「腋」と「脇」の決定的な違いは、「腋は “両腕の付け根の下” だけを表すのに対して、脇にはその他の意味もある」という点です。
両方とも「ワキ」と読むため、使い分けに迷ったことがある方が多いのではないでしょうか。
この記事では、どちらを使っても問題ない場合や、脇のみを使う場合などについて、詳しく解説します。
☆「腋」「脇」の違いをざっくり言うと……
腋 | 脇 | |
---|---|---|
意味① | 両腕の付け根の下 | |
意味② | ー | 何かのすぐ傍 |
意味③ | ー | 目的からズレる |
意味④ | ー | 主役を助ける役割 |
このページの目次
結論:「腋」と「脇」の違い
「腋」と「脇」の違いは、「腋は “両腕の付け根の下” だけを表すのに対して、脇にはその他の意味もある」という点です。
両腕の付け根の下
- 両腕の付け根の下
- 何かのすぐ傍
- 目的からズレた方向
- 主役を助ける役割
「脇」には「両腕の付け根の下」だけでなく、「何かのすぐ傍」「目的からズレた方向」「主役を助ける役割」という意味もあるのです。
「腋」と「脇」のどちらを使ってもいい場合
身体のワキ(両腕の付け根の下)を漢字で書く場合、「腋」と「脇」のどちらを使っても問題ありません。
「腋」と「脇」を区別することもできる
身体のワキを漢字で書く場合に、「腋」と「脇」を厳密に使い分けたいときには、以下のように区別しましょう。
- 常用漢字を使うなら「脇」
- 医学的には「腋」
まず、身体のワキを、より簡単な漢字で表したい場合は、「脇」を使いましょう。
「脇」が常用漢字(じょうようかんじ)であるのに対して、「腋」は常用漢字ではないからです。
一方、医学的な意味で、正確に身体のワキを表したいときは「腋」を使いましょう。
医療において、身体のワキに関するものには、すべて「腋」という字を使うからです。
国が制定した、社会生活での漢字使用の目安。
「脇」のみを使う場合
通常、身体の “ワキ” は、「腋」と「脇」のどちらで書いても問題ありません。
しかし、以下の場合には、「腋」ではなく「脇」を使います。
- 慣例として「脇」を使う場合
- 「何かのすぐ傍」という意味で使う場合
- 「目的からズレる」という意味で使う場合
- 「主役を助ける役割」という意味で使う場合
以下、1つずつ解説します。
①慣例として「脇」を使う場合
以下の表現では、「腋」ではなく「脇」を使うのが一般的です。
- 脇(わき)に挟む
ワキの下に何かを挟むこと - 脇(わき)に抱える
ワキを使って、何かを持つこと - 小脇(こわき)に抱える
ワキを使って、ちょっと何かを持つこと - 脇を締める
二の腕から肘あたりまでの部分を、体の側面につけること
(ワキが開かないようにすること) - 脇が甘い
注意不足であること
②「何かのすぐ傍」という意味で使う場合
「何かのすぐ傍」という意味は、「脇」のみにあるものです。
したがって、この意味が元になっている言葉は「腋」では表せず、「脇」でのみ表すのです。
「脇」を「何かのすぐ傍」という意味で用いる場合、主に以下のような表現があります。
- 〜の脇
〜のすぐ傍
例:「書類を机の脇に置いておきます。」 - 脇付(わきづけ)
手紙において、宛名の横に書き添える敬意の言葉 - 外脇付(そとわきづけ)
手紙の内容を端的に説明する言葉
例:「親展」「○○在中」など
※脇付の左下に書く
③「目的からズレる」という意味で使う場合
「目的からズレる」という意味は、「脇」のみにあるものです。
したがって、この意味が元になっている言葉も「腋」では表せず、「脇」でのみ表します。
「脇」を「目的からズレる」という意味で用いる場合、主に以下のような表現があります。
- 脇道(わきみち)に入る
運転中や歩行中などに、メインではない道路に入ること - 脇道に逸れる(それる)
話が本題とは違う方向に進むこと
④「主役を助ける役割」という意味で使う場合
「主役を助ける役割」という意味は、「脇」のみにあるものです。
したがって、この意味が元になっている言葉も「腋」では表せず、「脇」でのみ表します。
「脇」を「目的からズレる」という意味で用いる場合、主に以下のような表現があります。
- 脇役(わきやく)
