カラスの行水とは「入浴時間がとても短い」という意味です。
「なぜカラスの行水と言うの?」「英語ではどのように表せば良いのだろう」といった疑問を抱いている人が多いのではないでしょうか。
この記事では、カラスの行水の意味や由来、類義語、対義語、英語訳などについて詳しく解説します。
このページの目次
「カラスの行水」の意味
入浴時間がとても短い
カラスの行水とは、入浴時間がとても短いことです。
「ゆっくりお風呂に入らないと、疲れが取れない」「入浴時間が短いと、体の汚れをしっかり落とせない」というネガティブな意味合いで使われることが多いです。
「カラス」の部分を漢字にして、「烏の行水」と表記することもあります。
なお、「行水」の読み方は「ぎょうずい」であるため、「ぎょうすい」と読まないようにしましょう。
「行水」とは
行水とは、桶やたらいを使って体を洗い流すことです。
「カラスの行水」での「行水」は入浴全般を広く指すため、「カラスの行水」を用いるうえでは、「桶やたらいを使っているかどうか」などを考える必要はありません。
ちなみに、「行水」はもともと仏教での用語でした。
宗教的な行事の前に、水で手を洗ったり、口をすすいだりして身を清めることを「行水」と呼んでいたのです。
俳句において、「行水」は夏の季語として使われます。
夏の暑い日は、水を浴びることで汗を流したり、涼んだりすることがあるからです。
「カラスの行水」の誤用
「カラスの行水」のよくある誤用として、以下の2つがあります。
- 鳥の行水
- スズメの行水
誤用①鳥の行水
鳥の行水は、カラスの行水の誤用です。
「カラス」を漢字にすると、「烏(カラス)」となります。
「烏(カラス)」という字と、「鳥(トリ)」という字が似ているため、「鳥の行水」という誤用を使ってしまう人が多いのです。
正しくは「烏の行水」ですから、注意しましょう。
誤用②スズメの行水
スズメの行水も、カラスの行水の誤用です。
スズメの行水と、別のことわざ「雀(すずめ)の涙」を混同する人が多いのです。
「雀の涙」とは、「ごくわずかなもののたとえ」です。
スズメの行水という言葉はありませんから、気をつけましょう。
「カラスの行水」の使い方・例文
「カラスの行水」は、主に以下のようなかたちで使います。
- カラスの行水だ
- カラスの行水になる
- カラスの行水は〜
実際の例文を見てみましょう。
- 彼は風呂嫌いで、まさにカラスの行水だ
- 普段は忙しく、カラスの行水になりがちだ。
- カラスの行水はやめて、今日はゆっくり温泉を楽しんでください。
なお、「カラスの行水」は、文脈やシチュエーションによって、「具体的に何の時間が短いのか」という点が微妙に異なります。
湯船につかる時間を指すこともあれば、浴室に入ってから出てくるまでの時間を指す場合もあります。
「カラスの行水」の由来
「カラスの行水」は、カラスの「水浴びの時間が短い」という習性に由来します。
photo by Andy Whittle
カラスは、体についた汚れを落とすために、川などで水を浴びる習性があります。
カラスの水浴び時間は、およそ1~3分と言われています。
人間に置き換えて考えると、数分間の入浴は非常に短いですよね。
このことから、入浴時間が短い人を、カラスの水浴びに例えて、「カラスの行水」と言うようになったのです。
ちなみに、スズメやハトの水浴びは数十秒で終わってしまいます。
カラスよりも水浴びの時間が短いのです。
※水浴び時間が短いからといって、「スズメの行水」「ハトの行水」とは言いません。
「カラスの行水」の類義語
カラスの行水には以下のような類義語があります。
サッと入浴すること
※「ひとふろ」と読む場合もある
「ひと風呂」は、「浴びる」という言葉と一緒に使われます。
- さて、ひと風呂浴びてくるか。
- 先ほどひと風呂浴びたので、今は涼しい。
- 朝起きて、ひと風呂浴びた。
「ひと風呂」は、まれに、「じっくり湯船につかる」という真逆の意味で使う場合もあります。
「カラスの行水」の対義語
カラスの行水には以下のような対義語があります。
- 腰抜け風呂(こしぬけぶろ)
入浴時間が長いこと - 垢も身の内(あかもみのうち)
入浴時間が長いこと
上記の対義語は、どちらも、入浴時間が長すぎる人に対して、ネガティブな意味で使います。
「腰抜け風呂」の意味を詳しく
「腰抜け風呂」は、「“腰が抜けて、風呂場から出られなくなったのではないか” と思うほど、入浴時間が長い」ということを表します。
入浴時間が長い人を注意したり、からかったりするときに使います。
「垢も身の内」の意味を詳しく
「垢も身の内」は、「垢も、元々は体の一部なのだから、そこまで入念に体を洗わなくても問題ないよ」ということを表します。
「腰抜け風呂」と同じく、「垢も身の内」も、入浴時間が長すぎる人をたしなめるときに使います。
「カラスの行水」の英語訳
カラスの行水を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a quick bath
(素早い入浴) - a quick dip
(素早い入浴) - a hurried bath
(急いだ入浴)
“a quick bath” を用いた例文
“a quick bath” を用いた例文には、以下のようなものがあります。
- His bath was like a quick bath.
