「奈良判定」とは「アマチュアボクシングの試合で奈良県出身の選手が優遇される判定」です。
または、その判定に関連する疑惑や告発を広く指す場合もあります。
一時期、連日のように報道されていたので、「奈良判定」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
「奈良判定」という文字だけ見ると、奈良県に関係があるのだろうかと思いますよね。
この記事では、「奈良判定」の意味と由来、奈良判定の重要人物の山根明氏などについても詳しく解説していきます。
☆「奈良判定」をざっくり言うと……
読み方 | 奈良判定(ならはんてい) |
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意味 | アマチュアボクシングの試合で奈良県出身の選手が優遇される判定 その判定に関連する疑惑や告発 |
言い換え表現 | 山根マジック、山根判定 |
関連語 | 恐怖政治、日韓W杯誤審疑惑 |
同年に起きた不祥事 | 日本大学フェニックス反則タックル問題 日本大学応援リーダー部が監督からパワハラ被害など |
このページの目次
「奈良判定」の意味
- アマチュアボクシングの試合で奈良県出身の選手が優遇される判定
- その判定に関連する疑惑や告発
「奈良判定」とは、アマチュアボクシングの試合で、奈良県の選手を優遇して判定しているのではないかという疑惑です。
2018年7月27日、有志による「日本ボクシングを再興する会」の333人は「奈良判定」という告発を行い、13項目を指摘した告発状を日本オリンピック委員会(JOC)、日本スポーツ協会、文部科学省などに送付しました。
指摘した13項目は以下のようなものがあります。
- アスリート助成金の不正流用の教唆(きょうさ)および隠蔽(いんぺい)
- 試合用グローブ等の不透明な独占販売
- 公式試合における組織的な審判不正
- 山根氏による暴行疑惑
これに対し、山根氏は7月30日、連盟の公式サイトに反論文を掲載しました。
8月8日、山根氏は会長を辞任しましたが、疑惑については否認したままでした。
2019年2月10日、山根氏と日本ボクシング連盟の当時の幹部3名の除名が正式に確定し、事実上の永久追放となりました。
この一連の流れと、「奈良判定」という言葉は連日各メディアで取り上げられ、社会問題となりました。
正式名称・一般社団法人日本ボクシング連盟とは、日本国内におけるアマチュアボクシングの競技統括団体です。
「奈良判定」を事実だとする証拠はあるものの、山根氏本人は否認しているため、あくまで疑惑や憶測に過ぎません。
断言することはできませんので、「奈良判定」を使う際は注意しましょう。
「奈良判定」以前の疑惑
2018年7月に起きた「奈良判定」の前から、元日本ボクシング連盟会長・山根明氏への疑惑がありました。
「山根氏と奈良県に深い親交があるため、奈良県出身の選手が優遇されているのではないか」と言われていたのです。
その中でも特に顕著だったのは、2016年10月に行われた奈良出身・中嶋一輝選手と岩手出身・佐々木康太選手の試合です。
- 佐々木選手が圧倒的に押し込む
- 中嶋選手は2回ダウンを取られる
- その後も佐々木選手が追い込む
- 中嶋選手はふらつき、立っているのがやっと
- 判定の結果、2対1で中嶋選手の勝利
- レフェリーは思わず負けた佐々木康太選手の腕を上げてしまったほど
- おかしな判定に対して、会場では怒号が飛び交った
- 勝利したはずの中嶋選手も判定結果に不快感を覚えたからか、試合後の手を上げる行為を拒んでいる様子が確認される
