着物と浴衣には着用時期など、9つの違いがあります。
着物と浴衣はかたちが似ているため、「見た目だけでは判断しづらい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
和装知識を間違えるとエチケット違反になることもありますから、両者の違いを正しく理解しておきたいですよね。
この記事では、着物初心者の方もきちんと理解できるよう、「着物」と「浴衣」の9つの違いについて丁寧に解説します。
本来「着物」は、浴衣を含む様々な種類の全般を指す言葉です。
つまり、浴衣は着物の一種です。
しかし、この記事では、着物と浴衣の違いについて解説するため、便宜上、着物を「浴衣以外の種類の着物」という意味で取り上げます。
☆「着物」「浴衣」の違いをざっくり言うと……
着物 | 浴衣 | |
---|---|---|
着用時期 | 通年 | 夏(6〜9月) |
用途 | カジュアルから正装までさまざま | 夏のカジュアルなおでかけ着 |
素材 | 絹のものが多い | 綿のものが多い |
仕立て | 6~9月: 単衣(ひとえ) 10~4月: 袷(あわせ) | 単衣 |
帯 | 幅が広め | 幅が狭め |
帯揚げ・ 帯締め | 必要 | 不要 |
足に履くもの | 足袋+草履・下駄 | 素足+草履 |
下着 | 肌襦袢+裾よけ+長襦袢 | 肌襦袢(+裾よけ) |
由来 | 3世紀ごろ〜 | 平安時代の「湯帷子(ゆかたびら)」から |
このページの目次
【結論】「着物」と「浴衣」の9つの違い
着物と浴衣には以下のような9つの違いがあります。
着物 | 浴衣 | |
---|---|---|
着用時期 | 通年 | 夏(6〜9月) |
用途 | カジュアルから正装までさまざま | 夏のカジュアルなおでかけ着 |
素材 | 絹のものが多い | 綿のものが多い |
仕立て | 6~9月: 単衣(ひとえ) 10~4月: 袷(あわせ) | 単衣 |
帯 | 幅が広め | 幅が狭め |
帯揚げ・ 帯締め | 必要 | 不要 |
足に履くもの | 足袋+草履・下駄 | 素足+草履 |
下着 | 肌襦袢+裾よけ+長襦袢 | 肌襦袢(+裾よけ) |
由来 | 3世紀ごろ〜 | 平安時代の「湯帷子(ゆかたびら)」から |
これから、それぞれの違いについて詳しく見ていきたいと思います。
【1】着る時期の違い
着物と浴衣の1つ目の違いは、着用時期です。
- 着物:通年
- 浴衣:6~9月
着物は、種類や素材によって通年で着用されます。
一方で、着物のなかの一種である浴衣は、夏(6〜9月)に限定して着用されます。
【2】用途の違い
着物と浴衣の2つ目の違いは、用途です。
- 着物
カジュアルから正装までさまざま - 浴衣
夏のカジュアルなおでかけ着
それぞれの用途の違いについて詳しく見ていきましょう。
着物の用途
着物の用途や着用場面は、多岐にわたります。
種類によってカジュアルな場面で着るものもあれば、フォーマルな正装として使うものもあるのです。
フォーマル | 黒留袖 | 既婚女性が着る礼装 |
---|---|---|
打掛 | 花嫁が着る礼装 | |
振袖 | 未婚女性の礼装 | |
喪服 | 葬式の際に着る礼装 | |
セミフォーマル | 色留袖 | 黒以外の留袖 |
訪問着 | 1枚の絵のように模様が描かれる | |
カジュアル | 小紋 | 柄が繰り返される着物 |
付け下げ | 訪問着を少しシンプルにしたもの |
浴衣の用途
浴衣は、夏のカジュアルなおでかけ着として着用されます。
現代において浴衣は、夏祭りや花火大会など、夏のイベントで着ることがほとんどです。
洋服が普及する前、浴衣は寝間着として着る文化もありました。
しかし、現在では浴衣をパジャマとして着る人は少ないでしょう。
【3】素材の違い
着物と浴衣の2つ目の違いは、生地の素材です。
- 着物
絹のものが多い - 浴衣
綿のものが多い
それぞれの素材について、具体的に見ていきましょう。
着物の素材
着物の素材は、種類によって異なります。
- 絹
- 麻
- 木綿
- ウール
- 化学繊維
(ポリエステルなど)
特に、絹から作られる着物が多いです。
なお、着物の素材には、それぞれ以下の表のような特徴があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
絹 |
|
|
麻 |
| シワになりやすい |
綿 |
|
|
ウール |
| 虫の害にあいやすい |
化学繊維 |
|
|
浴衣の素材
浴衣は夏に着用されるため、基本的には通気性が良い素材が使われます。
具体的には、綿の素材がよく使われます。
ほかにも、買い求めやすい化学繊維の浴衣もあります。
【4】仕立ての違い
着物と浴衣の4つ目の違いは、仕立てです。
- 着物
季節によって単衣の場合と袷の場合あり - 浴衣
単衣
「単衣」と「袷」の違いをまとめると、下記のようになります。
- 単衣(ひとえ)
生地が1枚だけ
→暖かい季節に着る - 袷(あわせ)
生地が2枚重なっている
→寒い季節に着る
そのため、夏に着用される浴衣は、薄い単衣の仕立てとなっているのです。
