みなさんは「羊」と「山羊(やぎ)」の違いがわかりますでしょうか。
「そんなの簡単だよ」
と思う人もいるかもしれません。おそらく、毛がモコモコしているのが「羊」で、毛が短いのが「山羊」だと思っている人も多いのではないでしょうか。
では、上の画像は「羊」でしょうか、それとも「山羊」でしょうか。
実はコレ、「羊」なんです。「山羊」だと思った人も多いと思います。
ということで、今回は思ったより簡単ではない「羊」と「山羊」の違いについて解説していきたいと思います。
結論:種が違う
一方、「山羊」はウシ科ヤギ亜科ヤギ属の動物です。
「羊」をもっと詳しく
羊はウシ科ヤギ亜科ヒツジ属の動物です。
ここからは羊の体の特徴とそのほかの特徴について解説していきたいと思います。
羊の体の特徴
羊の特徴として多くの人があげるのは、あのモコモコした毛ではないでしょうか。確かに、多くの羊の毛はカールしていて、モコモコです。しかし、これには例外があり、毛が短い羊もいます。
また、毛を採取するために飼われている羊は、季節によっては毛が刈られていて、モコモコではありません。
次に、羊は山羊と違って尾が長いことが多いでしょう。
ただ、これは野生の羊に限った話で、毛を採取するために飼育されている羊のほとんどは尾が短くなっています。これは、生後間もなく第二尾椎(だいにおつい)という場所で尾を切り落としてしまうからです。
なぜなら、長い尾がついたままだと、そこに汚れが付着した時に、周りの毛を汚してしまうからです。これでは毛を採取する時に不都合ですよね。
なので、実際には尾の長さで羊と山羊を判別するのは難しいでしょう。
また、多くの羊にはあごひげがないという特徴があります。しかし、たまにあごひげがある羊もいます。
そして、角はグルグルと渦をまいて伸びていることが多いでしょう。しかし、これにも例外はあり、そもそも角が生えていない羊もいます。
また、遠くからではわかりにくいですが、羊には分泌腺が3つほどあり、そこから羊同士がわかるにおいを出しています。
そして、この分泌腺は、羊が集団行動をする際に役立っています。
羊のそのほかの特徴
羊のそのほかの特徴としてはまず、草食動物であることがあげられます。そして、羊は草を好んで食べ、そのほかの食べ物を消化するのはあまり得意ではありません。
そのため、木の実や、木の枝などはあまり食べません。そして、羊を飼育するためには草原がなくてはいけません。
ちなみに、羊は土地を肥沃(ひよく)にする動物だと言われています。
羊がきれいに牧草を食べた後に、牧草の種をまき、羊のフンを肥料として与え、それを羊が踏み固めていき、牧草が育った後に食べるということが繰り返されるので、どんどん土地が肥えていくのです。
また、羊は温厚でおとなしい性格をしていて、臆病です。そのため、単独行動を行うことはなく、群れて行動しています。
そして、羊は毛を採取するために飼育されていることが多いですが、その毛はウールと呼ばれています。この名前を聞いたことがある人も多いと思います。
ウールは保湿性、保温性に優れているので、防寒着などによく使われ、多くの人に好まれています。
また、羊の乳を飲み物として利用する場合もあります。羊の乳を飲んだことがある人はあまりいないと思いますが、とても脂肪分が多く、濃厚な味わいをしているそうです。牛乳に生クリームを加えたようなコッテリした味わいで、あまりグビグビとは飲めないのだとか。
ちなみに、羊は英語では “sheep” と呼ばれます。
そして、羊は眠れない時に数える動物として有名ですよね。これは、 “sheep” が英語で「眠る」という意味の言葉である “sleep” と似ているからという理由らしいです。
なので、日本語で数えてもあまり意味はないのかもしれません。
「山羊」をもっと詳しく
山羊はウシ科ヤギ亜科ヤギ属の動物です。
