会社の代表、あるいは一番偉い人、を表す言葉として、「社長」「会長」「CEO」「代表取締役」などがありますが、それぞれどのように違うのでしょう?今回はこれらの役職の違いについて解説していきます。
☆「代表取締役」「社長」「会長」「ceo」の違いをざっくり言うと……
代表取締役 | 株式会社の取締役会の代表で、法的に定められている役職 |
---|---|
社長 | 企業の代表であり、会社における監督・業務執行を行う |
会長 | 社長を退いた人の名誉職 |
CEO | アメリカ企業の業務執行における最高責任者 |
結論:会社法に役職が定められているのは「代表取締役」のみ
「代表取締役」「社長」「会長」「CEO」の違いを分かりやすくまとめたものが以下の表になります。
代表取締役 | 会社法に定められている取締役会の代表 |
---|---|
社長 | 会社のトップであり、会社のあらゆる監督・業務執行を担う |
会長 | 社長を退いた人の名誉職 |
CEO | 会社の業務執行における最高責任者 |
「代表取締役」をもっと詳しく
「代表取締役」とは、会社組織における「取締役会」の代表者のことをいいます。
取締役とは会社の意思決定機関で、様々な方針を決める場所であり、株式会社では必ず置かなければいけない決まりがあります。
取締役会を設置している会社においては、取締役の中から代表取締役を選定しなければならないという決まりがあります。(362条3項)
「社長」、「会長」、「CEO」の中で、会社法に定められている役職で、企業内だけでなく外部的な責任者としての役割も果たすのは「代表取締役」だけで、日本においては最も権限が大きいといえます。
この代表取締役が、会社によっては、会長の場合もあれば、社長の場合もあるし、CEOの場合もあるという事です。
会社外の契約などにおいても、法的に役割が定められている代表取締役は、業務を執行し、単独で会社を代表して契約や裁判などの行為をする権限を持ちます。
代表取締役は、一人とは限らず複数名いることもあり、その場合は、代表取締役が互いに協議することなく、それぞれが代表として業務を執行することができます。
新規プロジェクトの案が出た場合など、その案に関する意思決定は会社内部の代表である「社長」が行いますが、そのプロジェクトを進める上で、取引先との契約や多額の借り入れが必要な場合などな、会社法に定められている「代表取締役」が執行します。
スムーズな経営を行えるという意味でも、社長が代表権を持ち、「代表取締役社長」となっているケースが大半です。
代表取締役という肩書きが付くことで、法的にも根拠のある立場になる、ということですね。
「社長」をもっと詳しく
「社長」とは、会社が定める職制において、会社外に対して会社を代表するとともに、会社内で全体の業務執行を指揮する役職です。
あくまで会社が定める職制に基づく名称でありるため、会社法には社長の設置、選任及び解任、役割・権限・義務等に関する規定はなく、商業登録においても使われません。
たとえば起業をする際に法人登記をする場合にも、そこに「社長」いう表記はありません。
社長は実質的にはトップとして業務を執行することが一般的ですが、外部に対する責任者という立場ではなく、会社法における日本の会社組織のトップ、という意味合いの正式な役職名は、「代表取締役」となります。
「社長」というのは、あくまで各会社が独自に定めている社内外の呼び名、ということですね。
会社法に表見代表取締役、表見代表執行役の規定があるのですが、これは法的には代表権を有していない社長が、あたかも代表権があるように振る舞い取引をした場合の、取引相手の安全を保証する法律です。
このように社長には権限の法的な根拠がないため、多くの株式会社では社長が「代表取締役」を兼ねて代表取締役社長となり、会社に関わるすべての責任を持っていることが多いです。
「会長」をもっと詳しく
「会長」とは、「会の長・責任者を指す言葉であり、その団体・組織を代表したり、あるいは会務を総理する役職の人」のことを指し
ます。
会社法で定められた役職ではなくあくまで社内での呼称であるため、会社によって役職の意味合いは異なりますが、基本的に社長の上に置かれる役職で、社長を退いた人の名誉職となる場合が多いです。