一方で、着物には様々な種類があるため、「単衣のものもあれば、袷のものもある」ということになります。
【5】帯の違い
着物と浴衣の5つ目の違いは、使用する帯の違いです。
- 着物に使う帯
幅が広め - 浴衣に使う帯
幅が狭め
それぞれに使う帯について、詳しく解説します。
着物の帯
着物には、主に以下のような帯が使われています。
浴衣に使う帯との違いは、どれも比較的幅が広いという点です。
丸帯 | 帯のなかで最上級の格式 |
---|---|
袋帯 | 表に柄があり、裏側は無地 (現代では丸帯より主流) |
名古屋帯 | 袋帯の簡略形 |
細帯 | 男性用の帯 |
なお、着物の帯の結び方にはさまざまな種類があります。
たとえば袋帯では、二重太鼓(にじゅうだいこ)という結び方が一般的です。
「太鼓」とは、帯を結んだときにつくる膨らみのことです。
浴衣の帯
浴衣には、主に以下のような帯が使われています。
着物に使う帯との違いは、どれも比較的幅が狭く、細い帯であるという点です。
半幅帯 | 袋帯の半分の幅の帯 (幅17cmほど) |
---|---|
兵児帯 | 浴衣などに合わせて着る |
細帯 | 男性用の帯 |
なお、浴衣の帯の結び方で最も一般的なのは、リボンのようなかたちの「文庫結び」です。
男性の帯の選び方や結び方は、「着物」であっても「浴衣」であっても大きくは異なりません。
【6】帯揚げ・帯締めの違い
着物と浴衣の6つ目の違いは、「帯揚げ・帯締めが必要かどうか」です。
- 着物
帯揚げ・帯締めが必要 - 浴衣
帯揚げ・帯締めが不要
それぞれ見ていきましょう。
着物の帯揚げ・帯締め
着物には、帯揚げ・帯締めが必要です。
帯揚げ・帯締めとは、帯を身につける際に使う小物です。
帯揚げ | 帯の上から覗く布 |
---|---|
帯締め | 帯に巻かれた紐 |
帯揚げと帯締めはどちらも、帯のかたちが崩れないようにするために使われます。
また、帯コーディネートのアクセントになるため、装飾としての役割も大きいです。
浴衣の帯揚げ・帯締め
浴衣は着物とは異なり、帯揚げ・帯締めを使いません。
帯揚げ・帯締めの装飾がないため、浴衣の帯の見た目はシンプルです。
【7】足に履くものの違い
着物と浴衣の7つ目の違いは、足に履くものです。
- 着物
足袋のうえに草履や下駄を履く - 浴衣
素足に草履を履く
着物で足に履くもの
着物では、足袋のうえに草履や下駄を履きます。
- まず素足に足袋を履く
- 足袋のうえに、草履や下駄を履く
浴衣で足に履くもの
浴衣では、基本邸に、素足に直接草履を履きます。
着物と異なり、足袋を履かない点がポイントです。
【8】下着の違い
着物と浴衣の8つ目の違いは、下着です。
- 着物
肌襦袢+裾よけ+長襦袢 - 浴衣
肌襦袢のみ
肌襦袢・裾よけ・長襦袢はどちらも、着物の下に着るものです。
定義 | 着物 | 浴衣 | |
---|---|---|---|
肌襦袢 | 肌に直接着るもの | ○ | ○ |
裾よけ | 下半身に巻くもの | ○ | △ |
長襦袢 | 肌襦袢・裾よけのうえに着るもの | ○ | × |
着物では、肌襦袢のうえに裾除けと長襦袢を重ねたうえで着ます。
一方で、浴衣の下に着るのは肌襦袢のみです。
また、裾除けを着ても良いです。
浴衣は肌襦袢さえも使わず、素肌の上に直接着るものでした。
ただし現代では、肌襦袢を着るのが主流となっています。
【9】由来の違い
着物と浴衣の9つ目の違いは由来です。
- 着物
3世紀ごろ〜 - 浴衣
平安時代の「湯帷子(ゆかたびら)」から
着物の由来
着物の歴史は古いです。
襟を合わせて着るかたちのものは、3世紀ごろの時点で、呉(ご)の国から伝わっていました。
しかし、現代の着物のかたちの原型が成立したのは平安時代です。
浴衣の由来
浴衣は、平安時代ごろに生まれた着物の一種です。
入浴の際に着た「湯帷子(ゆかたびら)」というものが、しだいに「ゆかた」と呼ばれるようになりました。
ちなみに、浴衣はもともと、紺色と白色を基調とした古典的なデザインが一般的でした。
しかし、現代では、さまざまな色やデザインのものが流通しています。
「着物」と「浴衣」の違いのまとめ
以上、この記事では、着物と浴衣の10個の違いについて解説しました。
着物 | 浴衣 | |
---|---|---|
着用時期 | 通年 | 夏(6〜9月) |
用途 | カジュアルから正装までさまざま | 夏のカジュアルなおでかけ着 |
素材 | 絹のものが多い | 綿のものが多い |
仕立て | 6~9月: 単衣(ひとえ) 10~4月: 袷(あわせ) | 単衣 |
帯 | 幅が広め | 幅が狭め |
帯揚げ・ 帯締め | 必要 | 不要 |
足に履くもの | 足袋+草履・下駄 | 素足+草履 |
下着 | 肌襦袢+裾よけ+長襦袢 | 肌襦袢(+裾よけ) |
由来 | 3世紀ごろ〜 | 平安時代の「湯帷子(ゆかたびら)」から |
着物と浴衣の違いをふまえて、和装を楽しみましょう。
◉参考文献:
一般社団法人(2009)『きものの基本 きもの文化検定公式教本1』ハースト婦人画報社/講談社.