- 試合後、中嶋選手は佐々木選手に謝罪したことが後に明らかになった
この判定により、「山根会長が元奈良県連盟の会員であるから、もしくは山根氏の息子が奈良県の会員であるから、奈良県出身の選手に有利な判定が下されていたのではないか」という疑惑が浮上することになったのです。
山根氏が「奈良県出身の選手を優遇している」ことを裏付ける証拠となる音声動画は以下の通りです。
「奈良判定」は、日本ボクシング連盟の深い闇を象徴する言葉だと言えるでしょう。
「奈良判定」は名前の通り、奈良県出身の選手が優遇される判定という意味です。
しかし、この発端とされる山根氏は奈良県出身ではありませんので間違えないように注意しましょう。
「奈良判定」の重要人物、山根明氏とは
山根氏は、以下のような経歴をもつボクシング指導者です。
年 | 出来事 |
---|---|
1939年 | 大阪府堺市出身 |
1944年 | 韓国に渡り韓国国籍を取得 |
1949年 | 日本に密入国する |
1980年 | 日本国籍を取得 |
1991年 | 日本ボクシング連盟理事に就任 |
2011年 | 日本アマチュアボクシング連盟会長に就任 |
2012年 | 日本アマチュアボクシング連盟終身会長に就任 |
2018年8月8日 | 日本アマチュアボクシング連盟終身会長を辞職 |
山根会長が奈良県の日本ボクシング連盟理事に就任したころ、奈良県はアマチュアボクシングにおいて優秀とはいえない成績でした。
しかし、山根氏が事務局長・会長を勤めるようになってから、奈良県のボクシングの成績は上昇し、有名選手を輩出するまでになりました。
このことから、山根氏と奈良県の結びつきは強くなり、奈良県だけ優遇する「奈良判定」が生まれてしまったとされています。
山根氏の圧力
山根氏は、日本ボクシング連盟の終身会長に就任した頃には、ボクシング関係者すべてに対して、絶大な権力を持っていたと言われています。
審判員からは、「逆らうことなどはありえない絶対的な存在」である一方、「1対1で話しているときは非常に人情的で嫌いにはなれない存在」と言われていました。
山根氏は、審判員の間で以下のような噂がありました。
- 「奈良判定」を強要されるため、奈良県の選手が出場する試合のジャッジを嫌がる審判員もいた
- 「奈良判定」に従わないと、試合後に山根氏から呼び出され「ジャッジがおかしい」と指摘された
- 指摘がエスカレートしていき、暴言を浴びせられたり、恫喝された
- 次の日には審判員がいなくなったり大会に呼ばれなくなったりした
- 恫喝や脅迫によって、「奈良判定」をせざるを得ない状況に追い込まれた人もいた
山根氏の問題
各メディアで取り上げられた山根氏の問題は、以下のようなものがあります。
- 「山根会長へのおもてなし」という過剰とも取れる特別待遇
- 山口組系暴力団に出入りをしており、元組長と舎弟関係にあった
- 息子・山根昌守氏がほとんどボクシング経験がないにも関わらず、日本ボクシング連盟の副会長に就いていたため、コネ疑惑が浮上
「奈良判定」は、山根氏の横暴な体制が浮き彫りになり失脚したきっかけとなったと言えるでしょう。
山根氏の発言
山根氏は以下のような発言をしています。
- 「世界の〜」をよく使用
- 「歴史の〜」をよく使用
- 僕はカリスマ山根と呼ばれている
- 選手たち、高校生にも私のファンがおるんですよ
- 私は、歴史に生まれた、歴史の男でございます
- 引退しろって誰に言うてんねん。俺は歴史を持ってる男や!連盟を改革してきている男や!
- (補助金不正流用について)調査したらええねん!そんな罪ない!
