日本は島国ですから、昔から船などの海上交通が発達していました。そして、船などが陸に人や荷物を届ける時に重要になってくるのが「港」です。
「港」は現在でも物流などでとても重要な役割を果たしていますし、中には観光地になっているところもありますよね。
ところで、「港」と近い存在として「湊(みなと)」があげられます。この2つは同じものにも見えますし、どちらの船が安全に停泊できるようにした場所という意味は同じです。しかし、この2つの言葉にはきちんと違いがあるんです。
そこで、今回は「港」と「湊」の違いについて解説していきたいと思います。
結論:指しているものの範囲が違う
まず、「港」とは船着き場のことです。
一方、「湊」とは水上にある人やものが集まるところのことです。
「港」をもっと詳しく
港とは船着き場のことです。
具体的には、船が安全に出入りできる、自然の地形や人工的に造った防波堤などで波風から守られた沿岸地域のことを港と呼びます。
そして、海洋の沿岸、河口、河川の沿岸、湖の沿岸にあることが多いでしょう。
また、港の中には船を安全にとめることができる「泊地(はくち)」があります。
そして、港では多くの人が乗り降りをし、水上交通と陸上交通の接点になっていて、昔から重要な場所でした。
ちなみに、港のうちでも一年を通して凍結しない港を「不凍港(ふとうこう)」と言います。ロシアなど寒い地域にある国では冬になると凍ってしまい使えなくなってしまう港が多いので、特に不凍港を確保することは重要です。
そんな港は大きくわけて3つのタイプにわけることができます。
まず1つめは天然の地形や入り江、岬、島、河口などによってもともと波風から守られたところにある「天然港」です。
次に2つめは天然港に防波堤などの改良をほどこすことで、より安全性を高いものにした「改良港」です。
そして、3つめは完全に人工物によって波風から守られている「人工港」です。
また、港はその役割によっても分類することができます。
例えば、商港は経済活動を行うことに特化していて、貿易などを行います。また、軍港は軍事目的で用いられる特別な港で、軍艦などの根拠地として使われています。
そして、避難港というものもあります。避難港とは暴風雨の時などに小型の船が避難することを主な目的にしている港のことです。また、漁港は文字通り漁師たちが船を出して漁を行うためにある港です。
ちなみに、「港」という漢字は「巷(ちまた)」という部分と「水」の部分にわけることができます。
このうち、「巷」は町や村の通路のことを表しています。また、「水」はそのまま水のことです。
この2つの部分を組み合わせてできた「港」はもともとは水路で船の発着する場所の意味はありませんでしたが、やがてそのように使われるようになり、現在では一般的な表記になりました。
「湊」をもっと詳しく
湊とは水上にある人やものが集まるところのことです。
そして、「湊」は「港」と違って船や人など、地形以外の部分のほか、海や川や陸の部分全てを含んでいるという特徴があります。
ちなみに、「湊」という漢字は「奏」の部分と「水」の部分とにわけることができます。
このうち、「奏」はお供え物を集めて神様に差し出す様子を表した漢字で、多くのものが集まるという意味です。
そして、「水」の部分は水という意味なので、これを組み合わせてできた「湊」という漢字はもともとは船がとまるかどうかは関係なく、水路がその方向に向かって集まる場所という意味でした。
しかし、現在では「港」と同じように船が安全に停泊することができる場所という意味を表していることが多いでしょう。
また、「湊」には外界よりも穏やかなところという意味もあります。
ただ、「湊」は「港」に比べて古風な表現で、「港」より使用頻度は低めでしょう。
しかし、「湊」のほうが船が安全に停泊することができる場所という意味を持った時期がはやかったので、かつて「湊」と呼ばれていたものが「港」と呼ばれるようになったという説もあります。
ちなみに、「港」が人の下の名前として使われることはあまりありませんが、「湊」が使われていることはよくあります。
これは、「湊」に人やものが集まるところ、というニュアンスが含まれているからです。
まとめ
以上、この記事では、「港」と「湊」の違いについて解説しました。
- 港:船着き場のこと
- 湊:水上にある人やものが集まるところのこと
「湊」は船着き場だけでなく人やもののことまで含んだ表現だったんですね。現在では「港」という表記が一般的なので、「湊」が使われている場合には特別な意味があるのかもしれません。