山羊も、体の特徴とそのほかの特徴にわけて見ていきましょう。
山羊の体の特徴
まず、身体の特徴としては、多くの山羊は体毛が短くてまっすぐです。しかし、種により、体毛が長い山羊も存在します。
例えば、アンゴラヤギやカシミヤヤギなどです。ちなみに、カシミヤヤギは毛が利用されていています。服の素材として「カシミヤ」を聞いたことがある人もいると思いますが、これはカシミヤヤギの毛からできているのです。
また、多くの山羊は尾が短いでしょう。
そして、あごひげがあり、あごひげがあればそれは確実に山羊です。しかし、あごひげが生えている個体はオスに多く、メスでは生えていないことも多いです。そして、メスオスともにあごひげが生えていない種もあります。
また、角は少し曲がって後ろに伸びています。ちなみに、角がある山羊はそれを武器として用いていて、餌などをめぐって争う時には頭にある角をぶつけあって戦います。
そして、山羊の中には角がない種もありますが、その場合には骨瘤(こつりゅう)というでっぱりがあり、これで羊と山羊を見わけることもできます。ただ、骨瘤は近くで見ないとよくわかりません。
また、肉垂があったらそれは山羊です。肉垂とは耳や頬、あごの辺りから垂れ下がる肉のかたまりのことですが、山羊の場合にはあごにあったり、耳にあったりします。もちろん、山羊の中には肉垂がない種もあります。
山羊のそのほかの特徴
山羊のそのほかの特徴としてはまず、雑食であることがあげられます。基本的には草を食べますが、そのほかにも木の葉や木の芽などを食べ、ドングリをはじめとした木の実は特に好んで食べます。
そして、人間の残飯まで食べることもあります。
また、山羊は紙を食べることでも有名ですよね。ただ、食べるからと言って、山羊に紙は食べさせないほうがいいでしょう。
なぜなら、昔の紙は植物だけでできていたので問題なかったのですが、現在の紙はインクなど、山羊が消化できない物質も含まれているからです。
そして、雑食なのでどんな環境でも食料さえあれば育ちます。そのため、土地が貧しい所では貴重な食料源として飼育されてきた歴史があります。
ただ、食べるものの中には農作物なども含まれるため、過度な数の山羊を放牧してしまうと農作物を食べてしまったり、土地を枯れ荒らしてしまったりすることもあります。
また、山羊は好奇心旺盛で、活発で活動的で、きままで自己中心的で攻撃的です。この性質を生かして羊の群れのリーダーとしてまぜ、それを人間がコントロールすることで羊の群れを統率することもあります。
そして、このような性格からか、高いところに登るのが大好きで、木の上に登ることがある他、種によっては人間でも登るのが難しい絶壁を登っていくこともあります。
ちなみに、山羊も乳が飲み物として利用されることがありますが、その味はあっさりとしています。そして、牛乳より消化に優れているという特色があります。ただ、独特の風味があるので、万人受けするような味ではないかもしれません。
補足:ギープについて
ギープとは、羊と山羊とをかけあわせてできた生き物です。
羊と山羊は属のレベルで異なる生き物であるため、通常は自然交配してもほとんどが妊娠中に死亡するか、死産になってしまいます。
しかし、ごくまれに元気に生まれてくる場合があります。
これが羊と山羊のハイブリッド種であるギープです。
ちなみに、ギープは英語では “GEEP” と表記しますが、これは山羊の英語である “goat” と羊の英語である “sheep” とを組み合わせた表現です。
まとめ
以上、この記事では、「羊」と「山羊」の違いについて解説しました。
- 羊:ウシ科ヤギ亜科ヒツジ属の動物
- 山羊:ウシ科ヤギ亜科ヤギ属の動物
ということで、「羊」と「山羊」を見わける大きなポイントは「しっぽの長さ」と「あごひげの有無」です。これでかなり見わけられると思います。