- 世界でカリスマ山根と呼ばれている男ですから
- JOCに行って腹切って死ぬ
- 男山根(おとこやまね)
「男山根」とは、「奈良判定」が流行語大賞にノミネートされたことを受けて、山根氏がTV番組の独占インタビューで発言した言葉です。
「奈良判定」が批判的な意味をもつため、山根氏は不満を抱いていたようです。
そのため、自身にまつわる言葉で流行語対象に選ぶなら「男山根」と返答しました。
「奈良判定」のその後
「奈良判定」騒動の後、山根氏は2018年9月にはバラエティ番組に出演したり、2019年2月には「無冠の帝王ch」という名称のYoutubeチャンネルを開設したりと精力的に活動しています。
2018年9月、マチュアボクシング協会では「日本ボクシングを再興する会」の発起人のひとりでもある、宮崎県連の内田貞信氏が会長に選ばれました。
しかし、内田氏は逮捕歴があるなどの報道もあり、日本ボクシング協会が再興することができるか今後も注目されそうです。
「奈良判定」の代表的な試合に出ていた選手は、その後以下のような活動をしています。
- 佐々木康太選手
- 中嶋一輝選手
それぞれ見ていきましょう。
佐々木康太選手のその後
「奈良判定」で不当に負けたとされる佐々木康太選手は、現在はボクシングの練習を再開しているそうです。
「奈良判定」が明るみになった試合のあと、ボクシングに関するものはすべて人にあげるなどして、手放してしまったそうです。
しかし、世間で「奈良判定」が明るみになり、ボクシング協会が再興に向かっているため、ボクシングの練習を再開したそうです。
中嶋一輝選手のその後
「奈良判定」で勝ったとされる中嶋一輝選手は、現在プロボクサーとして活躍しています。
井上尚弥選手や八重樫東選手などの世界チャンピオンが所属している大橋ジムに所属しています。
「奈良判定」への反応
「奈良判定」にはさまざまな意見が寄せられました。
村田諒太選手のコメント
村田諒太選手は、以下のような経歴をもつプロボクサーです。
1986年 | 奈良県奈良市出身 |
---|---|
2012年 | ロンドン五輪で金メダル |
村田選手は、日本ボクシング連盟が日本スポーツ振興センターからの助成金を不正流用した疑いがかけられていることに対して、2018年8月2日にFacebook上で批判のコメントをしました。
村田選手が日本ボクシング連盟に加入してた時期と、山根氏が会長だった時期はずれているため、村田選手が「奈良判定」を受けたことはありません。
しかし、山根氏と村田選手の間には以下の出来事からトラブルがあったとされています。
山根昌守氏は経歴上ボクシング経験も指導経験もない人物ですが、なぜかオリンピックの決勝戦という重要な場面で急遽セコンドを務めました。
この急遽行われたセコンドの交代に、村田選手はまったく納得しておらず、山根氏が権力を濫用して強制したものではないかと言われています。
ネット上の反応
ネット掲示板『5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)では、以下のような感想が述べられました。
- 山根明氏やボクシング連盟の腐敗に対する批判的な意見
- 「ボクシングはどちらかがKOするまで試合すればいい」などの意見
「奈良判定」の例文
「奈良判定」は以下のような例文があります。
- この試合の結果は奈良判定だと疑わずにはいられない。
- 奈良判定の最大の被害者は、勝利のために努力している選手たちだ。
- 奈良判定が事実だとすれば、ボクシングそのものを侮辱している行為だ。
「奈良判定」の言い換え表現
「奈良判定」は以下のような言葉に言い換えることもあります。
- 山根マジック
- 山根判定
それぞれ見ていきましょう。
「山根マジック」の意味
「山根マジック」とは、「日本ボクシングを再興する会」代表である、新潟県連理事長・鶴木良夫氏がTV番組で発言した言葉です。
「奈良判定」という言葉は、何の関係もない奈良県出身の選手たちに迷惑をかけてしまうと言われていました。
そのため、識者の間では別の表現はないかと話し合われました。
鶴木良夫氏は「奈良判定」という表現を謝罪したうえで、今後は「山根マジック」と表現すると発言しました。
「山根判定」の意味
「山根判定」とは、落語家の立川志らくさんがTV番組で発言した言葉です。
立川志らくさんは、「奈良判定」が奈良県の人たちがかわいそうとしたうえで、「山根判定」という言葉を提案しました。
「奈良判定」の関連語
「奈良判定」には以下のような関連語があります。
- 恐怖政治
- 日韓W杯誤審疑惑
それぞれ見ていきましょう。
「恐怖政治」の意味
「恐怖政治」とは、権力者が自分に反対するものを暴力的な手段により弾圧する政治や行いのことです。