劇や実生活において、主役となる人をサポートする役割
「脇」の類義語
「脇」の類義語は、3つのパターンに分けられます。
- 「何かのすぐ傍」という意味のもの
- 「目的からズレた方向」という意味のもの
- 「主役を助ける役割」という意味のもの
類義語①「何かのすぐ傍」という意味のもの
「何かのすぐ傍」という意味の類義語には、以下のようなものがあります。
- 傍ら(かたわら)
- 横
類義語②「目的からズレた方向」という意味のもの
「目的からズレた方向」という意味の類義語には、以下のようなものがあります。
- 余談(よだん)
本題ではない話 - 横道(よこみち)
本道ではない道路
または、本題ではない話
類義語③「主役を助ける役割」という意味のもの
「主役を助ける役割」という意味の類義語には、以下のようなものがあります。
- 端役(はやく)
主役ではない役
ここまでに紹介した言葉は、あくまでも「脇」の類義語です。
身体のワキのみを指す「腋」には、類義語がありません。
「脇」の対義語
「脇」の対義語は、3つのパターンに分けられます。
- 「真ん中である」という意味のもの
=「何かのすぐ傍」という意味での「脇」の対義語 - 「筋が通っている」という意味のもの
=「目的からズレた方向」という意味の「脇」の対義語 - 「主役」という意味のもの
=「主役を助ける役割」という意味の「脇」の対義語
以下、1つずつ解説します。
これから紹介する言葉は、あくまでも「脇」の対義語です。
身体のワキのみを指す「腋」には、対義語がありません。
対義語①「真ん中である」という意味のもの
「真ん中である」という意味の対義語には、以下のようなものがあります。
- 中央
- 中心
上記の言葉は、どちらも「ちょうど真ん中にあること」を表します。
対義語②「筋が通っている」という意味のもの
「筋が通っている」という意味の対義語には、以下のようなものがあります。
- 本題
話題の核となる内容 - 本筋(ほんすじ)
正当な筋道
対義語③「主役」という意味のもの
「主役」という意味の対義語には、以下のようなものがあります。
- 仕手(して)
能や狂言(きょうげん)における主人公 - 中心人物
リーダーのような役割をもつ人
「腋」と「脇」の英語訳
両腕の付け根の下を表す場合、「腋」と「脇」はどちらも同じ英語訳になります。
- armpits
(腕の付け根の下) - underarms
(腕の下)
「脇」がもつ、「両腕の付け根の下」以外の意味には、それぞれ以下のような英語訳を使うことができます。
- sides
(何かのすぐそば) - to wander away from the subject
(目的からズレる) - to support 〜
(〜を助ける)
「腋」と「脇」の成り立ち
「腋」と「脇」は、漢字の成り立ちにも違いがあります。
参考までに知っておきましょう。
「腋」の漢字の成り立ち
「腋」という字は、「月」と「夜」の二字から成り立っています。
- 月
身体の太りぐあい - 夜
身体の太りぐあいを表す「月」
+身体のワキを表す「亦」
「夜」をさらに分解すると、「月」と「亦」の二文字から成り立っています。
この「亦」に、両腕の付け根の下という意味があるのです。
「亦」の二箇所の点が、腕の付け根を表しているのです。
「脇」の漢字の成り立ち
「脇」は、「月」と「劦」の二字から成り立っています。
- 月:身体の太りぐあい
- 劦:力を加える
「月」と「劦」を組み合わせると、「身体の両側から力を入れて、何かを挟むもの」という意味になります。
この成り立ちから、「脇」は、何かを挟むことができる「ワキ」を表すようになったのです。
また、「劦」の「力を加える」という意味から派生して、「主役の人に力を与えて、サポートする役割」という意味も生まれました。
「腋」と「脇」の違いのまとめ
以上、この記事では、「腋」「脇」の違いについて解説しました。
腋 | 脇 | |
---|---|---|
意味① | 両腕の付け根の下 | |
意味② | ー | 何かのすぐ傍 |
意味③ | ー | 目的からズレる |
意味④ | ー | 主役を助ける役割 |
「腋」と「脇」を迷うことなく、正しく使い分けられるようになりましょう。