(彼の入浴は、まるでカラスの行水のようだ。)
“a quick dip” を用いた例文
“a quick dip” を用いた例文には、以下のようなものがあります。
- My bath is always just a quick dip in the tub.
(私はいつも、カラスの行水をしている。) - She had a quick dip in bath.
(彼女はカラスの行水をした。)
“dip” は、「ちょっと浸す」という意味です。
“a hurried bath” を用いた例文
“a hurried bath” を用いた例文には、以下のようなものがあります。
- I took a hurried bath.
(私は、カラスの行水をした。) - Don’t take a hurrid bath !
(カラスの行水をしないで。)
「カラスの行水」をそのまま英語に訳すと、“crow’s bath” (カラスの入浴) となります。
しかし、“crow’s bath” という英語では、「入浴時間が短い」という意味は伝わらないため、注意しましょう。
「カラスの行水」になる要因
カラスの行水になる要因は、人それぞれです。
傾向としては、おもに以下のようなものが挙げられます。
- 入浴が面倒
- 忙しく、入浴時間を充分に確保できない
- 短い入浴で、水道代などを節約したい
- 次に入浴する人を待たせられない
補足:鳥の名前を用いた言葉
「カラスの行水」のほかにも、鳥の名前を用いた言葉はたくさんあります。
参考までに覚えておきましょう。
- 鷺(さぎ)を烏
間違った主張を押し通そうとすること - 闇夜(やみよ)に烏 雪に鷺(さぎ)
見分けがつかないこと - 闇に烏
見分けがつかないこと - 似たものは烏
よく似ていること - どこの烏も黒さは変わらぬ
どの土地に行っても、目新しいものはないこと - 今鳴いた烏がもう笑う
今まで泣いていた人が、すぐに機嫌を直して笑う - 鳩が豆鉄砲を食ったよう
思いがけない出来事に驚くこと
補足:カラスの基本知識
カラスに関する基本的な知識についても、おさえておきましょう。
カラスのイメージ
現代においてカラスは、悪い印象を抱かれやすい動物です。
たとえば、物語などでは、「不吉の象徴」「魔女の手先」といった存在で描かれることがあります。
また、都市部などでゴミを漁るカラスが多いため、カラスを嫌う人も多いです。
しかし、神話では「神の使い」とされていた点や、知能が非常に高い点をふまえると、神聖で優れた動物と捉えることもできます。
カラスの種類
カラスは、「スズメ目カラス科カラス属」に分類されます。
世界中に生息している鳥です。
日本には、合計で7種類のカラスがいます。
種類名 | 体長 | 特徴 |
---|---|---|
ハシブトガラス | 56cm | カーカーと鳴き、都市部にも多数生息する |
ハシボソガラス | 50cm | ガーガーと鳴き、農村部でよく見られる |
コクマルガラス | 30~33cm | キューキューと鳴き、首から腹にかけての色が白い |
ミヤマガラス | 44~47cm | ガーガーと鳴き、他の種類のカラスとも群れを作る |
ワタリガラス | 60~65cm | カポポッと鳴き、冬に北海道で見られる |
ホシガラス | 35cm | 茶色い羽毛に白斑点模様があり、山岳で見られる |
カチガラス | 45cm | 九州地方の天然記念物で、カシャカシャと鳴く |
「カラスの行水」のまとめ
以上、この記事では「カラスの行水」について解説しました。
読み方 | カラスの行水(ぎょうずい) |
---|---|
意味 | 入浴時間がとても短い |
由来 | カラスの水浴び時間が短いことから |
類義語 | ひと風呂 |
対義語 | 腰抜け風呂、垢も身の内など |
英語訳 | a quick bath(素早い入浴)、a quick dip(素早い入浴) |
総務省が2016年に実施した調査によると、日本の平均入浴時間は、男性28分・女性35分だということがわかっています。
この平均時間を大幅に下回っている場合、あなたは「カラスの行水」といえます。
たまにはゆっくりお風呂に入って、日頃の疲れを癒してみましょう。