一般的に会長は会社の中のトップとされていますが、会社によっては会長がいなかったり、社長の方が強い権限を持っている場合もあります。
法的に根拠のある「代表取締役」の肩書きを会長、社長のどちらが持っているかどうかが大きく関係してきます。
社長が代表権を持ち代表取締役社長となっている場合は、会長があくまで名誉職で発言権はない、ということもあるのです。
会長が創業者であったり、現社長の父親である場合などは、その人が代表取締役会長でなくても社長より大きな権限を有しますが、基本的に会長が代表権を持っている場合と持っていない場合で大きく変わる、ということですね。
会長の役割としては、社長の選任、その他の人事に加わることもありますが、基本的に実務からは離れ、主に対外的な経済活動を行います。
社長と一緒に重要な接待に参加したり、自身の社長の経験をもとに社長のアドバイザーの役割を果たしたり。
会長は会社の絶対的な存在であり、社長は会社の事業計画をはじめ、会社の資金繰りなど会社に関わる全ての事を会長に報告します。
このように立場がしっかり分けられ上下関係があることで社内で役割分担ができたり、会社外における印象にインパクトを与えられる点は、会社に会長を置くメリットの1つと言えるかもしれません。
しかし一方で、名誉会長という形で業務面で会社にほとんど関わらない関わらない会長がいたり、社長と会長の立場や役割が同じ企業もあります。
今では珍しくないことですが、二人で起業をしたような会社の場合はそうですね。
社長が2人というのは対外的に混乱を生むため会長と社長とに分けるものの、両者の立場や役割は同じ、ということになります。
基本的には会長の方が社長よりも上の立場とされていますが、法律に定められた役職名ではないため、会社によって会長の立ち位置にも違いがあるということですね。
「CEO」をもっと詳しく
「CEO」(=Chief Executive Officer)は、日本語で「最高経営責任者」という意味があり、会社で一番の決定権を持つ人のことです。
主にアメリカの企業で使われる肩書きで、業務執行役員の代表として経営方針や経営戦略の決めます。
アメリカ型の企業では、企業の所有と経営は分離して考えられており、企業の所有者である株主を代理する取締役会が、経営など業務を行う執行役員を任命・監督する形をとっています。
この執行役員のトップが「CEO」である、ということです。
アメリカ企業にも社長(=president)、会長(=chairman)が存在し、CEOはそれとは異なる概念ですが、取締役会会長とCEOは同一人物が兼ねていることが多いです。
企業のCEOは経営を行うにあたり大きな権限があるため成果を上げれば莫大な報酬を得ますが、そうでないと判断された場合は取締役会により解任させられます。
経営のトップであり権限の強い立場ですが、その分責任もリスクも大きいということですね。
日本でも公的にCEOと名乗る経営者も増えてきましたが、日本の法律では特にCEO設置の義務はありませんので、日本の企業のCEOはあくまで会社独自の肩書きということになります。
日本とアメリカとでは企業の形態も違うため、代表の役割や肩書きも変わってくるということですね。
CEOと社長の違いはアメリカと日本の会社形態の相違によるものですから、本当の意味でのCEOはアメリカ、社長は日本にしかいないと言えるでしょう。
まとめ
以上、この記事では、「代表取締役」「社長」「会長」「CEO」の違いについて解説しました。
最後にもう一度、下記の表を確認しましょう。
代表取締役 | 株式会社の取締役会の代表で、法的に定められている役職 |
---|---|
社長 | 企業の代表であり、会社における監督・業務執行を行う |
会長 | 社長を退いた人の名誉職 |
CEO | アメリカ企業の業務執行における最高責任者 |
この中で、会社法に役職が定められているのは「代表取締役」のみで、「社長」、「会長」、「CEO」はあくまで社内の中での役職名であるということです。
「CEO」は日本においては法律的な取り決めはありませんが、日本でいう「代表取締役」と同じようなものだと捉えるとわかりやすいかもしれません。