213年頃に始皇帝が行った思想の弾圧 |
英語訳 | book burning (本や資料を燃やして処分すること) |
現代では、紙の書籍だけではなく電子書籍も普及しているため、焚書が起こっても完全に情報が消えることはほとんどありません。
便利な時代だからこそ、現存している書物を大事にしていきたいですね。