ジリ貧とは「少しずつ貧乏になっていく」「だんだんと状況が悪化する」「(株用語で)相場が徐々に下がる」という意味です。
ジリ貧は由来がわかりにくいため、日常会話で使ってもよい言葉なのか悩みますよね。
実は、第一次世界大戦後の戦後恐慌(きょうこう)がきっかけでできた言葉のため、昔から使われている言葉です。
この記事では、ジリ貧の意味や使い方をわかりやすく解説していきます。
☆「ジリ貧」をざっくり言うと……
読み方 | ジリ貧(じりひん) |
---|---|
意味 | 少しずつ貧乏になっていく だんだんと状況が悪化する (株用語で)相場が徐々に下がる |
生まれた理由 | 1920年の戦後恐慌 |
類義語 | ジリ安 右肩下がり 悪化 など |
対義語 | ドカ貧 ジリ高 上り調子 など |
英語訳 | gradual decline(ゆるやかな低下) |
「ジリ貧」の意味
- 少しずつ貧乏になっていく
- だんだんと状況が悪化する
- (株用語で)相場が徐々に下がる
ジリ貧は「ジリジリと貧しくなる」を略した語です。
「ジリジリ」と「貧しい」には、それぞれ次のような意味があります。
- ジリジリ
ゆっくりと少しずつ進んだり引いたりするさま - 貧しい
財産や金銭が少なく、生活が苦しい。貧乏である
つまり、ジリ貧は「ゆっくりと少しずつ貧乏になっていくさま」を表しているのです。
かつては日本経済における中心的な人たちが使っていましたが、現在は一般的に使用されています。
そのため、専門用語や一時期に流行した言葉ではなく、方言やネットスラングではありません。
ジリ貧は、じり貧と表記することもありますが、ジリ貧のほうが多く使われます。
ここからは、ジリ貧の3つの意味をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
意味①「少しずつ貧乏になっていく」
ジリ貧は「少しずつ貧乏になっていく」という意味です。
現在、裕福な人もしくは貧乏でない人が少しずつ貧乏になっていくことを表します。
現在も貧乏である人が、さらに貧乏になる場合にはほとんど使いません。
- ジリ貧
現在月収100万円→翌月の月収95万円→どんどん低下→1年後の月収5万円
(裕福な人が少しずつ貧乏になっている) - ジリ貧ではない
現在月収100万円→翌月の月収5万円
(裕福な人が一気に貧乏になっている) - ほとんどジリ貧とはいわない
現在月収5万円→翌月の月収1万円
(貧乏な人がさらに貧乏になっている)
意味②「だんだんと状況が悪化する」
ジリ貧には、「だんだんと状況が悪化する」という意味もあります。
ひとつ目の意味「少しずつ貧乏になっていく」から転じて、金銭的なこと以外の状況がだんだんと悪化していくことを表します。
金銭的なこと以外の状況が表す範囲は幅広く、以下のようなものがあります。
- 学校の成績の低下
- スポーツの成績の低下
- 人間関係の悪化
- 国際関係の悪化
- SNSのフォロワー数の減少
意味③「相場が徐々に下がる」
ジリ貧には、株用語で「相場が徐々に下がる」という意味もあります。
株における相場は、その時々によって上昇したり低下したりと変動します。
- その企業の業績の悪化
- 景気の悪化
「ジリ貧」の使い方
ジリ貧は以下のような言い回しでよく使います。
- ジリ貧だ
- ジリ貧になる
- ジリ貧の一途を辿る
- ジリ貧の〇〇
〇〇には名詞が入ります。
ジリ貧の使い方を、意味ごとに詳しく見ていきましょう。
- 少しずつ貧乏になっていく
- だんだんと状況が悪化する
- 相場が徐々に下がる
使い方①「少しずつ貧乏になっていく」の意味の使い方
「少しずつ金銭的に貧乏になっていく」という意味のジリ貧は、金銭的なことが少しずつ悪くなっていくときに使います。
お金についてであれば、個人の金銭的なことや国家の経済状況など、小さいものから大きなものまで幅広く表すことができます。
この意味では、過去のことよりも未来のことを予測するときに使うことが多いです。
- 借金の返済に追われているので、ジリ貧の生活になってしまう。
- 将来ジリ貧になりたくないので、今から少しずつ貯金している。
- 痛みを伴う転換か安定を求めたジリ貧か、日本の未来をいま選択。
[出典:経済産業省]
使い方②「だんだんと状況が悪化する」の意味の使い方
「だんだんと状況が悪化する」という意味のジリ貧は、さまざまな場面で使うことができます。