「恐怖政治」は暗黒政治ともいいます。
「奈良判定」は本アマチュアボクシング連盟終身会長だった山根氏が権力を濫用したという疑惑ですので、「恐怖政治」だったといえます。
「日韓W杯誤審疑惑」の意味
2002年のワールドカップで、スペインと韓国の試合で誤審によりスペインが敗退した出来事です。
明らかな誤審だったため、審判員が買収されているのではないかという疑惑がもたれました。
「奈良判定」とよく似た出来事だといえます。
ボクシング以外の「奈良判定」
「奈良判定」はボクシング業界での出来事が由来となった言葉です。
ボクシングのほかにも、以下のようなスポーツで「奈良判定」が行われていたと言われています。
- Jリーグ
- 国体の剣道
それぞれ見ていきましょう。
Jリーグの「奈良判定」
日本プロサッカーリーグのひとつであるJリーグでも、「奈良判定」という言葉が話題になりました。
Jリーグの「奈良判定」は、奈良県や山根氏とは一切関係はありません。
Jリーグにおいて、奈良竜樹選手のファウルが正当にジャッジされなかったのではないかという疑惑です。
奈良選手の名字にちなみ、「奈良判定」と呼ばれるようになりました。
国体の剣道の「奈良判定」
国民体育大会剣道競技でも、「奈良判定」のように、他人の心情をおしはかって勝敗を決めているのではないかという疑惑が浮上しました。
国体の剣道では、毎年開催地のチームがほとんどの部門で優勝しています。
このため、ネット掲示板『なんJ』では、国体の剣道でも「奈良判定」があるのではないかという議論が交わされています。
補足:「奈良判定」と同年に起きた不祥事
「奈良判定」が発覚した2018年には、スポーツ業界の不祥事が多数報道されました。
2018年に発覚したスポーツ業界の不祥事には、以下のようなものがあります。
5月 | 日本大学フェニックス反則タックル問題 |
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8月 | 日本大学応援リーダー部が監督からパワハラ被害 |
8月 | 日本体操協会のパワハラ疑惑 |
8月 | 男子バスケットボール日本代表の買春行為が発覚 |
8月 | 全日本剣道連盟の長年の不正行為が発覚 |
それぞれ見ていきましょう。
「日本大学フェニックス反則タックル問題」とは
「日本大学フェニックス反則タックル問題」とは、日本大学と関西学院大学のアメリカンフットボール部の試合で起こった問題です。
試合中に、日本大学の選手が関西学院大学の選手に反則行為をしました。
これは、監督が「やらなきゃ意味ないよ」など選手を脅したためだとされ、監督は除名されました。
この反則行為は「悪質タックル」と呼ばれます。
「日本大学応援リーダー部が監督からパワハラ被害」とは
2018年8月、日本大学応援リーダー部の部員が女性監督のパワハラ被害を申し立てました。
申し立てを受けて、女性監督は解任されることになりました。
「日本体操協会のパワハラ疑惑」とは
2018年8月、体操女子オリンピック選手が、体操協会のパワハラを告発しました。
選手に対して暴力行為をしたとして、監督が処分を受けました。
しかし、暴力行為を受けた選手が監督への処分が重いとして、体操協会のパワハラを告発する会見を開いたことで騒ぎが大きくなりました。
「男子バスケットボール日本代表の買春行為が発覚」とは
2018年8月、男子バスケットボール日本代表選手4人が、アジア競技大会中に現地で買春行為していたことが発覚しました。
買春行為が発覚した選手は、1年間公式試合に出場不可能になりました。
「全日本剣道連盟の長年の不正行為が発覚」とは
2018年8月、全日本剣道連盟による昇段審査などで、審査員に金銭を渡していたことが発覚しました。
全日本剣道連盟は「不正が長年存在した」と事実を認めました。
これによって、関わっていた審査員と指導者が処分を受けました。
「奈良判定」のまとめ
以上、この記事では「奈良判定」について解説しました。
読み方 | 奈良判定(ならはんてい) |
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意味 | アマチュアボクシングの試合で奈良県出身の選手が優遇される判定 その判定に関連する疑惑や告発 |
言い換え表現 | 山根マジック、山根判定 |
関連語 | 恐怖政治、日韓W杯誤審疑惑 |
同年に起きた不祥事 | 日本大学フェニックス反則タックル問題 日本大学応援リーダー部が監督からパワハラ被害など |
「奈良判定」は、ひとりの人間が権力を握り過ぎたばかりに起きた、あってはならない問題だと言えるでしょう。
「奈良判定」という言葉がなくなり、公平にスポーツを楽しめるとよいですね。