例文を見てみましょう。
- 遊んでばかりいたので、学校の成績がジリ貧だ。
- 1回戦の調子が良かったので油断してしまい、それ以降はジリ貧だった。
- あの芸能人は去年炎上してから、人気がジリ貧だ。
- 上司の悪口を言っていたことが本人に知られてしまい、職場の人間関係がジリ貧だ。
- 戦後の日韓関係はジリ貧が続いていると思います。
使い方③「相場が徐々に下がる」の意味の使い方
「相場が徐々に下がる」という意味のジリ貧は、株用語のため、株について述べるときに使います。
例文を見てみましょう。
- 日経株価はジリ貧が続いている。
- 新型コロナウィルスの影響で、我が社の株価もジリ貧の一途を辿っている。
「ジリ貧」が生まれた理由
ジリ貧が生まれたきっかけは、1920年に起きた戦後恐慌です。
第一次世界大戦が終結したあと、日本経済はしばらく好景気が続いていました。
しかし、ヨーロッパ諸国が市場に復帰したことで日本製品が輸出しにくくなり、日本企業の株価が大暴落しました。
これによって日本はだんだんと不況になっていき、当時の人々がその状況を皮肉を込めてジリ貧と呼ぶようになったのです。
「ジリ貧」の予防法
「少しずつ貧乏になっていく」という意味のジリ貧の予防法は、以下のようなものがあります。
- 知識を身につける
- 健康に気を配る
- 人間関係を大切にする
それぞれ見ていきましょう。
予防法①知識を身につける
ジリ貧を予防するためには、常に新しい知識を仕入れて身につけておくことが大切です。
たとえば、IT関連の知識などは、10年も経てば古いものとなってしまいます。
何歳になっても学ぶ姿勢を忘れないことで、損することが少なくなります。
予防法②健康に気を配る
ジリ貧を予防するためには、健康第一の生活をすることも大切です。
何歳になっても健康でいることで、医療費を削減することができます。
予防法③人間関係を大切にする
ジリ貧を予防するためには、周囲の人たちを大切にしてよい関係を築くことも大切です。
若い世代と積極的に交流することで、仕事を円滑に進めることができます。
「ジリ貧」の類義語
ジリ貧には以下のような類義語があります。
- ジリ安(やす)
(株用語で)相場が徐々に安くなること
※じり安とも書く - 右肩下がり
後になるほど状態が悪くなること - 悪化
しだいに悪くなること - 先細り
財産などが減っていくこと - 斜陽(しゃよう)
栄えていたものが衰え滅びていくさま - 困窮(こんきゅう)
貧しいために生活に苦しむこと - 財政難
苦境に立つほど財政が苦しいこと - 財政危機
経済的に困難な状況のこと - 金欠
金銭を持っていないこと - 干上がる
ものが尽きる - 食い潰す
遊び暮らして、財産などをなくす - 悪循環に陥(おちい)る
既に起こっている問題がさらに複雑化し悪化すること
「ジリ貧」の対義語
ジリ貧には以下のような対義語があります。
- ドカ貧(ひん)
一気に貧乏になる
※どか貧とも書く - ジリ高(だか)
(株用語で)相場が徐々に高くなる
※じり高とも書く - 上り調子
調子がだんだん良くなって、勢いが出はじめること - 右肩上がり
後になるほど状態が良くなること - 尻上がり
物事の状態があとになるほど良くなっていくこと - うなぎのぼり
物価などが急激に上がること - 波に乗る
調子が良く、さらに勢いがつくこと
「ジリ貧」と「ドカ貧」の違い
ジリ貧とドカ貧は以下のような違いがあります。
ジリ貧 | ドカ貧 | |
---|---|---|
意味 | 少しずつ貧乏になっていく | 一気に貧乏になる |
成り立ち | ジリジリ+貧 | ドカン+貧 |
ジリ貧とドカ貧は、貧乏になっていくスピードが異なります。
「ジリ貧」の英語訳
ジリ貧を英語に訳すと、次のような表現になります。
- gradual decline
(ゆるやかな低下)
「ジリ貧」のまとめ
以上、この記事ではジリ貧について解説しました。
読み方 | ジリ貧(じりひん) |
---|---|
意味 | 少しずつ貧乏になっていく だんだんと状況が悪化する (株用語で)相場が徐々に下がる |
生まれた理由 | 1920年の戦後恐慌 |
類義語 | ジリ安 右肩下がり 悪化 など |
対義語 | ドカ貧 ジリ高 上り調子 など |
英語訳 | gradual decline(ゆるやかな低下) |
ジリ貧は良い現象ではありませんので、ジリ貧にならないように気をつけたいものですね。